木造建築の旧酒蔵が日本酒ファン注目のスポットに進化 旧「伊東合資」がリブランディングを実施【内覧会レポート】
かつて中部地方最大級の規模を誇った歴史ある酒蔵が、日本酒ファンなら見逃せないスポットに進化。愛知県半田市亀崎町にある「伊東合資」が第1期リブランディングを実施し、「酒蔵」としての息づかいが感じられる日本酒スポットへと進化します。
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第1期リブランディングを実施する「伊東合資」
2026年1月30日(金)のオープンを前に行われた内覧会に筆者も参加。この記事では、新たな「伊東合資」の楽しみ方をお届けします。
「『敷嶋』の歴史と酒を五感で楽しめる場所」へとリブランディング
「伊東合資」は、半田市亀崎で約200年前に建築された木造の旧酒蔵を活用して誕生した食の複合施設。この場所で酒造りを行ってきた伊東家の9代目・伊東優さんが代表を務める株式会社亀崎Kamosにより2024年1月にオープンしました。
かつては名古屋国税局管内にて最大規模の酒蔵として日本酒造りを続けてきた伊東家ですが、時代の流れの中で一度は酒造事業を廃業します。しかし、9代目・伊東優さんが「もう一度営みとして酒造りを戻す」と決心。2021年冬に酒造免許を再取得して亀崎での酒造りをリスタートし、「敷嶋」のブランドを再興させました。
「敷嶋」を再興させた伊東さんが続いて手がけたのが、かつて酒造りを行っていた酒蔵建物の再活用。愛知県内でも最大級となる約1800坪の歴史的木造建築物「伊東合資会社本蔵」を再び取得し、様々な食や体験を通じて亀崎の街の歴史と文化を感じられる複合施設「伊東合資」を2024年1月に誕生させました。
当初は、レストラン、カフェビストロ、ショップの3店舗体制で運営。イベント開催時などは数千人が訪れる他、地域の方々を中心に親しまれてきました。
オープンから2年を経て行われたリブランディングのテーマは、「味わい尽くす」。運営内容を全面的に見直し、生産者である酒蔵が直営する施設であることを生かした「『敷嶋』の歴史と酒を五感で楽しめる場所」を目指しています。
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リブランディングコンセプトを説明する伊東優さん
毎日が蔵開き!歴史と営みが行き交う「合資横丁」は日本酒ファン必見の新スポット
2026年1月30日にリブランディングオープンする新生「伊東合資」には、蔵元直売ショップや菓子店、ポップアップスペースなど複数の施設が誕生。中でも最も注目されるのが、旧伊東合資会社本蔵の圧倒的なスケールの中で地域の食と酒を楽しめる「合資横丁」です。
「合資横丁」は、伊東合資の歴史的建造物に囲まれた路地を活用して新たにオープンする飲食&ショッピングゾーン。1月30日には屋台式の酒場「おもだか」と地域の醸造品を中心に扱う「よろずや」の2店舗がオープンします。
かつて蔵人たちが駆け回った場所で日本酒と料理を堪能
「おもだか」では、「伊東合資」に隣接する酒蔵で造られた日本酒「敷嶋」と、株式会社亀崎Kamosで食の研究開発を担う部門「gnaw」が開発した調味料類や地元食材を活用した料理を楽しむことが可能。購入した日本酒や料理は、「合資横丁」内に設けられた飲食スペースでいただくことができます。
「おもだか」では、10種類を超える「敷嶋」を楽しむことができます。3種飲み比べセットもあり、準備が整った段階で燗酒の提供も始まるとのことです。中でも注目なのがおもだか限定で発売される「升専用酒」。「敷嶋」が復活した年に造られた飯米仕込みの「敷嶋」を、木の升でいただくことができます。
「升専用酒」は一般には卸されていない日本酒。敷嶋ならではの辛口の味わいと木升の香りのハーモニーがたまりません。升の角に添えられているのは米と塩を合わせて造られた敷嶋オリジナルの「米塩」。丸みのある塩味の中に米の旨味も感じられる米塩は、升酒のおいしさを際立たせる最高のパートナーです。ちなみに「升専用酒」の升はそのまま持ち帰り可能。お代わり酒もお値打ち価格で楽しめます。
一方、「おもだか」にはお酒にピッタリ合うおつまみメニューや〆にちょうどいい料理も豊富にラインナップ。良質の親鶏をベースとした鶏出汁のおでんや地元の食材・調味料をふんだんに取り入れた一品料理など、和洋中にこだわらない「日本酒のおとも」がズラリと並びます。
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「おもだか」のメニューには「豚の角煮」やまぜうどんスタイルでいただく「油うどん」もラインナップ
購入した日本酒や料理は、「合資横丁」内に設けられた飲食スペースでいただきます。歴史的建造物に囲まれた風情あふれる雰囲気の中で味わう日本酒と料理は、格別の一言です。
「合資横丁」の飲食スペースには火鉢も備え付けられており、炙り専用の串セット・練り物セットも販売されています。取材日は冷え込みが非常に厳しかったのですが、火鉢を囲んでアツアツのおつまみとともに日本酒を頂けば、寒風すらも乙な日本酒日和の風情として楽しめました。
「合資横丁」に設置されている火鉢は、建物の改築中に発見されたものとのこと。かつての伊東合資会社では約30種類もの銘柄の日本酒を造っており、火鉢には当時の銘柄がデザインされています。歴史と往時の隆盛を忍ばせる貴重な火鉢で肴を炙れるのも「伊東合資」ならではの楽しみです。
「よろずや」では、知多半島の醸造文化が生み出した調味料やすぐに食べられるおつまみを購入可能
もう一つの店舗「よろずや」は、古くから醸造文化が発展してきた知多半島ならではの醸造品や農産物などを販売。当面はリブランディング前の「蔵の店 かめくち」で扱われてきた商品が中心とのことですが、今後は商品ラインナップにもさらなる工夫を施していくとのことです。
また、「よろずや」の冷蔵ケースには「おもだか」製のカップ入りおつまみも多数用意されています。てすぐにいただくことができるので、“口取り”として日本酒とともにいくつか購入するのがおすすめです。
当初は「おもだか」と「よろずや」の2店舗体制でスタートする「合資横丁」ですが、2026年春にはもう1店舗が仲間入りするそう。どんなお店が入るのか楽しみです。
風情あふれる景色や“隠し蔵”も必見
「合資横丁」のオープンに合わせ、路地を囲む建物も大規模に改修。土蔵の「なまこ壁」や旧酒蔵の「よろい壁」も往時のままに修復し、200年前の風情を楽しむことができます。
また、「合資横丁」の一角には「隠し蔵」と呼ばれるスペースも誕生。この「隠し蔵」は建物の修繕のために植え込みの木を切り拓いた際に発見された、文字通り「隠れていた蔵」。江戸時代後期に建てられたと思われる古い蔵を全面改修し、日本古来の技法を生かした“三和土(たたき)”仕上げの土間スペースとして再生されました。
「隠し蔵」は主に「合資横丁」の飲食スペースとして使用される他、将来的にはイベントスペースとしての活用も検討されているとのこと。昔の酒造りで使われていた唐箕や古い精米機なども展示されており、往時の酒造りの一端を垣間見ることもできます。
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唐箕や古い精米機なども展示
「合資横丁」以外にも酒蔵を味わい尽くせる施設が続々誕生
新生「伊東合資」には、「合資横丁」以外にも楽しい施設が目白押し。清酒「敷嶋」の直売ショップ「かめくち」、「敷嶋」のもろみ・酒粕・日本酒を使った“酒蔵のお菓子”を販売する「LIEromi」、さらにはポップアップスペースもオープンし、建物・酒・食の全てを“味わい尽くす”ことができる施設となりました。
「かめくち」 は“酒蔵の直売所”としてアップデート
「伊東合資」の入口を入ってすぐの場所にある「かめくち」は、“蔵元の直売所”へとアップデート。商品ラインナップを「酒」と「酒器」のみに絞り、蔵元としての酒造りの息吹をより一層感じられる場所へと生まれ変わりました。
新生「かめくち」は、思わず写真を撮りたくなるような「魅せ場」としての機能も重視。商品棚はかつて実際に使われていた日本酒を搾る「槽(ふね)」を活用し、その上にはもろみを入れる「酒袋」を吊り下げるなど、日本酒が造られてきた酒蔵ならではの空間が演出されています。
そして、もう一つの「かめくち」のシンボルがレジスペースの後ろにある重厚な金庫。かつてこの場所で銀行が営まれてきたことを示す、壁に埋め込まれた大きな金庫を空間デザインに取り込むことで、この地に刻まれてきた歴史を感じさせるものとなっています。
「かめくち」ではお酒の購入だけではなく、有料試飲も可能。銀行時代のカウンターを生かした空間で、様々な「敷嶋」を思い思いに楽しむことができます。
入口すぐの「ポップアップスペース」は酒蔵へと誘う
入口の左側には「ポップアップスペース」を新設。伊東さんによると、「伊東合資」の前を通りがかった人にも気軽に入ってもらえるように、入口から見える場所にポップアップスペースを設置したとのことです。
「ポップアップスペース」の陳列には古い家財などを活用。歴史的建造物である伊東合資本蔵の魅力をさらに引き立てています。
1月30日のオープン時には各種「敷嶋」グッズと「酒米」を使ったピアスやタイピンなどのアクセサリーを展開。酒米をあしらったオシャレでスタイリッシュなアクセサリーの数々は、日本酒ファンならグッと心を惹かれるものばかりです。ちなみに、「酒米アクセサリー」の制作者は、アクセサリー作家である伊東さんの奥様。これこそ正に「酒蔵」ならではのアイテムです。
「ポップアップスペース」での敷嶋グッズ・酒米アクセサリーの展開は、スペーツ活用の「見本」としての位置づけとのこと。将来的にはいろんな方が様々に利用できる場としていく予定とのことです。
酒造りから生まれたものを生かした“酒蔵の洋菓子店”「LIEromi」
入口から一歩入ったスペースには“酒蔵の洋菓子店”である「LIEromi」が新登場。フランス語で結ぶを意味する「LIE」と、お酒の「もろみ(moromi)」を掛け合わせた「LIEromi」では、米麹や酒粕、もろみ、そして日本酒「敷嶋」そのものを利用した、「ここにしかない」洋菓子を購入することができます。
伊東さんによると、お酒を飲まない人・飲めない人にも日本酒という“文化”を知ってもらいたいという想いを込めて「LIEromi」を立ち上げたとのこと。商品の陳列にかつて麹づくりに使われていた「麹蓋」を活用するなど、日本酒の文化の伝承を意識した空間となっています。
パウンドケーキやフィナンシェ、フロランタンをはじめとした「LIEromi」のお菓子は、パティシエとしての経験も持つ「gnaw」のシェフが一つ一つ手作り。酒蔵ならではのとびっきりのおいしさを楽しめます。
新生「伊東合資」は、“蔵開き”の趣を毎日楽しめる日本酒ファン必見スポット
今回の「伊東合資」のリブランディングにあたっては「酒蔵としての営み」を大切にしたという伊東さん。観光地ではなく“ものづくりの地”として発展してきた亀崎にある「伊東合資」だからこそ、この場所で培われてきた「営み」が感じられることが欠かせないと話します。
今回行われるのは“第1期”のリブランディング。今後さらに各所の整備を進め、新しいレストランの開設や常設館内ツアーの開催、さらには文化財として指定を受けた旧本宅を活用し“泊まれる酒蔵”にも取り組んでいくとのことです。
リブランディングを経てますますアップデートされる「伊東合資」。名古屋エリアの日本酒ファンはもちろん、遠方からも足を運ぶ価値のある日本酒スポットがまた一つ誕生します。
「伊東合資」 営業情報
≪合資横丁(おもだか・よろずや)≫
営業時間 11:00~17:00
定休日 日・月
≪かめくち・LIEmori・ポップアップスペース≫
営業時間 11:00~17:00
定休日 日・月
準備が整い次第、日曜日の営業及び金・土の延長営業も予定されているとのこと。詳しい営業情報やアクセスは「伊東合資」公式Webサイトにてご確認ください。
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