未経験から酒造りの道へ。東京・京橋で語られた「日本一の酒どころ」兵庫で働くリアル【現場レポート】

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2025年12月19日、東京・京橋にて、日本一の酒どころ・兵庫県への移住と就職をテーマにしたセミナーが開催されました。本イベントの概要は以下の通りです。

「西日本随一の酒どころ・ひょうご五国の酒づくりに迫る(東京)」概要

  • 日時: 2025年12月19日(金)17:30~19:00
  • 場所: ビジョンセンター東京京橋 8階801室(東京都中央区京橋3-7-1)
  • 主催: 兵庫県(運営事務局:株式会社学情)
  • 協力蔵元: 白鶴酒造、キング醸造、田中酒造場
  • 参加者数: 31名(学生6名、既卒・社会人25名)

兵庫県が推進する人材確保の背景

  • 兵庫県地図

兵庫県は「ひょうご五国(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)」から成り、全国の日本酒生産量の約30%を占める国内最大の酒どころです。

現在、兵庫県では首都圏からの人材還流と県内企業の人材確保を目的に、体験型イベントを通じたマッチングを強化して、こうした体験型のイベントを毎年開催しています。

今回は「酒蔵」をテーマに、実際に現場を担う担当者との対話の場が設けられました。

参加3社の歩みと「今」取り組んでいること

当日は、パネルディスカッション形式で各社の歴史、製品の特徴、そして新たな戦略が語られました。

白鶴酒造株式会社(神戸市):伝統の更新と多角化

  • マイクを持って話をする男性

    吉田一真さん(総務人事部 課長)

1743(寛保3)年創業、282年の歴史を持つ、最大規模の国内清酒製造量を誇る。神戸市・西宮市の「灘五郷」に位置し、品質第一を掲げる。日本酒製造販売が9割を占めるが、梅酒、みりん、輸入ワイン、化粧品販売など多角的な経営も特徴。
近年は、酒米の自社栽培にドローンを活用したスマート農業の導入や、新設したマイクロブルワリー「HAKUTSURU SAKE CRAFT」において、ハーブやワイン用ブドウを使用した従来の日本酒の定義に縛られない酒造りにも挑戦しています。

キング醸造株式会社(播磨・稲美町):醸造技術の多角的展開

  • ハッピ姿の男性2人

    隅田聖さん(総務人事部 総務課マネージャー)、吉田全慶さん(第二製造部 新在家工場リーダー)

創業125(126)年。長年「日の出みりん」を主力とする食品メーカーとして歩んできたが、清酒製造も30年以上の実績を持つ。
日本酒はこの10年で輸出数量は2倍、輸出金額は4倍に伸長しています。キング醸造株式会社でも地元の名を冠した日本酒ブランド「稲美」のリブランディングに注力。海外展開にも力を入れており、世界8つの国・地域へ販路を広げ、グローバル市場での需要に対応しています。

株式会社田中酒造場(姫路市):伝統技法の継承とIT管理

  • オンライン会議の男性

    田中智久さん(専務/オンライン参加)

  • オンライン会議の男性

1835(天保6)年創業。石の重みを利用して酒を搾る伝統技法「はねぎ搾り」を現在も現役で守り続けている。
その一方で、醸造現場ではAIやITを活用した温度管理を導入。伝統的な道具が生み出す「柔らかく優しい味わい」を追求しつつ、フランスのトップソムリエとの研修を通じた交流やヨーロッパ市場への進出など、小規模蔵ながら国際的な評価を高める活動を続けています。

採用担当者が語る「現場」と求める人物像

  • セミナールーム

転職や就職を検討する参加者が最も注視していたのは、現場の労働環境と採用基準です。

各社の担当者からは、「お酒への興味や意欲があれば、経験や特別な資格は問わない」という方針が示されました。

実際の業務は、酒造りそのものに加え、事務、出荷、瓶詰めなどの製品管理~配達まで多岐にわたります。

  • 酒造りのタンク

筆者の蔵人としての経験から補足すると・・・

酒蔵の仕事は製造業としての側面が強く、特に繁忙期の12月は酵母などの微生物を毎日管理するため、交代制のシフト勤務が発生します。酒蔵によっては夜の当番があるところも。これはどんな業種でも同じですが、大規模な組織や伝統的な職人のいる現場ほど、前職の慣習にとらわれず、独自のやり方を尊重し、真面目にルーティン作業をこなせる人材が求められます。

特別な「聖域」としてではなく、あなたの毎日の職場になる場所です。真摯にものづくりに向き合う「いち会社員」としての姿勢も重要です。

参加者の声:現場の言葉をどう受け止めたか

  • イラスト

当日、会場で話を聞いた5名の参加者の意見を紹介します。 

【女性・20代(学生)】

  • 学生のイラスト

「友人に誘われて参加しました。元々日本酒は好きでしたが、兵庫県の就職支援制度については全く知りませんでした。今日の話を聞いて、支援を受けながら業界に入るという選択肢もアリかなと思いました」

【男性・50代(社会人)】

  • サラリーマンのイラスト

「転職を考えて参加しました。グループワークでもっと突っ込んだ個別の話がしたかったという物足りなさはありますが、兵庫県が日本酒の最大産地である理由や、各社の違いは分かりました。週末などを利用した体験制度には興味があります」

【女性・30代(社会人)】

  • サラリーマンのイラスト

「現在、全く別の業界で働いていますが、日本酒業界には以前から興味がありました。未経験だと無理だと思い込んでいましたが、門戸が開かれていることを知って、一度挑戦してみようかという気持ちになりました」

【男性・30代(社会人)】

  • サラリーマンのイラスト

「親戚が兵庫にいる縁もあり、地方就職を検討しています。ガテン系の仕事やドライバー経験があるので、力仕事には自信があります。未経験でもやる気があれば飛び込める環境があるというのは、非常に魅力的だと感じました」

【男性・40代(社会人)】

  • サラリーマンのイラスト

「兵庫の日本酒がこれほど盛んだとは知らずに関心を持ちました。まだ具体的に働く覚悟までは見えませんが、海外に打って出る蔵元のエネルギーを感じました。日本の文化を絶やさないために、微力ながら貢献できる道があるのか考えてみたいです」

兵庫県によるインターンシップ支援制度

イベントの主催側から、首都圏から兵庫県内企業への訪問を促す支援制度を紹介されました。

  • セミナーの投影資料

【ひょうごで働こう!社会人インターンシップ】

  • 対象: 既卒者および2026年3月卒業予定者
  • 補助: 首都圏から参加する場合、往復旅費(1回上限20,000円)や宿泊費(1泊上限4,000円)の補助(※金額上限等の条件あり)。
  • 期間: 最短1日・2時間から参加可能

「まずは短時間の見学からでも、現場の空気を感じてほしい」という設計になっており、実際に現地を訪れる際の経済的なハードルを下げる取り組みとなっています。

醸造の現場を自身の目で確かめるために

  • セミナーで説明する男性

    パネルディスカッション後、参加者は3つのグループに分かれ、蔵元を囲んでお酒を酌み交わしながら語り合う「ローテーション・セッション」へ。蔵のお酒を飲みながら、すべての蔵と直接対話できる時間がとられた。

今回のイベントは、兵庫県の酒蔵が伝統の継承者であると同時に、広く人材を求める「製造業の企業」であることを提示する場となりました。

酒造りは体力仕事や変則的な勤務といった厳しい側面も事実として存在します。しかし、自らの手で製品を醸すという手応えは、他では得がたい経験です。 

もし興味を持たれたなら、まずは県が提供するインターンシップ制度を活用し、自分自身の適性を確かめるために一度現地を訪れるのが、最も確かな判断材料となるはずです。

【公式サイト・お問い合わせ】

【参加蔵元 公式URL】

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