「敷嶋」の旧酒蔵内(愛知県半田市)に歴史的複合施設「伊東合資」がオープン! 蔵元の想いとは

中部地区最大規模を誇った旧酒蔵が地域の歴史・文化を伝える複合施設へとリノベーション

  • カフェの完成予想図

    江戸時代から昭和にかけての日本建築の美しさを現世に伝える貴重な遺産が、地域の歴史・文化を伝える複合施設に生まれ変わります

2021年に21年ぶりの復活を遂げた清酒「敷嶋」を製造する伊東株式会社。9代目蔵元・伊東優社長の次なる挑戦として、旧酒蔵「伊東合資会社本蔵」の建物を活用した歴史と文化を伝える複合施設「伊東合資」を2024年1月20日にオープンさせます。

愛知県半田市・亀崎にて、かつては中部地区最大級の規模を誇った旧酒蔵「伊東合資会社本蔵」。新しく生まれ変わった施設には、往時の空気をそのまま閉じ込めたような空間の中にレストランやカフェビストロ、ショップなどが入居。様々な食や体験を通じて、醸造業が盛んだった亀崎の街の歴史と文化を感じることができるそうです。

貴重な木造建築物である旧酒蔵を複合施設として復活させた理由

伊東優さん(伊東株式会社代表取締役、株式会社亀崎kamos代表取締役)

かつて、酒蔵は地域にとって文化そして経済の中心地でした。亀崎の町もかつては醸造と海運の町として賑わい、多くの人が遊びにくる場所でした。しかし、時代の移り変わりに伴い、多くの営みが失われ、この町は静かな場所となりました。古い建物はどんどん壊され、分譲住宅に変わっていく。このままだと町の個性がなくなってしまう。そう感じたことから「営み」である酒蔵の復活、そして日本でもあまり見ることのない規模感を誇る本蔵の買い戻し、そして改修まで踏み切りました。

「伊東合資」がオープンする「伊東合資会社本蔵」は、醸造業が盛んだった半田市・亀崎にて1788年(天明8年)に創業し、「敷嶋」の銘柄で知られていた伊東合資会社の旧酒蔵。大正12年には名古屋税務監督局管内醸造家番付(東海四県+新潟県、長野県)で唯一の横綱蔵にランクインするなど、中部地方最大級の規模を誇っていました。

  • 昔の地図

    かつての伊東合資会社の全景 港に面した場所に広大な敷地を構え、大規模に酒造りが行われいたことが分かります

日本酒の需要減少の影響により一度は廃業を余儀なくされた伊東合資会社ですが、2021年に9代目当主である伊東優氏が清酒製造免許を再取得し復活。現在は伊東株式会社として「敷嶋」の酒造りを行っています。

清酒製造免許の再取得とともに伊東優氏が手がけていたのが、かつて酒造りを行っていた「伊東合資会社本蔵」の再取得。全国的にも稀となってしまった大規模な木造建築物を残していくことは後世に文化を伝える上でも重要と考え、廃業時にいったん手放した旧酒蔵の建物を再購入します。再購入した際には建物はかなり傷んでいたとのことですが、地道な修繕を経て今もなおその雄大さを保っています。

伊東社長: 今回、「伊東合資」という施設を通して昔ながらの鎧壁やなまこ壁など、子どもたちをはじめとした、地域の皆様がその技術に触れ合ってほしいと思っています。その体験ができる場所として認知されることで、その職業を知り、後継者不足に悩む業界に少しでもきっかけができたらなと思っています。

  • 以前の様子と改修後の様子

レストランやカフェビストロ、ショップも入居 複合施設「伊東合資」

主に明治時代に建てられたとされる「伊東合資会社本蔵」を活用した複合施設「伊東合資」。伊東優さんが新たに設立した株式会社亀崎Kamosが施設運営を行います。 

現代建築ではもはや造ることのできない壮大な空間には、レストランやカフェビストロ、ショップが入居。新しく造られた庭と共に、訪れた方の憩いの場として活用されます。

Restaurant gnaw(レストラン)

  • レストランの外観と内観

旧蔵の建物を活用してオープンする「Restaurant gnaw」は「知多半島のリアルな旬」を提供するレストラン。「“食べたい食材や使いたい食材“を買うのではなく“目の前にある収穫出来る食材”だけで作る」をコンセプトとし、多種に渡る皿とそれとペアリングされた飲み物が織りなす空間が特別な時間を演出します。

「Restaurant gnaw」では、旧蔵の外装はそのまま、内装も極力そのままで活用。味覚だけでなく五感で「知多半島」を体験することができます。

伊東社長: 知多半島は非常に食が豊かな地域です。でもそのことを自覚している方は少ないと思います。その「豊かな食」を誇張せず、ありのままに伝えるお店がこのRestaurant gnawです。そして是非味わっていただきたいのがそのペアリング。アルコールのペアリングは勿論ですが、ノンアルコールのペアリングが本当に素敵なので、お酒を飲めない方も是非訪れてみてください。忘れられないひと時になると思います。

Sake Cafe にじみ(カフェビストロ)

  • カフェの完成予想図

かつて日本酒を搾っていた旧槽場に誕生するのが「Sake Cafe にじみ」。飲み物と料理が口の中で混ざり合い味がにじみ合う、そして虹のように波のように様々な味が押し寄せるということから名付けらました。

「Sake Cafe にじみ」は、「ペアリング」をより日常的に体験できるよう設計。Restaurant gnaw監修の料理は、酒蔵ならではのお酒のペアリングはもちろん、ノンアルコールドリンクとの組み合わせも楽しめます。酒蔵ならではのよろいかべに囲まれた中で里山をイメージした木々が揃う「酒蔵の庭」も必見です。

伊東社長: にじみの名前の由来は口の中で味が混ざり合い、食べ物と飲み物が「混ざり合いにじみ合う」ことでそれぞれ味わうよりも虹のように色んな味の波が押し寄せ、もっと美味しくなることをイメージしてつけています。解放感溢れる全面ガラス張りの店内で、目の前に広がる素敵な庭を見ながら美味しい料理と飲み物に舌鼓を打ちにきてください。

蔵のお店 かめくち

  • お店の完成予想図

元々銀行だった旧事務所を活用してオープンするのが「蔵のお店 かめくち」。極力内装を触らず、1910年にロンドンで行われた「日英博覧会」や1915年「サンフランシスコ万博」の賞状をはじめとした、「ありのまま」の明治・大正時代の雰囲気を残した内装が特徴です。

店舗のテーマは「酒蔵がある街でよかった」。お酒や総菜、敷嶋を使ったスイーツの他、醸造で栄えた知多半島の醸造物など、酒蔵から発信される文化や伝統を反映した商品を購入することができます。

伊東社長:  知多半島は海運に恵まれていて、その結果酒蔵が増え、栄えた地域です。旧伊東合資会社もかつては味噌や醤油も手掛けましたが、今も醸造産業が盛んなのはやっぱり酒蔵があったからです。地域の方も、そして他地域から来られた方もそういった歴史的な背景も含め、この知多半島の素敵な食文化を知ってほしい。そのため、敷嶋は勿論、知多半島を中心とした醸造調味料も販売する予定です。酒蔵がある街でよかった。そう思って頂けるような豊かな食をこの店舗を通じて提供できたらと思っています。

半田市・亀崎の新たなランドマークへ

歴史的にも貴重な木造建築物である旧伊東合資会社本蔵を活用してオープンする複合施設「伊東合資」。今後は酒蔵案内ツアーを定期的に開催するなど、文化と歴史を伝える取り組みも準備中とのことです。日本の伝統と現代のライフスタイルが共存する独自の空間が間もなくオープンします。

  • お店の完成予想図

伊東合資」営業情報

運営元          株式会社亀崎kamos

所在地          〒475-0023 愛知県半田市亀崎町9丁目111

営業時間       

Restaurant gnaw 18:30~(予約限定営業)

Sake Cafe にじみ 11:00~21:00

蔵のお店 かめくち 10:00~18:00

定休日          毎週月曜日(Restaurant gnawは日・月定休)

ウェブサイト  http://ito-goshi.com/

関連記事