本当に美味しい日本酒15選「一度は飲んでもらいたい!」年間360日日本酒を飲み尽くす唎酒師ライターが厳選
原料のブドウ品種からある程度の味わいの予想ができるワインに対して、原料米の品種からだけでは味わいがまったくわからないのが日本酒。水の違い、酵母の違い、種麹菌の種類、醸造家の考え方、発酵期間や方法、地域風土などが絡み合って、繊細な味わいを形作っています。
飲めば飲むほど、知れば知るほどその奥深さ、魅力に虜になる日本酒。そんな日本酒の魅力にどっぷりはまり、年間 360 日、日本酒を飲み尽くす日本酒ライター・関友美が厳選する「本当に美味しい日本酒」とは?レアなものから手に入りやすいものまで、「日本酒好きなら絶対に飲んで!」という日本酒をご紹介します。
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わたしが日本酒にハマったわけ
日本酒にハマったのは、もう10年以上前のこと。その頃のわたしは、それまでの食事を見直して、健康のことを考え、出汁の効いた料理を作って食べることに努めていました。お酒好きのわたしは、「素材を生かした、繊細な味わいの料理に合わせるお酒は何がいいかな...?」と考えて、やがて料理の良さを引き立たせてくれる日本酒に興味を持ちました。
その頃出会った「十四代」。その美味しさは今でも思い出せます。従来抱いていた日本酒とはイメージが異なり、フルーティで舌触りとのど越しが良く、日本酒のバリエーションの多さや奥行きの深さを痛烈に思い知りました。それからというもの、ひとりで日本酒居酒屋に出かけては色々な銘柄を飲み、飲むごとに違う味わいに感動し続けました。さらに試飲会や本などで造り手さんたちの人柄や物語を知ると、酒の味と紐づき面白く、気づけば日本酒の虜になっていました。
運命を変えるのは、やっぱり「本当に美味しい日本酒」!絶対に飲んでもらいたいとっておきの日本酒をご紹介します。
本当に美味しい日本酒15選
1.飛露喜(ひろき) 特別純米 (福島県・廣木酒造店) レア度★★★★
廣木酒造店は、20年以上前に起きた日本酒革命ともいうべき時代を支えた立役者となったひと蔵。当時アルコール臭くて敬遠されていた日本酒が、「フルーティでおいしい!」と愛されるキッカケになったお酒のひとつです。甘い果実のような香り、フルーティできめ細かな甘みと旨み...今でも、初心者、プロ問わず飲めば感動する美酒です。
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2.而今(じこん) 特別純米 火入れ(三重県・木屋正酒造) レア度★★★★
今や入手困難なプレミアム酒と名高い「而今」。爽やかでフルーティな香りは、まるで米からつくられた酒だと忘れるほど。舌触りはシルキーで、いくらでも飲めちゃいます。まずは飲食店で1合頼んで、飲んでみることをオススメします。
3.十四代 本丸(山形県・高木酒造) レア度★★★★★
日本酒に詳しくなくてもその名を聞いたことがある、というほど国内外で有名な「十四代」。製造に専念する、というポリシーから、あまりメディアやイベントにも露出しないため、その正体はベールに包まれています。「十四代」はどれも甘さ、酸、キレ、とバランスが良い、まるで口の中で消えていく果実のような日本酒です。
「本丸」は本醸造酒といって、蔵の中では製造量がやや多いスペックのお酒。飲食店で見かける機会も多いです。まるで吟醸酒のようキラキラと輝く憧れの味わいは、見かけたら絶対に飲んでおくべき逸品。
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4.みむろ杉 純米吟醸 山田錦(奈良県・今西酒造) レア度★★★
酒どころ・奈良県を代表する銘柄。古来より酒の神様として信仰されている日本最古神社・大神神社の参道に建っている、日本酒の歴史を語る上で欠かすことのできない酒蔵です。古来の日本酒づくりに回帰するため、木桶を導入するなど様々な取り組みをしています。
ひらがなの「みむろ杉」と漢字の「三諸杉」という2つのブランドがありますが、「みむろ杉」をオススメします。親しみを込めて「清涼飲料水系」とカテゴライズしているほど、軽やかな甘さ、ちょうどいい酸、ゴクゴク飲んで身体に浸透していく感覚の美酒です。
5.東洋美人 醇道一途(じゅんどういちず) (山口県・澄川酒造場) レア度★★★
学生時代の実習で「十四代」の酒蔵を訪れ衝撃を受け、目標にした、という志高い酒蔵。かつて当時の首相・安倍晋三氏が海外の来賓をもてなすため、地元山口の「東洋美人 純米大吟醸 壱番纏」を供して絶賛を受け、話題になりました。
どれも美味しいですが、なかでも「醇道一途」がオススメ。パイナップルを思わせる爽やかでフルーティな香りが飲む意欲をかき立てます。そして細かな細胞の中に凝縮された旨みが閉じ込められていて、口に入れた瞬間それらがパッと外に飛び出す、というイメージの気品高いお酒です。
6.播州一献(ばんしゅういっこん) 七宝(しっぽう) 純米生 (兵庫県・山陽盃酒造) レア度★★★
酒米どころ兵庫県にある酒蔵。山田錦はもちろん、愛山、兵庫北錦、兵庫夢錦・・・など兵庫県原産の米にこだわっています。他の酒蔵では、お酒を搾った後にポンプを使い一旦タンクに詰めてから 1 週間以内に瓶詰めする、という場面を、「播州一献」では搾った酒は坂のある地形を利用して重力だけでお酒に余計な負荷をかけないまま運び、ピチピチのフレッシュな状態ですぐに瓶詰めされています。香りはまるで若いメロン。ガス感が残っていて、透明感があるのにジューシー!「なにこれ?!」と、人に薦めたくなるお酒です。
7.風の森 秋津穂 507 (奈良県・油長酒造) レア度★★★
初めて飲む日本酒が「風の森」なら、きっと日本酒を好きになるでしょう。日本では珍しい、ヨーロッパ並みの地元の硬水である井戸水を活かした酒づくりは唯一無二の存在感です。洋梨のようなスッキリとした香り。発酵時の炭酸が残されたキレある味わいは、舌の上で転がり、喉に滑り込むよう。料理ともよく合います。
8.田酒(でんしゅ) 特別純米 (青森県・西田酒造店) レア度★★★
青森の雄。日本酒界のレジェンドであり、現在も先頭を走り続ける酒蔵です。「日本酒は田んぼから生まれる酒である」とし、全て純米酒。その中で最初に飲んでもらいたい定番品が「特別純米」です。マスカットのような華やかな香り。甘み、酸、苦み、渋みなど複雑さも兼ね備えた米の力強さを感じる旨みと、キレの良さ。「田酒」らしさはそのままに、時代に合わせ常に変化する味わいは、日本酒愛好家憧れの存在です。
9.冩楽 純米吟醸 (福島県・宮泉銘醸) レア度★★★★
和紙に箔押しで輝く「冩楽」という文字のラベル。一度飲むと誰しも魅了されるお酒です。使用米による違いはありますが、控えめな果実のような香り、トロっとした甘み、「あぁ、行かないで...」と追いかけたくなる後キレの良さは、共通しています。季節によってさまざまな限定酒がありますが、まずは通年商品の「純米吟醸」から始めてみてください。同蔵が造る「宮泉」ブランドもオススメ。
10.鍋島 純米吟醸 New Moon 生酒 (佐賀県・富久千代酒造) レア度★★★
青りんごのような香り、わずかに感じるトロピカルフルーツのような味わい、ピリピリチリチリと舌に感じるガス感。最高のバランスで完成された逸品。
イギリスで行われる世界最大規模・最高権威と評されるワイン・コンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2011」で、日本酒部門の最優秀賞「チャンピオン・サケ」に選ばれたこともある「鍋島」。派手ではありませんが、安定した酒質、抜け目ない進化、人々の心の真ん中に刺さるお酒をつくり続けています。
11.雨後の月 特別純米 十三夜 (広島県・相原酒造) レア度★★
そつなく美味しい、という印象の「雨後の月」。気づいたら盃がカラになっていた、というように「美味しいことが当たり前」と思わせてくれます。なかでもこのお酒は、アルコール度数が13度という低アルコール酒。それも加水するのではなく原酒にすることで、旨みを薄めることなく残し、飲み口が柔らかくサラリとしていて、身体も楽、という最高のバランスを叶えています。
2016年 ANA 全日空国際線 ファーストクラス提供酒にも採用された、お墨付きがあるお酒です。
12.獺祭(だっさい) 純米大吟醸 磨き三割九分 (山口県・旭酒造) レア度★
言わずと知れた「獺祭」。あまり酒造業界に詳しくない人からは「機械でつくる酒」などと揶揄されることもありますが、例えて言うなら一般企業で「表計算システムにマクロを組んだ!」とかその程度の話です。手作りされていない日本酒など、この世にひとつもありません。発酵のデータを蓄積して、丁寧に醸造されています。
メロンのような立ち香、果実味ある綺麗な甘みと淡い口当たり。クリアで上品な味わい、それを安定して量産する力は他の追随を許しません。知ったかぶりせずに、絶対に押さえておきたいお酒です。
13.福寿 純米吟醸(兵庫県・神戸酒心館) レア度★★
日本酒どころ・兵庫県灘エリアにある老舗の酒蔵。2019年、旭化成の吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞された際の公式行事で振る舞われたことで、世界中から一躍注目され、愛されることになったブルーボトルです。熟した桃のような香り、フレッシュでなめらかな舌触りと濃密な米の旨み。
ワイン愛好家にも親しみを持っていただけるような味わいは、まさに世界に誇る美酒という佇まいです。
14.勝山 献 (宮城県・勝山酒造)レア度★★
仙台伊達家御用達の酒蔵として、歴史ある勝山酒造。ボトルを見た瞬間(または価格を見た時)に、格式の高さと蔵がどれほどの覚悟を持ってこのお酒を出しているのかを感じ取れるでしょう。パイナップルやライチのようなみずみずしい香り、スムースな口当たりと、山田錦を使いほど良く綺麗に表現された旨み。
イギリスで行われる世界最大規模・最高権威と評されるワイン・コンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)2019」で、このお酒が最高賞の「チャンピオン・サケ」に選ばれています。
15.AKABU 純米吟醸 愛山(岩手県・赤武酒造) レア度★★★
新進気鋭、と評判の若き蔵元杜氏が新たにつくった「AKABU」「赤武」ブランド。紆余曲折の末に東日本大震災後に誕生したお酒です。酒質の進化のスピードが異常に早く「天才」とも名高いのです。どの「AKABU」も美味しいのですが、特に「純米吟醸 愛山」はイチゴやリンゴジャムみたいな甘い香り、味わいは甘みや旨みを感じるものの、予想よりもフレッシュでスッキリとしています。四合瓶だとすぐに無くなってしまうこと必至でしょう。
あなただけの本当に美味しい日本酒をみつけてください
絶対に外さないお酒15選をご紹介しました。今回紹介したお酒以外にも、ここにある酒蔵のお酒はどれも美味しいものばかりです。
日本酒のなかには、開封した瞬間は美味しいけれど、日が経つと味わいのバランスが崩れてくるものもあります。それは麹の造り方、発酵経過の辿り方、衛生管理の徹底、瓶詰めのタイミング...さまざまな要因の中のひとつでも目標と外れてしまうと、起きてしまうことなのです。
しかし本当に美味しい日本酒をつくる酒蔵の酒は、全てを徹底して造られているため、芯が強くへこたれません。きちんとした冷蔵管理をしてあげれば、むしろ味わいが増していくことも多いものです。今回並べた日本酒は、真剣に1本の酒と向き合い、どの工程も手を抜かない最高の酒蔵がつくった日本酒です。しかし日本酒はすべて限定生産。本当に美味しいがゆえに手に入りにくいこともあります。
飲食店や酒屋で見つけたら、ぜひすぐに手に取ってみて、あなただけの「本当に美味しい日本酒」を見つけてくださいね。
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