辛口の日本酒おすすめ16選 「本当に美味しい!」年間360日日本酒を飲み尽くす唎酒師ライターが厳選

日本酒に興味が出てきて、「いざ飲んでみよう」という時、また父の日、祖父や上司の誕生日や記念日に日本酒をプレゼントしようという時、何を選んでいいのか迷ってしまう人が多いです。頭の片隅には「お父さんやおじいちゃんは、“辛口の酒がいい酒”だって言っていた…」という記憶。でも実は“辛口の酒”について正しく理解して、選んでいる人は少ないものです。
日本酒の甘い、辛いとは何なのか? 「めちゃくちゃうまい」と思うおすすめの美味しい辛口の日本酒はどれなのか? 年間2000種類以上の日本酒を飲んできて、日本酒バーの女将も経験した、日本酒ライター・関友美が「本当に美味しい辛口の日本酒」をご紹介します。

辛口と甘口、その差は日本酒の造り方に関係している

  • 麹

味わいの違いは製造過程に関係しています。お酒ができるプロセスを説明しましょう。すべての酒は、糖を酵母が食べる過程でアルコールと二酸化炭素を発生させて酒になります。ワインの原料であるぶどうには果糖が含まれていますが、日本酒の原料である米にはそのままでは糖がありません。そのため、米のデンプンを麹菌の酵素でブドウ糖に分解し、その後酵母がブドウ糖を食べてアルコールと二酸化炭素を発生させることで日本酒ができます。
発酵を進めると糖度が低くアルコールが高くなり「辛口の日本酒」、発酵を途中で止めると糖度が高くアルコールも低くなり「甘口の日本酒」になります。
現代では「どんな商品を届けたいか」という酒蔵の方針に基づき杜氏が酒を設計しています。辛口がいい酒、甘口が未熟な酒ということは一切なく、酒蔵の個性として多彩な味わいの商品が造り分けられています

どのタイプの辛口が好き? 飲み手の味覚の違いについて

  • 升に酒を注ぐ

私が「おすすめの辛口酒を教えてください」と聞かれたときに、考えることは【飲む人の生まれた地域/母親の生まれ故郷】【普段よく飲んでいる酒の種類】【年齢】の3点です。

① 飲む人の生まれた地域/母親の生まれ故郷

人の味覚はさまざまで、五味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)のなかで、感じやすいもの、中々感じることが難しいものが個人差であります。そのルーツとして、地域によって慣れ親しんだ味付けの個性があります。たとえば九州の醤油は濃厚で甘みが強く、四国は甘く優しい味わい、関東や東北はキリッとした塩味の醤油が主流です。甘さや旨味に慣れた舌の人には旨味が多めの日本酒が好まれ、塩味と合わせるにはよりシャープな日本酒が好まれる傾向があります。

② 普段よく飲んでいる酒の種類

食べ物と同様、慣れ親しんだ酒の味わいによって「辛口」の意味合いが変わる傾向があります。必ずしも一致するわけではありませんが、ひとつの目安にできます。

焼酎をよく飲む人:アルコールが強く、旨味や甘みが少ないシャープな日本酒。
白ワインをよく飲む人:酸味に慣れているため、酸味があってシャープな日本酒。
赤ワインをよく飲む人:渋味や苦みに慣れているので、少し旨味がある日本酒。
ウイスキーをよく飲む人:ワイルドな香りと高アルコールに慣れているため、旨味がある日本酒も辛口と判断しがち。
ビールをよく飲む人:アルコール控えめでシャープな味わい。発泡性の日本酒を辛口と判断する人もいます。

③ 飲む人の“年齢”

かつて「三倍増醸酒」という、醸造した日本酒に2倍の醸造アルコールを加え、糖類とアミノ酸で味を調整し、3倍の量を造る粗悪な酒が流通していました。これは戦時の米不足に対応する緊急策として開発されましたが、終戦後も長く流通したため、「甘い酒はベタッとしていて悪い酒」という印象が残りました。この印象を持つ人や、それを父親や祖父から聞いた人たちもいます。70代以上の方にプレゼントする際には、この心情を配慮すると良いかもしれません。

日本酒タイプの見分け方~辛いではなく「甘くない」

① 日本酒度~残糖が多いかどうか

日本酒の製造現場で使用する数値で「日本酒度」というものがあります。醸造家は発酵の際の残糖を確認することで、発酵の進行を確認します。日本酒度は、日本酒の甘辛を示す指標で、数字が大きい(プラス)ほど辛口、小さい(マイナス)ほど甘口となります。ただし数値に出てこない糖、数値には出るけど人間が甘さを感じない糖などもあり、酸やアミノ酸とのバランスなどにもよるため、日本酒度だけで一概に人間の味覚の感じ方は語れません。

② 酸度が高く、アミノ酸度が低い

日本酒の酸度とは、日本酒中に含まれる有機酸の総量を示す指標です。主には乳酸、コハク酸を指し、稀にリンゴ酸、クエン酸、酢酸が多いものもあります。日本酒が辛口に感じられるためには、酸度が1.5~2.0、アミノ酸度が0.8~1.2程度ということが多いですが、これはあくまでも目安で、酒蔵や商品、その他の構成バランスによって異なります。

③ アルコール度が高い

アルコール度数が低いものより、18~21度と高いものの方が、アルコールのスッキリさ、辛さを感じ、酒自体も「辛口だ」と感じることが多いです。一般的には香り高い純米吟醸ではなく、本醸造、普通酒、大吟醸を選んだ方がスッキリとしていることが多いですが、これも酒蔵や商品の個性により異なります。

おすすめの辛口日本酒 16選

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  • お猪口に酒を注ぐ

1. 宝剣 純米酒 超辛口 火入(広島県・宝剣酒造)レア度★★★ 日本酒度+10

味わい柔らかく深い旨味はあるけれど、最後にはシュッと消えていくような銘酒です。「宝剣」という名の通り、よくキレる辛口の日本酒として有名で、この酒は蔵の定番品です。晩酌に、食事と合わせて飲むにもオススメです。市販酒の味わいを競う品評会「SAKE COMPETITION」でも毎年上位に位置する銘柄なので、贈り物の辛口酒としても納得感があるでしょう。

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2. 白瀑 ど辛 純米酒(秋田県・山本合名会社)レア度★★★ 日本酒度+15

赤い箔押しの字で「ど辛」と書かれたこの酒は、私たちプロの間で辛口酒を挙げる際に外せない逸品です。ほのかに青リンゴのようなすがすがしい香りがあり、辛口と感じない人もいるかもしれませんが、数値的には今回紹介する中で飛びぬけて辛口とされています。そのバランスの取れた味わいに、きっと驚かれることでしょう。

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3. あたごのまつ 鮮烈辛口(宮城県・新澤醸造店)レア度★★ 日本酒度+7

「愛宕の松」「伯楽星」という日本酒をつくっている新澤醸造店は、精米歩合0%という日本酒最高値の超高級酒「零響」を世に送り出しています。ロンドンで行われるIWC(インターナショナルワインチャレンジ)2022年日本酒部門で、出品462社の中から1位になるなど、あらゆる品評会で上位に挙がることでも有名です。技術力がある酒蔵の辛口。その名の通り鮮烈な辛口が特徴で、その上「あたごのまつ」ブランドはお手頃なので、自分はどんな辛口が好きかな? と試してみるのにも最適です。

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4. くどき上手 純米吟醸辛口(山形県・亀の井酒造)レア度★★ 日本酒度+10

あまりイベント等に顔を出さず、硬派な印象の亀の井酒造は、流通や販路にもこだわりがあり、今回紹介する他の日本酒と同様に、購入できる場所が限られています。「くどき上手」の多くの酒は豊かで華やかな香りが特徴ですが、この酒は一風違います。シャープなキレのある辛口が特徴の純米吟醸酒です。さわやかでフルーティな香りとともに、口に含むと米の旨みと爽やかな酸味が広がり、後味がすっきりとしています。多くの日本酒愛好家が手に入れたいボトルです。

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5. 天狗舞 超辛口純米酒(石川県・車多酒造)レア度★★ 日本酒度+11

シャープなキレのある辛口が特徴の純米酒です。米の旨みをしっかりと感じつつ、後味はすっきりとしたドライな仕上がりです。フレッシュな香りと爽やかな酸味が調和し、どんな料理ともよく合いますが、山廃造りなど古くからの製造方法を忠実に守り抜いている酒蔵ならではで、特に刺身や塩焼きなどのシンプルな和食と相性が抜群です。飲み飽きないバランスの良さが魅力の一品です。

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6. よこやま 純米吟醸 SILVER 超辛7 火入(長崎県・重家酒造)レア度★★ 日本酒度+7

私は初めて飲んだ時、「え? こんな辛口があっていいの?!」 とびっくりしました。みずみずしくて旨く、一瞬だけ甘い気がするけれど、たしかに甘くありません。加熱処理済みの火入れ酒ですが、どこかピチピチとした発泡感も感じるかもしれません。聞けば独自製法で、スッキリとしているけれど旨味が共存した日本酒を実現していました。ぜひ多くの人に飲んでみてほしいです!

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7. 上喜元 特別純米 からくち ぷらす 12(山形県・酒田酒造)レア度★★★ 日本酒度+12

山形県酒田市の酒蔵です。「全国新酒鑑評会」で金賞を受賞する常連蔵で、その受賞数は全国トップクラスです。社内外から慕われている社長兼杜氏の佐藤正一さんが酒造りをしています。吟醸酒かと思うほどのフルーティさが特徴の辛口酒で、飲む温度によって印象が変わります。口当たりはみずみずしく、余韻は美しく長いです。ぜひお試しください。きっと一口でその深い味わいに心を奪われることでしょう。

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8. 喜久酔 特別純米(静岡県・青島酒造)レア度★★ 日本酒度+6

冷酒、常温、燗にしても美味しい酒です。私の親友は「この酒を飲んで衝撃を受け、日本酒業界に足を踏み入れた」というほどです。派手さはないものの、上品で素朴な味わいがあり、柔らかな口当たりと軽快なのどごしで、長時間飲み続けたくなる酒質です。この酒を一度味わえば、その魅力に取り憑かれること間違いありません。

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9. 播州一献 純米 超辛口 火入(兵庫県・山陽盃酒造)レア度★★ 日本酒度+10

兵庫県播州エリアの山間でつくられている「播州一献」は、飲む前の香りが柑橘系で、飲むと旨味たっぷりですが、するする飲める「超辛」です。辛口ながら、仕込み水には超軟水を使用しているため口当たりは柔らかく、後味はスッキリしています。「超辛」シリーズとして、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒があり、用途によって使い分けたいです。

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10. 常山 純米吟醸 辛口 飛(福井県・常山酒造)レア度★★ 日本酒度+17

「越山若水(えつぜんじゃくすい)を表現する酒をつくる」というテーマを掲げている常山酒造は、福井駅からほど近い場所にあります。「越山若水」とは、「越前」の緑豊かな山々と、海側に位置する「若狭」の清らかな水という福井県の風土をまるごと表現した言葉です。「越前の山々」と「若狭の海」という異なる2シリーズの酒を造ることにしたのです。「山の酒」はやや華やかな香りがする比較的ふくよかで味わい豊かな酒です。「海の酒」は前任杜氏の頃から「常山」のフラッグシップとなっている、爽やかで辛口の酒です。このお酒は後者の「海の酒」。今回選んだ中で、数値としては一番の辛口ですが、透明感のある旨味や甘みも含んだとても複雑な味わいの日本酒です。冷酒、常温、ぬる燗、どんな飲み方でもよく合う優秀なお酒です。

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11. ゆきの美人 完全発酵 純米(秋田県・秋田醸造)レア度★★★ 日本酒度+13

秋田市の中心部にある四季醸造の蔵元で、町中のマンションの一階部分で酒を醸しています。2023年7月の記録的大雨で被害を受けましたが、再起してさらにパワーアップしたおいしい酒を届けています。酸を保ちながら、もろみをギリギリまで発酵させた完全発酵の挑戦的なタンクです。日本酒度は高いものの、甘さと旨味が残る穏やかな辛口酒です。

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12. 雨後の月 超辛口 特別純米(広島県・相原酒造)レア度★★★ 日本酒度+14

真っ赤な背景に、真っ赤な箔押しで「雨後の月」と書かれ、白い月が印象的なラベル。さすが広島、カープを思い出します。普段は果実味と穏やかな甘さ、ピチピチとした発泡感が特徴ですが、この酒は鋭くシャープな味わいです。キリッと爽やかで飲みやすいので、飲みすぎに注意してください!

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13. 賀茂金秀 辛口 特別純米 赤ラベル 火入(広島県・金光酒造)レア度★★★ 日本酒度+9

広島で清酒「賀茂金秀」「桜吹雪」をつくる金光酒造の辛口酒。日本酒ファンや業界内でも評判が高く、品質に安定感があります。加熱処理済みの火入れ酒ですが、どこかピチピチとした発泡感も感じられるかもしれません。旨み、甘み、ピチピチ感…皆さんに知っておいて欲しい銘柄のひとつです。

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14. 久保田 千寿(新潟県・朝日酒造)レア度★★ 日本酒度+5

新潟の銘酒「久保田 千寿」や「久保田 百寿」は、1985年に発売され、「久保田 萬寿」などとともに人気を博し、憧れの日本酒と呼ばれるようになりました。中でも最もすっきりとして推したいのは「千寿」です。一升瓶(1,800ml)で税込2,904円と、贈答用としては安いかもしれませんが、一世風靡した銘柄で、現在も成長と挑戦を続ける酒蔵です。年上の方への気軽なプレゼントとして圧倒的な安心感があります。

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15. 八海山 純米大吟醸(新潟県・八海醸造)レア度★★ 日本酒度+4

「淡麗辛口」として大ブームを起こした新潟の日本酒は辛口酒を語るときに外せません。この「八海山」もその中心的存在であり、南魚沼の豊かな自然と雪国の文化を発信し続ける酒蔵です。八海山の透明感あるスッキリとした辛口の純米大吟醸は、ビギナーはもちろんのこと、年上の方への贈り物にもぴったり。八海醸造の日本酒を数本選んでお贈りすれば間違いありません。

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16. 純米辛口 浦霞(宮城県・株式会社佐浦) レア度★★  日本酒度+6~+7

享保九年(1724年)創業、きょうかい12号酵母発祥の酒蔵「浦霞」。ほのかに香り華やかで、ドライでシャープな引き締まった飲み口が特徴です。「一番好きな酒は?」と聞いて「浦霞」と答える人には通だなと思います。海の幸がおいしい塩竃に位置するため、浦霞は海産物との相性が抜群です。冷酒、常温、燗など温度を変えて楽しんでください。

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「辛口の酒が好きなんだよね」は落とし穴? イメージにとらわれないで!

絶対に外さない辛口の日本酒16選をご紹介しました。今回紹介したお酒以外にも、泣く泣く外したオススメがたくさんあります。
「日本酒の辛口論争」は度々各地で勃発します。「辛口の酒ください」という人に対して、「旨味を持つ米からできた酒なのだから、辛いはずはない」「そんなに辛い酒がいいなら焼酎を飲んでおけ」と言う人もいます。しかし、酒蔵サイドから「辛口酒」「超辛」という商品が出ているため、消費者も困惑しています。日本酒バーの女将時代、日本酒度±0やマイナスの酒を出して「これは辛い!」と喜んで飲む人をたくさん見ました。お客様に意地悪したわけではなく、その方が言葉にできないけれど本当は求めている酒は“日本酒度が高い酒ではないな”と判断してセレクトしました。それくらい日本酒の「辛口」は難しく、複雑な問題なのです。「甘く感じない酒」と呼んだ方が正確かもしれません。
今回の紹介で「フルーティ」「旨味」などの意外な説明があったと思います。日本酒の味わいは『香り、酸、アミノ酸、アルコール度数、温度』といったデリケートなバランスの上に成り立っています。でも頭でっかちにならずに、とにかく飲んでみることが重要です。飲食店や酒屋で見つけたら、ぜひ手に取ってみて、あなたが何を好むのか、あなただけの「辛口酒」を見つけてくださいね。

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