愛知の日本酒おすすめ10選 5,000種以上きき酒した日本酒王子が忖度なしで厳選!
愛知県にはいくつの酒蔵があるかご存じですか?答えは42。2021年の清酒の製造量は全国7位、と実は酒造りが盛んな地域なのです。
そんな愛知の日本酒を飲んでみたいけれど、種類がいっぱいあって何を選んだらいいのか分からない、そして買いに行ってもラベル見ただけじゃ本当に美味しいかどうか、好みのお酒なのかが心配、ってお思いの方も多いのではないでしょうか?そんな皆さんに、いままで5,000種類以上を唎き酒してきた私、日本酒王子の近藤悠一がぜひ飲んでいただきたい、失敗しない愛知県の日本酒をご紹介します。
はじめまして、日本酒王子です
まず、なぜ筆者が「日本酒王子」なのか、説明したいと思います。日本酒王子といっても、酒蔵の息子でも、代々続く小売酒屋の跡取りでもありません。大学時代に酒造組合が出資して運営していた日本酒バーでのアルバイトをきっかけに、日本酒にドハマリ。その後の1年間のアメリカ留学の際に飲んだ管理の行き届いていない不味い日本酒に衝撃を受けて、本当に美味しい日本酒を世界中に届けたい!そして日本酒文化を守りたい!という想いから日本酒専門の酒屋「さくら酒店」を同級生と一緒に立ち上げました。
それから10年以上にわたり、マリアージュ(日本酒とお料理の組み合わせ)を楽しむお酒の会を100回以上開催したり、日本酒の先生として講座の講師をしてきたなかで、2022年8月に『日本酒王子』として王子認定協会に認定されました。5,000種類以上の日本酒を唎酒してきたなかで、ぜひ皆さんに知ってほしい、飲んでほしいと思う日本酒をご紹介します。
愛知県の日本酒の特徴は?
みなさんは愛知県のお酒ってどんなイメージをお持ちでしょうか。
良質なお米がとれたことと、清らかな水があったことから知多半島を中心に個性豊かな日本酒が生み出されました。この酒造りの際に出る酒粕を再利用するために、愛知はお酢やみりんといった醸造文化が華やぐ土地になりました。大豆の生産地でもあったことから、味噌文化が醸成されたのも特長的です。
そんな旨味たっぷりな調味料に合わせて、芳醇でどっしりとした豊かな味わいをもつ日本酒が多いのも愛知県の日本酒の特徴。淡麗辛口というよりも濃淳辛口、というタイプが愛知県の日本酒らしいと言えます。
本当に飲んで欲しい!愛知県の日本酒10選
今回は、忖度なしで飲んでほしい愛知県のお酒を10種類ご紹介します。正直とても悩みましたが、大量生産ではない、小さな蔵元の造る日本酒の中から、特に個性がはっきりしていて、想いのある、ストーリーのあるお酒を選びました。日本酒選びの参考にしていただけたらうれしいです。
1. 長珍 純米 しんぶんし65 阿波山田錦 生原酒 【長珍酒造/愛知県津島市】
いわゆる新聞紙にくるまれてるやつ、といったらおわかりになる方もいるのでは。阿波山田錦(徳島県産の山田錦)を65%まで磨き、18度台のアルコール度数の搾られたままを瓶詰したお酒です。
地元の中日新聞の紙面を瓶に巻き付けて光を遮断している見た目のインパクトの大きさもさることながら、何と言ってもクラシックフル(炊き立てのご飯や焼き立てのパン、ナッツのような香りのするフルボディタイプ)の王道とも言える超ヘビー級の旨味と力強い酸味が特長的です。これにはまったら、他のお酒は飲めなくなるというマニアも続出するほどのお酒で、生原酒ですが常温で何年も寝かせている人や、燗酒にして楽しむかたも多いのが面白いところです。
2. 二兎 純米大吟醸 雄町三十三【丸石醸造/愛知県岡崎市】
備前雄町(岡山県産の雄町)を33%まで磨いて、アルコール度数16度台に仕上げたモダンライト(果実や花の香りのする、味わいの軽いライトタイプ)。
二兎のコンセプトは、「二兎追うものしか二兎を得ず」。「味と香」、「酸と旨」、「重と軽」、「入りと後味」、「シンプルさと複雑味」というような両立が難しいと思われることを1本のお酒で表現しよう!という想いが具現化した最高峰がこの雄町の33です。旨味があっても軽やかで、控えめながらも気品がある香りで、特にワイン好きにはぴったりなお酒だと思います。
3. 樂の世 山廃純米 生原酒 【丸井合名会社/愛知県江南市】
このお酒の特長は何といっても超ヘヴィー級の旨味の強さ。これ以上に重たいお酒はなかなかありません。クラシックフルタイプの中でも最も重たい部類になっていて、昔ながらの日本酒がお好きな日本酒通の方にはぜひ一度試していただきたい一本です。兵庫のとある大手蔵へお酒を納品していたのが打ち切りになったことで存続の危機にありましたが、個性ある味わいでじわじわと人気が出てきてファンも増えてきました。生原酒ですが、燗酒にしても映えるのでお試しください。
4. ほしいずみ 10号酵母 生原酒 【丸一酒造/愛知県知多郡】
本当に小さな酒蔵さんですが、この平仮名表記の「ほしいずみ」ブランドは色々な酵母を使って個性の違う日本酒に仕上げています。中でもオススメなのは、使用している蔵も少ない10号酵母による生原酒。メロンや瓜のような感じの香りと、すっきりとした口当たり。開けたては硬めでキレのあるボディの旨味が、徐々に膨らんでくるのをじっくり楽しむことができます。
しっかりと冷やしてワイングラスに注ぐと、注ぎたてのフレッシュさと空気に触れることで少しずつ角が取れてくる様を同時に楽しむことができる一本です。
5. 醸し人九平次 別誂え 純米大吟醸 【萬乗(ばんじょう)醸造/名古屋市緑区】
山田錦35%精米、アルコール度数16度台のモダンライトタイプ。愛知県内での人気もさることながら、日本全国、そしてフランスをはじめ世界の名だたるレストランでもオンメニューされている蔵元の醸す、特注品で、フラッグシップがこの別誂です。 ほんのりライチのような香りと、口の中で踊るような弾けるガス感がテンションを上げてくれます。親友の結婚式の乾杯でこれが出てきたときは、思わず3杯くらいお替りしちゃいました(笑) 結婚式やパーティーなどといった、ここぞ、というハレの日にぴったりなお酒です。
6. 敷嶋 山田錦 9号酵母 特別純米 生原酒【伊東株式会社/愛知県半田市】
山田錦を60%まで磨いて、アルコール度数は19度のクラシックのニュアンスもあるモダンフルタイプ。何と言っても力強い旨味とアルコール度数の高さが目を引きます。この蔵は2000年に製造免許を返上して21年間酒造りが途絶えていましたが、9代目蔵元の伊東さんが「伊東の酒を、再び多くの人に飲んでもらいたい」との熱い想いで免許を再取得して2021年から再びお酒造りを復活させました。まだ定番商品はありませんが、このインパクトの強さはぜひ一度飲んで欲しいと思って選びました。
7. 夢山水十割 奥 熟 純米吟醸原酒 【山崎合資会社/愛知県西尾市】
「尊皇」「山﨑醸」「焚火」など様々なブランドを展開している山崎合資会社さんが、平成14年にリリースしたブランドが「奥」。コンセプトは華やかな香りがありつつ、できるだけ味わいの濃いお酒。使用するお米は愛知県の新しい酒米である「夢山水」のみ。
アルコール度数が18.5度ととても高いので、力強い旨味とあと切れの良さがありますが、華やかな果実の香りのおかげで飲みやすく、日本酒ビギナーの方から日本酒通の方まで幅広くオススメできます。加熱殺菌処理を施してから1年以上熟成させたことで出た丸みもチャームポイントです。
8. 白老 自然栽培米の酒 火入れ原酒 【澤田酒造/愛知県常滑市】
2020年11月に、酒造りの根幹でもある麹室が全焼。そこから多くの方の支援と血のにじむような努力の末に復活した蔵です。この自然栽培米の酒はそんな蔵元の困難に立ち向かう不撓不屈の精神が宿ったお酒ともいえると思います。
地元農家とともに無農薬・無肥料で栽培した、愛知県では奨励品種になっていない「雄町」を使っています。純米、とか純米吟醸、というような表記ができないのは、収穫量が少なくて等級検査を受けることができないから。その味わいはモダンでガス感がありつつも線の太い、分厚い旨味とキレの良さが特長です。
9. 蓬莱泉 空 純米大吟醸 【関谷醸造/愛知県北設楽郡】
1985年にリリースされた愛知県でも特に人気の高いお酒がこの「空」。3種類程度の酵母違いの純米大吟醸を絶妙にブレンドさせて1年間熟成を施してリリースされます。数量がとても少ないのとファンが多くいらっしゃるので中々購入することが難しいお酒のひとつ。もし見かけることができたらラッキーで、迷わず購入です(笑)
私は大学生の時(二十歳)に、愛知県出身の先輩が譲ってもらったという空を初めて飲みましたが、バランスの良さに感動したことを思い出します。年々時代の流れを汲み取りながら味わいが変化しているので、ずっと追いかけてみてください。
10. 千瓢 めぐる 純米酒 【水谷酒造/愛知県愛西市】
お店で出る「野菜くず」や、賞味期限が切れてしまった商品などの「生ごみ」「魚のあら」などを堆肥にして育てられた愛知県米「あいちのかおり」を使っています。また、瓶もリユース瓶といって再利用された瓶を使用していて、とにかくSDGsの想いが込められたお酒。
『飲む人、つくる人、売る人、返す人が1つの輪になって初めて誕生する、循環型社会を目指した「にほんをめぐる」日本酒』(蔵元談)として、飲めば飲むほど社会貢献になるお酒でもあります。味わいはしっかりとした旨味と後切れのいい酸味が特長的です。
あなただけの一本を探す楽しみを
今回は愛知県の小さな酒蔵が造る、想いのある日本酒を10種類ご紹介しました。ところで私は、よくこんな質問をいただきます。
「日本酒王子がオススメする日本酒で一番は何?」
すみません、一番は選べません(笑) どれも想いが詰まっていて、それぞれの酒蔵さんには醸造に対する哲学や情熱があり、一つとして同じものはないですし、日本酒に絶対的な正解はない!と思っているからです。
また、飲んでくださる方の好みによってもオススメしたいお酒は違ってきます。ですが、これらの10本は、ぜひ一度お試しいただけると嬉しいものばかりです。中々見かけないものもあるかと思いますが、探してみてください。
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