岐阜の日本酒おすすめ10選 5,000種以上きき酒した日本酒王子が忖度なしで厳選!

前回は、愛知の日本酒10選をご紹介しましたが、たくさんの反響をいただきました。皆さま読んでいただきありがとうございます。 まだまだ全国には美味しい日本酒がたくさんあります! 例えば、筆者の出身地でもある岐阜県には、愛知と同じく42の蔵があり、日本酒づくりもとても盛んな地域です。そんなわけで、今回は愛知県に続き、岐阜県のおすすめしたい日本酒10選を、 これまで5,000種類以上を唎き酒してをしてきた私、日本酒王子・近藤悠一が忖度なしでご紹介していきます。

岐阜県の日本酒の特徴は?

揖斐川、長良川、木曽川、という3つの三大河川が流れる岐阜は、様々な水質や気候に富んだ県で、海こそないものの個性あふれる日本酒が産み出されています。そのため、岐阜県には6つもの酒造組合があるのですが、ご存知でしたか? (岐阜酒造組合、西濃酒造組合、関酒造組合、多治見酒造組合、中津川酒造組合、飛騨酒造組合)

飛騨地方のお酒は飛騨地方以外にはなかなか出荷されないものも多く、キリっとしていてすっきり系が多いイメージ。また西濃地方のお酒は濃厚で力強く旨味たっぷりなものが多い印象があります。

  • 日本酒がはいったお猪口と升に入ったお米

本当に飲んで欲しい!岐阜県のおすすめの日本酒10選

個性あふれる岐阜県のお酒の中から、私が忖度なしでぜひお試しいただきたいと思う10本をお選びしました。私が岐阜出身ということもあり、どの10本にしようか本当に悩みました。これ以外にもオススメの日本酒はたくさんありますが、今回は10種類、順番にご紹介していきます。

1. ふかもり 純米吟醸 五百万石55 【山内酒造/岐阜県中津川市】

  • 日本酒の瓶

江戸時代初期から続く山内酒造場を引き継いで、杜氏として酒造りをされているのが酒販店の「中山道大鋸」店主の大鋸伸行さん。この「ふかもり」は特に大鋸さんが飲みたいと思うお酒を造るという想いで造られた限定流通酒です。2023年 のゴールデンウイークに開催された「ダム酒フェスタ」にも出品されていて、貯蔵前の「ふかもり」はひときわ美味しかったのを覚えています。穏やかなナッツ系の香りと芯の通った旨味、すっと消える後味の潔さが、1年の熟成によってどう変化するのか、楽しみで仕方ありません。

 

 

2. 鯨波 純米吟醸 【恵那醸造/岐阜県中津川市】

  • 日本酒の瓶

岐阜県の酒米である「ひだほまれ」を60%まで磨き、15度台のアルコール度数に仕上げたクラシックミディアムタイプ(炊き立てのご飯や焼き立てのパン、ナッツのような香りのするミディアムボディタイプ)。

まさに癒し系、という言葉がぴったりの食中酒タイプです。お酒単独ではそこまでの印象は残らないんですが、お魚からお肉、野菜と幅広く食材に合わせることができて、軽すぎず重すぎず、冷酒でも燗酒でもそつなくこなすバランスの良さが光る一本です。気がついたら、あっという間に1本終わっている、という感じの晩酌酒なので、飲みすぎには十分ご注意ください(笑)

3. 津島屋外伝 契約栽培米山田錦 純米 瓶囲い 2023 【御代桜醸造/美濃加茂市】

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岐阜県の奨励品種になっていないため、幻と言われている岐阜県産の山田錦を60%まで磨き、16度台のアルコール度数に仕上げた限定流通酒です。

このお酒に使われているお米の農家さんに見学にお伺いしたことがありますが、減農薬で栽培された山田錦は、「見た目はよくないけれども、ともすると兵庫県の山田錦よりもいいお酒になる」と造り手が言うくらいのポテンシャルがあります。力強い旨みと厚みのある角ばった骨格で、キレの良い酸が冷酒でも良いですし、燗にするとなお旨さが際立ちます。2020年、2023年と、全国燗酒コンテストのプレミアム部門で金賞を受賞したことでも、その品質の高さはお墨付きです。

4. 射美 WHITE 【杉原酒造/岐阜県揖斐郡】

  • 日本酒の瓶

日本酒好きの方なら一度は飲んでみたい、と思ったことがあるのではないでしょうか。日本一小さな酒蔵が造る超レア酒です。  

日本酒用の麹(こうじ)には通常「黄麹」が使われますが、こちらは焼酎造りに使われることの多い、クエン酸を生成する「白麹」を使用しています。その白麹は黄麹よりも弱いので、蔵元自らが手造りした白麹専用の麹室で作られます。

上品なバニラ香によって膨らむ期待通り、口に入れた瞬間に弾ける極上の甘みと、その奥に潜む白麹の特長である独特な酸味が折り重なって、特別感を演出しています。

長めの余韻は黄麹で造られてきた射美のイメージを踏襲するものですが、その中に存在するかすかな渋みがキレの良さも演出していて、WHITEでしか味わえない個性も光る一本です。

5. MINO de BLANC 純米 無濾過生原酒 【所酒造/岐阜県揖斐郡】

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岐阜県の若手小売酒屋が5軒集まって、岐阜県海津市のハツシモを使用して企画したプライベートブランドです。造るのは「房島屋」を造っている揖斐郡揖斐川町の所酒造さん。

白麹を使用して表現した酸によるキレの良さとぶどうのような爽やかな香り、房島屋らしいドライでシャープな味わいが特長的な、純米の無濾過生原酒タイプ。どことなく白ワインに近いような酸と旨味のバランスが良くて、しっかりと冷やしてオリーブオイルを使った料理と合わせると真価を発揮する、そんな面白いお酒です。

6. 竹雀 生酛純米 岐阜県産山田 【大塚酒造/岐阜県揖斐郡】

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大塚酒造さんの地元、池田町産の山田錦を70%まで磨き、15度台のアルコール度数に仕上げた、味わいがしっかりしていて濃いタイプの中でも、 特に重めのクラシックフルです。

山田、と表記してあるのは岐阜県が山田錦を奨励品種にしていないので、岐阜県産の山田錦だと高らかにうたうのを控えたという経緯があります。蔵元の大塚さんも手伝って栽培した山田錦の個性を最大限に引き出すために3割のみ磨いて醸したのちに4年ほど熟成させています。初心者の方には飲みづらいと思いますが、冬場に味噌ベースの濃い味付けの鶏の鍋などと燗酒で合わせるととても映えますので、ぜひやってみてください。

7. 氷室 大吟醸生酒 【二木酒造/高山市】

  • 日本酒の瓶

元禄8年(1695年)創業の長い歴史を持ち、飛騨地方で唯一吟醸酒のみを造る吟醸蔵として名高い二木酒造さんのフラッグシップがこの「氷室 大吟醸 生酒」です。ひだほまれを50%まで磨き、厳冬期に搾られた生のままの状態で通年リリースされているのが特長的で、飛騨の生酒といえば氷室、と言われるほど一世を風靡した生酒。華やかな香りは控えめながら果実香を感じさせつつ、同時にナッツのようなクラシック系のニュアンスもあります。新酒がリリースされる時期には生らしいフレッシュ感も、春、夏、秋と徐々に丸みを感じるようになってきますので、飲む季節によって味わいが変化していくのも面白い一本。

 

8. 恵那山 純米吟醸 ひだほまれ 【はざま酒造/岐阜県中津川市】

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創業家は1601年に中津川へ移り住み、酒造りを始めたのは江戸中期ということで200年以上の歴史があります。2014年には、名古屋市を中心に愛知・岐阜・三重へ酒販卸を営む(株)マルト水谷と資本提携され、2016年にはアルコール添加をしないお酒のみを造る純米蔵となりました。現在「恵那山」の醸造指揮をとっているのが酒販店・マルト水谷出身の岩ヶ谷雄之さん。師匠は山口県の人気銘柄「東洋美人」を醸す澄川宜史さんです。透明感のある味わいのなかに、ひだほまれらしい「穏やかながらも芯のしっかりとした旨味」が心地いい一本です。

9. 百十郎 純米吟醸 無濾過生原酒 白炎 【林本店/岐阜県各務原市】

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白炎、というネーミングは歌手・斉藤由貴さんの「白い炎」からのインスピレーション。2019年に特許を取得した「無添加乳酸菌製法」(日本初の乳酸菌を活用した無添加製法により、旨味が向上) で醸されていて、毎年新酒の第一弾としてリリースされる冬の季節限定酒です。

爽やかな瓜のような香りと、口に含んだ瞬間はフレッシュ感溢れる力強い旨みを感じたかと思えば、ジワジワと深みのある味わいに変化していきます。後味は、ピリピリとした酸が心地よく食欲を刺激して、もう一口もう一口と飲み進めたくなる食中酒。気がついたらなくなってしまっていたというような、キレの良いドライなタイプです

10. 醴泉 正宗 純米大吟醸 中汲み原酒 【玉泉堂酒造/岐阜県養老郡】

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「老を養う若返りの水」として「養老」の元号になった逸話を持つ「菊水泉」は、日本三大名水の一つ。その養老で醸されるのがこの醴泉です。醴泉のなかでもこの純米大吟醸は、兵庫県産の特A地区の山田錦を35%まで磨いて醸された最高峰。搾る際に、始めに出てくる「あらばしり」という滓(おり)が比較的多く絡んでいる前半部分と、ぎゅっと圧力をかけて搾り上げる「責め」と呼ばれる後半部分を避けて、最もバランスの良いと言われる「中汲み」のみを瓶詰した原酒です。穏やかで優しいメロンのような香りと、バニラを思わせる柔らかな旨味が口の中を彩ったかと思えば、後味はキリっと引き締まります。原酒ならではの飲みごたえも楽しめるので、冷酒はもちろん、ぬる燗にしても面白いですよ。

筆者の地元・岐阜のお酒でぜひ乾杯してください

今回は岐阜県の小さな酒蔵の造る日本酒を10種類ご紹介しました。

生産量が少なかったり、出回っている場所が限定されていたりと、中々お目にかかれないものも中にはありますが、見かけられたらぜひ一度お試しいただけると良いものばかりです。

また筆者の地元でもある岐阜県の日本酒は、今回ご紹介した以外にも、個性豊かで本当に美味しい日本酒が数多くあります。10種類を選ぶのが心苦しかったのですが、あなたのお気に入りの一本が見つかるきっかけになれたら幸せです。これから日本酒を始めようとか、最近日本酒の良さに気付いた、というビギナーの方から、もうかれこれウン十年日本酒を楽しんでいるというような玄人の方まで楽しむことができる多種多様な日本酒が揃っています。ぜひお試しください。

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