角打ち初体験レポート! 3店舗をめぐって名古屋の魅力を再発見

  • 角打ち「佐野屋」店内

見慣れた街にも、まだ知らない日本酒の楽しみ方がある。酒屋で“ちょっと1杯”を楽しむ角打ち(かくうち)は、日常に新しい彩りを与えてくれます。

とはいっても、いざ角打ちへ足を踏み入れるには勇気がいるかもしれません。日本酒大好きだけど角打ちは初めて。そんな私が名古屋の3店舗を巡り、角打ちを初体験してきました。緊張しながら足を踏み入れると、そこには知れば知るほど奥深い日本酒の世界が......! 名古屋ならではの魅力と共にお届けします。

角打ちは居酒屋とどう違うの?

「角打ち」とは、酒屋の一角でお酒を楽しむスタイルのこと。飲食がメインの居酒屋とは異なります。「お酒を飲むなら居酒屋でいいじゃん」と思う人もいるかもしれません。けれども、角打ちでしか味わえない良さがあり、最近では「ネオ角打ち」と呼ばれる新しい形も登場しています。

・居酒屋よりリーズナブルに楽しめる
・さまざまな日本酒を飲み比べできる
・お酒好き同士の交流が生まれる
・気に入った銘柄はその場で購入できる

角打ちにはたくさんの魅力があり、楽しみ方は人それぞれです。

酒ゃ おおたけ

セントラルパークでサクッと一杯。東海3県の銘柄が勢ぞろいするネオ角打ち

  • 「酒やおおたけ」外観

まず初めにご紹介するのは、千種区の「リカーショップオオタケ」から誕生したネオ角打ち「酒ゃ おおたけ」。セントラルパーク内に位置し、アクセス抜群なうえに、明るい雰囲気でとても入りやすい! 初めての角打ちにぴったりなお店です。

  • 「酒やおおたけ」日本酒冷蔵ケース

店内右側には日本酒がたくさん並んでいます。ここでは、東海3県のお酒をメインにそろえているそう。きっと飲み終わったらどれかをお迎えするんだろうな、と思いながら眺めていると......

  • 「酒やおおたけ」日本酒冷蔵ケース「SAKEYAOTAKE」

ん? ラベルに「SAKE YA OTAKE」と書かれた日本酒がずらり。ここでしか飲めない日本酒が飲める予感がしますね。

では飲みたくてしょうがないので早速、カウンターへ。カウンターの前に立つと、店員さんが価格表について説明してくれます。

  • 「酒やおおたけ」日本酒価格表

メニューは価格ごとに色で分けられており、45mlと90mlから選べます。少しずつたくさん飲み比べしたい方は45ml、1つの味をじっくり味わいたい方は90mlがおすすめです。
店員さんの指差す方へ目線を上げると、立てかけられたホワイトボードにはびっしりと日本酒の銘柄が書かれていました。

  • 「酒やおおたけ」ホワイトボードメニュー表

こんなに品揃えが多いと、どれにしようか迷ってしまいますね。その中でも気になったのは「今週の蔵元」と書かれたメニュー。そこには「るみ子の酒」で有名な三重県伊賀市の「森喜酒造」の名前が。毎週末、蔵元さんとのイベントを開催しており、この週は森喜酒造さんでした。イベントのスケジュールはお店のInstagramでご確認ください。

「酒ゃ おおたけ」オリジナルの「春のるみ子 純米吟醸 神の穂 無濾過生原酒」の90mlを注文。三重県産の「神の穂」を100%使用し、無濾過、無添加、無加水でしぼりたての味をそのまま楽しめます。

  • 「SAKEYAOTAKE」オリジナル「るみ子の酒」

  • ワイングラスで日本酒を飲む女性

オシャレなワイングラスでいただきます。すっきり爽やかな味わいの中に、お米の甘味や穏やかさも感じられるバランスの良いお酒でした。

おつまみには「米宗さんのかりもりとクリームチーズ(クラッカー付き)」をセレクト。

  • 米宗さんのかりもりとクリームチーズ(クラッカー付き)

「米宗さんのかりもり」とは、愛知県愛西市にある「青木酒造」の銘柄「米宗」の酒粕でつけたもの。さすが、日本酒との相性抜群ですね。

「青木酒造」さんや「米宗」については、こちらの記事でも紹介しているのでぜひ読んでみてください。

2杯目は今週のオススメからピックアップ。

  • 「SAKEYAOTAKE」オリジナル「タカノユメ」

「タカノユメ 別誂え 酒ゃおおたけ オリジナルNo6」。こちらも、ここでしか飲めないオリジナルの日本酒です。「タカノユメ 別誂え」シリーズは、蔵元が持っている原酒から数種類をアッサンブラージュ(※)して作り出す限定酒。
複数の原酒が織りなす、甘さと旨味が広がる複雑で立体感のある風味はまさに一期一会の味わい。

このお店のオリジナル日本酒をすべて飲み尽くしたい! そう思わせるほど魅力的で、これから通うことが決定しました。ぜひ、みなさんも気軽に立ち寄ってお気に入りの一杯を見つけてみてください。

※アッサンブラージュとは、ワインでよく使われる技法。日本酒では異なる原酒を複数ブレンドし、新しい日本酒を作り出すこと。

<店舗情報>
住所:愛知県名古屋市中区錦3-15-13先セントラルパークB1
アクセス:名鉄瀬戸線 栄町(愛知)駅 徒歩3分
     名古屋市営地下鉄名城線 久屋大通駅 徒歩3分
     名古屋市営地下鉄東山線 栄(愛知)駅 徒歩3分
営業時間:<月~土曜日> 10:00~21:00
     <日曜、祝日> 10:00~20:00
Web:https://www.instagram.com/sakeya_otake/?hl=ja
電話番号:052-291-4570

十代目儀助

名古屋城金シャチ横丁で愛知の日本酒を飲み比べ。日本酒に特化したアンテナショップ

  • 「十代目儀助」外観

二店舗目は、名古屋城の金シャチ横丁(義直ゾーン)にある「十代目儀助」。名古屋城のすぐ近くに角打ちがあるのは盲点でした。
金シャチ横丁の別の店舗で少し腹ごしらえをして、飲む準備は万全。店内へ入っていくと、日本酒はもちろんのこと、お土産も並んでいました。

  • 「十代目儀助」店内商品

パッと目についた「SAKE BONBON」は、とろっとした日本酒が砂糖の中に閉じ込められている酒ボンボン。甘いものも大好きな私は「絶対に買って帰ろう」と心に決めて店内奥へと進んでいきます。

こちらではいろんな3種飲み比べセットがありました。日本酒だけではなく、甘酒、梅酒、ソフトドリンクもあるので、日本酒を飲めない方が一緒でも入りやすいですね。

  • 「十代目儀助」メニュー

  • 「十代目儀助」黒板

一店舗目でのチョイスを見て分かるかもしれませんが、私は限定ものに弱いのです。メニューの一番上“当店限定”と書かれている「太鯱判セット」を注文。「太鯱判(たいこばん)」とは、十代目儀助が愛知県のいいモノを知ってもらうために立ち上げたブランドです。

飲み比べできる3種のラインナップはこちら。

・太鯱判 龍 純米吟醸
・太鯱判 虎 純米吟醸
・太鯱判 鷹 純米吟醸

あれ、この漢字一文字たちに何か見覚えがありませんか? すべて名古屋市内の酒蔵さんで有名な銘柄に入っている一文字です。東春酒造の「東龍」、金虎酒造の「金虎」、山盛酒造の「鷹の夢」。名古屋の酒蔵の魅力を一度に堪能できる、なんとも贅沢な飲み比べセットですね。

おつまみには、名古屋名産の守口漬けをからしで和えた「守口漬けからし和え」「ほたての貝ひも」を選びました。

  • 「十代目儀助」おつまみ

  • 「十代目儀助」日本酒3種飲み比べセット「太鯱判」

    (左から)龍、虎、鷹

まずは「龍」をひとくち。フルーティーさを感じるバランスの良い日本酒。女性が好みそうな味です。「虎」は口に入れた瞬間はお米の甘さが広がり、後味にはキレを感じます。「鷹」はこの3つの中では一番爽酒寄りでしょうか。すっきりと飲みやすく、食中酒にぴったりでした。
左から順に飲んでしまいましたが、この飲み口ですと、右側の「鷹」から順に飲んでいくことで、より日本酒の個性を楽しめそうです。

そして帰りにはしっかりと「SAKE BONBON」を購入し、ホクホクとした気持ちでお店を後にしました。

  • 「十代目儀助」テイクアウトメニュー

日本酒のテイクアウトも可能とのこと。金シャチ横丁内にはさまざまなテイクアウトメニューもあるので、他のお店の名古屋名物とペアリングする楽しみ方もできそうです!
名古屋城を訪れる際には、観光ついでに「十代目儀助」での飲み比べをぜひ体験してみてください。

<店舗情報>
住所:愛知県名古屋市中区三の丸1
アクセス:地下鉄名城線「名古屋城」駅 7番出入口 徒歩8分
営業時間:9:30~17:30(L.O.17:00)
Web:https://www.instagram.com/gisuke_sake/
電話番号:052-228-0339

佐野屋

本格的な角打ちを楽しむならここ!大正時代から続く老舗酒屋

  • 「佐野屋」外観

ラストは、大曽根にあるこれぞ昔ながらの角打ち「佐野屋」です。ビギナー目線で言うと正直、一人で挑むには少しハードルが高いかもと感じました。ただ、仕組みを知っておけば一人でも全然難しいことはありません! 角打ちの醍醐味がギュッと詰まった奥深い場所でした。

まずは入る前に、こちらの看板「角打ちとは」を確認します。

  • 「佐野屋」角打ちの極意

この中に書かれている「キャッシュオン」とは、注文の都度現金で支払いをする仕組みのこと。訪れる前には、現金を用意しておきましょう。

店内へ入り、お酒の販売スペースを抜けると左側にコの字のカウンター、右側に壁に面したカウンターが現れます。(すべて立ち呑み。コの字のカウンター左が禁煙、右が電子たばこ、壁側が紙たばこの喫煙席。)

私はコの字のカウンターの左奥の席へと案内されました。

  • 角打ち「佐野屋」店内

    入って左側のコの字カウンターから見た店内

席に着くとすぐ、最初の注文を聞かれます。入る前に最初の一杯を決めておくとスムーズですよ。
日本酒はじっくり選びたいので、まずは瓶ビールを注文。レトロな店内を眺めながらちょっと一息。

  • 瓶ビールを注ぐ様子

  • 赤星サッポロラガーの壁掛け

注文時にお金を払うと、この木の入れ物にお釣りを入れてもらえるので、次の注文ではこの小銭の中から払います。

  • 木の小銭入れ

小銭をぴったり払うためにどう注文しようか、と考える時間もなんだか楽しい。

おつまみは、ここへ来たら絶対頼みたい!と思っていた「まぐろ中おち」を頼みました。しっかり量があるのになんと300円。人気の一品なのでぜひ早めに頼んでみてください。

  • 「佐野屋」まぐろの中おち

日本酒のメニューは「おすすめ地酒」に書かれている日本酒に加えて、店内あちらこちらにある張り紙にも日本酒の銘柄が。

  • 「佐野屋」おすすめの地酒メニュー

  • 「佐野屋」壁面メニュー

ふと、壁側のカウンターに貼られている「長珍酒造 長珍」が目に入り、注文することに。愛知県津島市のお酒です。

  • 日本酒のグラス

色は少し黄色がかっていて、日本酒らしいまろやかな味わいがします。これは、熱燗にして飲むとさらに旨味が広がりそうです。

続く2杯目には、張り紙を見て気になっていた「金虎酒造 大曽根ばやし」を。初めて見る日本酒だなと思っていると、なんと大曽根商店街を盛り上げるために作られた、大曽根エリア限定の日本酒とのこと。そんな貴重な日本酒が飲めるなんて......とテンションが上がります。

少し白濁していて、一口含むとまろやかな米の旨味が広がり、クッと飲むと力強いキレを感じました。

店内が賑わってきたので、名残惜しさを感じながらもこの辺でお店を後に。こちらは大人気の角打ちなので、あまり長居はせずにサクッと楽しむことをおすすめします。

店内を出るときにお酒の販売スペースを見ると、今ではめっきり見なくなってしまった一升瓶が並んでいました。

  • 「佐野屋」店内日本酒冷蔵ケース

通えば通うほど、新しい発見と楽しみ方が見つかりそうなお店です。ひたすら呑兵衛に徹したい時にはぜひこちらへお越しください。一人で何度か足を運んで、常連さんに溶け込みたいな、という一つの目標ができた私でした。

<店舗情報>
住所:愛知県名古屋市北区大曽根3-13-13
アクセス:JR中央本線 大曽根駅 徒歩3分、名鉄瀬戸線 大曽根駅 徒歩3分、地下鉄名城線 大曽根駅 徒歩3分、ゆとりーとライン 大曽根駅 徒歩4分
営業時間:<月~金曜日> 10:00 - 21:00
     <土・祝日> 10:00 - 19:00
     <日曜日> 12:00 - 18:00 
※日曜不定休 Instagramでご確認ください。
Web:https://www.instagram.com/sanoya0430/
電話番号:052-991-8175

日本酒の楽しみ方は無限大。知れば知るほど奥深い世界へ一緒に踏み出しませんか?

角打ちでは、居酒屋のように飲食のサービスがメインではありません。酒屋の一角で軽いおつまみと一緒に一杯。だからこそ、お店の雰囲気、目の前に注がれるお酒、周りの人との会話をじっくりと味わうことができるのです。

性別や年齢、角打ち経験に関係なく、誰もがその土地の魅力と地域のお酒に酔いしれることができる。そんな素敵な空気を初めての角打ちで感じました。

さあ、あなたも名古屋の角打ちへ一歩踏み出してみましょう!

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