【2024年版】「夏酒」のおすすめ10選 本当に美味しいと思う日本酒を唎酒師ライターが厳選

日本酒は、かつて前の年につくった酒を半年~1年間貯蔵させて、秋に出荷されるものが良しとされてきました。しかし現代になり冷蔵技術や配送網が発達し、人々の興味や味覚が変わったことで、全国の酒蔵は嗜好を凝らして春夏秋冬それぞれに適したシーズナル日本酒を発売するようになりました。特に「夏酒」という概念ができたのは、おそらくここ15年ほどのこと。毎年5月初旬頃から、ブルーボトルなど涼しげなラベルのお酒が酒屋の店頭に並びます。「夏酒」とはどんな日本酒?美味しい飲み方は?夏に美味しい日本酒を360日日本酒の飲みつくす唎酒師ライターが厳選しました!

(2024年5月16日更新)

  • 日本酒の瓶とグラス

「夏酒」とは?

「夏酒はコレ!」という厳密な定義はありません。夏の暑い時期にはビールやレモンサワーなどサッパリとした酒が好まれ、日本酒は避けられる傾向にありました。そこで各酒蔵が夏にも日本酒を飲んで欲しい!と願い、工夫を凝らして、「夏にぴったりの酒」をつくりリリースしているのが「夏酒」なのです。ボトルデザインも味わいも多彩なものが多いです。

  • 日本酒の瓶が並ぶショーケース

「夏酒」の特徴

暑い夏の日でも飲んでもらうため、酒蔵はいろいろな工夫を凝らした酒質設計をして「夏酒」をリリースしています。ほんの一例ですが、傾向としては生酒、原酒、にごり酒、低アルコール酒などが多い印象です。なぜでしょう?ひとつずつ解説していきます。

<生酒>

日本酒は従来“火入れ”という加熱処理を施してから、出荷されるものですが、「生酒」と記載されたものは、その処理をおこなっていません。液中の酵母がまだ生きていて発酵を続けています。そのため瓶内二次発酵が起こって炭酸ガスを生み、飲むと舌先にピチピチとしたガス感を感じるものもあります。炭酸ガスは飲むときに、爽快感を感じさせてくれるため、生酒のまま出荷される「夏酒」も多いのです。

<にごり酒>

粗く濾された「おり」部分がたくさん残っている酒を、「にごり」「にごり酒」と呼びます。米からできている酒なので、ドロッとしたその部分に旨味がたくさん詰まっています。甘みも感じやすいです。そのため食欲を増進させ、暑い夏でも一緒に食事やおつまみを食べたくなるので、「夏酒」によく採用されます。

<低アル日本酒>

日本酒はアルコール15~16度くらいで出荷されることが多いですが、夏バテしそうなくらい暑い日でも、さらりと飲みやすいよう10~14度の低アルコールで出荷される「夏酒」も多いです。たった1度違うだけでも、飲んだ時の印象が大きく変わるもの。アルコール度数は、裏ラベル(表ラベルに記載がある場合も)に必ず記載されています。ぜひチェックしてみてください。味わいをドライに仕上げるか、甘みを残すか、爽やかに酸を出すかは、それぞれの酒蔵の個性や考え方によります。

<原酒>

低アルコール酒が多いなかで、逆転の発想で原酒そのままで出荷される日本酒もあります。加水処理せずに原酒のまま出すと、旨味がぎゅっと詰まった酒になっています。実はアルコールの強さというのも旨味のひとつの要素であるため、食欲を誘い、夏バテしにくい身体を作ってくれるかもしれません。味わいを濃く設計しておいて、ロックやソーダ割りで飲んでください、というものも。ただし近年では、旨味を残しながらライトに飲めるように、と「低アルコール+原酒」というケースも増えています。

本当に美味しい「夏酒」10選

仙禽 かぶとむし(栃木県/(株)せんきん)

  • 仙禽かぶとむしのボトル

●生酒 ●低アルコール酒

発売時期:5月中

毎年瞬殺で売り切れる「仙禽」の甘酸っぱい人気夏酒!どこにも銘柄が書いておらず、透明瓶にレインボーカラーのかぶとむしが浮かぶ、絵本のような可愛らしいパッケージです。裏には「あなたの少年時代は、いつでしたか」と書いてあります。いつだったろう?はて今だろうか・・・なんて思いを馳せながら飲めば、さわやかな柑橘系の飲み口と、リンゴ酸が効いて甘さがふわっと軽やかな味わいに魅了され、つい続けてゴクゴク飲んでしまいたくなります。見つけたらすぐ買ってみてください!

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玉川 Ice Breaker 無濾過生原酒(京都府・木下酒造)

  • 玉川アイスブレーカーのボトル

●生酒 ●原酒

発売時期:5月10日

イギリス人杜氏フィリップ・ハーパーさんがつくる、氷を入れてロックで楽しむ日本酒です。青い瓶と青いラベルとペンギンのイラスト・・・これを見ると「夏が来たな」って思います。通常の日本酒に氷を浮かべると、ちょっと分離したような風合いになり、味がボケることが多いものです。しかしこのお酒は、ロック用に計算されてつくられている無濾過生原酒なので、そのまま飲むと旨味が強く、インパクトあるパワフルな味わい!ロックで飲むとちょうどいい、という絶妙なバランスを叶えています。氷が溶けるごとに味わいが少しずつ変化して、とても面白い新感覚の夏酒です。

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陸奥八仙 夏どぶろっく(活性にごり 生原酒) (青森県・八戸酒造 )

  • 陸奥八仙どぶろっくのボトル

●生酒 ●原酒 ●にごり酒 ●低アルコール酒

発売時期:6月14日

瓶内二次発酵といって、瓶の中でまだ生きている酵母が発酵を続け、炭酸ガスを発生させて液体に溶け込んでシュワシュワさせたお酒です。よーく冷蔵庫で冷やした後、少しずつ気を付けながら開栓しないと、激しく噴き出すことがあるほどです。キャップを緩めると液面が上がってくるので、ふたを閉めて、またちょっとキャップを緩めて・・・を何度も繰り返し、ようやく飲めるお酒。にごりが多く入っているので口当たりが柔らかく、同じ瓶内二次発酵でつくるシャンパンではなく、出来立てのピチピチしたどぶろくのような印象。マスカットのようなフルーティな香りと甘み。大人のカルピスソーダのようです。

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山形正宗 夏ノ純米 花火ラベル(山形県・水戸部酒造)

  • 山形正宗夏ノ純米のボトル

●原酒

発売時期:5月中旬発売開始

この花火ラベルの夏酒を毎年心待ちにしている日本酒ファンは多いはず!純米酒ですが、吟醸酒のような華やかで爽やかな香りがして、旨味もしっかり味わえるお酒です。原酒ですが、口当たりガツン!という感じではなく、濃淳だけど角がなくおだやか。酒蔵の技術力の高さを感じる、キレのよいドライな夏酒です。料理を選ばず何でもよく合います。せっかくなので、酒蔵が位置する山形県の名産であるだだちゃ豆や岩ガキなどと合わせてみては?!

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ボーミッシェル snowfantasy in summer(長野県・伴野酒造 )

  • ボーミッシェルのボトル

●生酒 ●原酒 ●にごり酒 ●低アルコール酒

発売時期:6月上旬

「Beau Michelle(ボーミッシェル)」はビートルズの曲を聴かせて醸した、日本酒初心者でも飲みやすい軽やかなお酒(Beauとは、フランス語で「美しい」「可憐な」という意味です)。アルコール9%、微発泡のうすにごりで、甘酸っぱいデザートワインのようなリキュールのような「これが日本酒?!」という不思議な味わいです。よく冷やして、フルーツやデザートと合わせて飲んでもぴったりでしょう。

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ALPHA風の森夏の夜空(奈良県・油長酒造)

  • 風の森のボトル

●生酒 ●原酒 ●低アルコール酒

発売時期:5月下旬

「風の森」ブランドはすべて無濾過・無加水の生原酒と、定義されています。搾りたてそのままのお酒に含まれる炭酸ガスが含まれているので、開栓したてのお酒は少しだけ“プチプチ”“ピチピチ”とした舌触りを感じます。もちろん今回の「夏酒」もそのひとつ!バナナやメロン、ちょっぴりヨーグルトみたいなニュアンスのある香り。アルコール11度でも飲みごたえあるように、甘みもあって柔らかな酸もしっかり効いています。一見すると玄人向け、でも日本酒初心者にもシンプルに「おいしい!」と言わせちゃうのが、「風の森」の手腕です。ぜひよーく冷やして飲んでみてください!

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獺祭 純米大吟醸 スパークリング45(山口県・旭酒造 )

  • 獺祭のボトル

●にごり酒 

発売時期:通年

「夏酒」として売られているわけではない通年商品ですが、夏にこそオススメしたい1本です。米を贅沢にたくさん磨いてつくる純米大吟醸だからこそ出せる華やかで透明感ある若いメロンのようなフルーティな香りが美しく、にごりのスパークリングなので口当たり柔らかい甘みを感じます。乾杯のシーンなど単体でも美味しいですが、夏に食べたくなるカルパッチョなどの冷菜にも合わせやすい気品あるスパークリング日本酒です。

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黒龍(こくりゅう) 夏しぼり(福井県・黒龍酒造)

  • 黒龍のボトル

●原酒

発売時期:5月上旬~中旬

「黒龍」は、業界で知らない人はいない一流の銘醸蔵。憧れの銘柄です。同じ蔵のなかでも「黒龍」ブランドは大吟醸酒を中心に、贈答用の商品も揃えています。一方で、「九頭龍」ブランドでは、黒龍品質をより身近に、よりカジュアルに楽しめるよう、燗酒やオンザロック専用の商品を展開しています。今回ご紹介する「夏酒」は、黒龍ブランド!でも720mlで1,870円(税込)と、そんなに高価ではないのでご安心を。味わいは、ドライだけど旨味があります。本来矛盾しているはずのふたつの味わいですが、絶妙なバランスで叶えられているのは技術力の高さゆえ。爽やかでみずみずしいお酒です。よく冷やして飲んでみてください。

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来福 夏酒(茨城県・来福酒造 )

  • 来福のボトル

●低アルコール酒

発売時期:5月13日

青い瓶に青のラベル。どこから見てもこの時期だけの「夏酒」!気候が蒸し暑くなってくると、青色を見ただけでも涼やかでほっと心落ち着きます。来福酒造は、花酵母を使用していることでも有名です。自然界の花から菌を採集して、日本酒の発酵に適したものを厳選して培養し、使用しているので特に花の香りがするわけではありません。このお酒は、シャクナゲの花酵母で醸されています。日本酒の重たい香りではなく、フルーティで爽やかな果実のような香りがします。酸もあって、スッキリと飲めます。料理との相性も◎。「来福」は夏酒に限らず、どれを飲んでもみんな納得のお味です。

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雨後の月 涼風 純米吟醸(広島県・相原酒造)

  • 雨後の月のボトル

発売日:5月11日

ほのかにマスカットや若いメロンのような香りがして、とても爽やか。しかし味わいは単純なサッパリタイプではない、旨味を知る大人のための「夏酒」!全体にまとまりがあり、旨みはありながら重くも軽くもない、シャープなお酒です。キンキンに冷やすよりも、冷蔵庫から出して少しだけ置き、ちょっぴり室温に戻したくらいの温度で飲むのがオススメです。今回冒頭でご紹介した生酒、原酒、にごり酒、低アルコール酒のどれにも該当しないのに、まるで夏の夜に吹く熱気や湿気を帯びた風を思わせる味わいで、ちゃんと“夏”しています。相原酒造がつくる日本酒は、どれもフルーティで上品で美しく、キレが良いのが特長。技術力の高い酒蔵だからこそ実現できた絶妙なバランスの「雨後の月 涼風 純米吟醸」を一度ご体験ください。

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夏の日本酒の保存で気を付けること

生酒やにごり酒の開栓注意!顔に向けず、ゆっくりと

加熱処理(火入れ)せず「生酒」の状態で出荷されるお酒は、まだ瓶内に酵母が元気よく生きています。その影響で、時には“天井までフタが飛んだ”とか“お酒が吹きこぼれてほとんど残らなかった”ということもあります。思いがけず飛んだフタが目に当たった、人に当たった、と事故が起きないよう、開封するときの酒の向きには十分注意しながら、よ~く冷やしてから開封してください。中身が噴きこぼれそうなときは、瓶をきれいに消毒液で拭いてからボウルなどで受けながら開栓するとよいでしょう。

基本的には、すべて冷蔵保管

全てではありませんが、夏酒は「要冷蔵」のことが多いです。家では冷蔵庫の中に保管しましょう。より美味しく飲むためには、酒屋さんに買い出しに行く際は、保冷バッグに保冷剤を詰めて持っていくとよりいいかも!

※多少の移動なら基本的には問題ありません。事故を防ぐためにも、生酒やにごり酒の場合は、酒屋さんからの注意事項をよく聞きましょう。

夏もたくさん日本酒を楽しんでください!

「美味しいからこれは飲んでおいて」と思う、オススメの夏の日本酒10選をご紹介しました。ここに載せることができなかった銘柄も多くありますし、それ以外にも個人的に毎年楽しみにしている夏酒はたくさんあります。

「最も日本酒が売れない」と言われている夏ですが、近年では冷蔵運送が発達し、酒蔵での美味しさそのままに“しぼりたて”の味わいを楽しめるものも増えてきました。酸が高いお酒や低アルコール酒など、夏バテ気味の身体でもついつい盃が進んでしまう工夫を凝らした日本酒も多く販売されています。また今回はご紹介していませんが、冷酒と並んでオススメしたいのは「熱燗」。エアコンで冷えた身体に、あったかいお酒が染み渡り、じんわり身体を温めてくれます。日本酒の楽しみ方は自由です。いろいろと試して、あなたならではの「夏の日本酒の楽しみ方」見つけてくださいね。 

※発売時期は、製造元である酒蔵からの情報をもとにしています。

※販売酒販店によって仕入れや発売時期が異なる場合がございます。

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