世界最大級の日本酒コンペティション「SAKE COMPETITION」が4年ぶりに開催!本当においしい市販酒を決める決審会場に潜入しました!

  • 日本酒を審査する審査員

今年で9回目となる世界最大級の日本酒コンペティション『SAKE COMPETITION(サケコンペティション)』。2023年の結果を決める決審が、5月10日、11日にザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)で実施されました。

2019年以来4年ぶりの開催となる今回は、部門を減らし、出品数も前回の1919点から減らし総出品酒1,000点とし、5月10日に「純米吟醸部門」343点と「SUPER PREMIUM部門」51点、5月11日に「純米部門」273点と「純米大吟醸部門」333点の審査がおこなわれました。初日の審査会場に行き、審査員の方々の話をうかがいました。

 

SAKE COMPETITION(サケコンペティション)とは?

  • 銘柄などがわからないよう目隠しされた日本酒の瓶

「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるよう、新しい基準を示したい」という理念のもとに、2012年から始まったSAKE COMPETITION(サケコンペティション)。そのため、審査対象は市販日本酒のみ。審査方法は、銘柄を完全に隠し、日本酒の品質のみで競うことが徹底されています。ブランドや銘柄に左右されることなく、どんなブランドでも1位をとるチャンスがある品評会です。たとえまだ無名の銘柄であっても受賞すれば、酒販店から取引依頼が殺到し、一般消費者からのニーズが高まり一躍人気酒となり、飛躍するチャンスをつかむことができるのです。

審査員も審査される唯一のコンペティション

  • 厳格な雰囲気で審査が行われている様子

それだけ影響力が大きい理由は、審査員も審査される厳密な体制にもあります。審査員は予審を勝ち進み決審へと進んだ酒に関しては、二度目の審査となります。そこで予審で「1」とつけた酒に決審で「2」をつけるなど、同じ酒への評価が異なると審査員本人が減点対象に。官能評価にブレがあり信頼性に欠ける人は、翌年以降審査員から外される、というほど厳しいものです。そのためSAKE COMPETITIONの結果はあらゆる事情に左右されず、純粋に酒質の良し悪しを判断した、非常に信頼性の高いものといえます。

審査員からのコメント

予審、そして「純米吟醸部門」「SUPER PREMIUM部門」の決審を終えたばかりの審査員のうち3名の方から話をうかがいました。

株式会社はせがわ酒店 代表取締役  長谷川 浩一さん

  • お話をする長谷川さん

    株式会社はせがわ酒店 長谷川 浩一さん ※2019年開催時に撮影

――まずは4年ぶりの開催、おめでとうございます。今のお気持ちと次回開催への展望は?

長谷川さん : この4年間、開催できず胸にぽっかり穴が開いた想いでした。再開となる今回は規模を縮小したが、来年は部門も増やし、拡大して実施したいと思っています。 

――予審、そして決審1日目が終了しました。現在の感触はいかがですか?

長谷川さん : 前身となる審査会をあわせると、かれこれ30年以上このようなコンペティションを続けています。以前までは“どうしたらこんな酒ができちゃうんだよ”っていう出品酒も多かったですが、今回はそういった酒がほぼ無く、全体のレベルが格段に上がっています。あらゆる情報が広がり、技術力が低い酒蔵でも70点くらいの酒はできるような世の中になりました。だからこそこの決審をくぐり抜けるのは、より狭き門を通ったトップ中のトップの酒ということです。 

――市販酒であることにこのコンペティションの意義がありますね。

長谷川さん : 入賞した酒蔵は、全国の酒屋さんから電話が鳴りやまないそうです。はせがわ酒店で独占するものでなく、色んな縁が繋がることが私たちの狙いです。予期せぬところから上位入賞酒が出てくるところに、面白みがありますね。

広島県立総合技術研究所食品工業技術センター 次長  大土井 律之さん

  • お話をする大土井さん

    広島県立総合技術研究所食品工業技術センター 大土井 律之さん ※2019年開催時に撮影

――4年ぶりの開催決定。主催者からの連絡を受けた時のお気持ちは?

大土井さん : 嬉しかったです。コロナ禍で酒蔵や県などがPRする場はマスコミが出す紙面などに限られて、一般消費者に対して直接PRする機会が減ってしまいました。そういう意味でもサケコンペティションの再開を、心待ちにしていました。 

――審査をしてみて、感触や傾向などはありますか?

大土井さん : バラエティに富んでいます。ただし酒質の幅はあるけれど、全体的に上質な酒が増えているっていうのは私だけでなく、みんな一致の意見。差をつけ、審査するのが非常に困難なくらいです。 

――市販酒のコンペティションのため一般消費者からの注目も高いと思います。他の審査会と違い、『飲用酒適性』と審査基準があります。気を付けている点は?

大土井さん : オフフレーバーがないのは当然のこととして、口に含んだ時の(味わいの)ふくらみとインパクト、余韻の強さは見ています。柔らかくて甘い酒もいいが、料理と合わせる時に必ずしも適している訳ではありません。少し酸味があって、料理の強い味をぱっと切るのも飲用特製のひとつ。味わいに奥行きがあって、上質なものを選んでいます。

株式会社新澤醸造店 代表取締役  新澤 巖夫さん

  • お話をする大土井さん

    株式会社新澤醸造店 新澤 巖夫さん ※2019年開催時に撮影

――4年ぶりの開催決定。緊張感のある現場ですね。

新澤さん : あらためて身が引き締まる思いでした。審査員が審査されるコンペティションは他にありません。だからこそ審査には信頼があり、出品する酒蔵も精鋭が揃います。あの「十四代」が唯一出品するコンペティションでもあります。 

――今回の出品酒は、1,000本のみ。審査も2日間にも分かれています。審査するうえで前回との変化はありますか?

新澤さん : ホテルでの開催となり、空調が格段に整っています。2019年は(会場内が暑くて)味垂れする酒も多かった。前回を考慮して、今回は味わいのピークより先に出品してきただろう酒の中には、火冷香(ひざめか)が出てしまっているものも。だから先読みするベテラン勢より、経験が浅くて技術力のある若手の酒蔵が勝ち進む、というサプライズもあるのかもしれません。 

――審査の際に気を付けているポイントは?

新澤さん : コロナ禍の3年間、多くの酒蔵が技術の向上よりマーケティングにウエイトを置きました。中には本来ネガティブな味わいの酒を、「個性」「多様性」として売り出してしまったものも。「飲用性がある」ということを誤魔化しに使ってはならない。決審に入らなかった酒の中にも人気銘柄が多々あると思いますが、酒質が悪いものは見逃さない。プロが見た「多様性」というものを伝えられるようにしたいと思っています。 

――予審、決審と審査をしてみて、今の感触は?

新澤さん:予審の酒については幅が広く、美味しい酒も増えています。一方で、マニュアル外の酒や欠点をそのまま出してくる蔵もありました。決審に進んだものは、どのジャンルも良い酒が集まっています。精鋭が集まった、という印象。どれも個人的にお金出して買ってもいい、と思えるものでした。

決審の全審査員は、以下の通りです。

SAKE COMPETITION 2023 審査員  下記10名

・広島県立総合技術研究所食品工業技術センター 次長    大土井 律之さん

・高知県酒造組合技術顧問  上東 治彦さん

・株式会社新澤醸造店 代表取締役  新澤 巖夫さん

・来福酒造株式会社 代表取締役  藤村 俊文さん

・株式会社はせがわ酒店 代表取締役  長谷川 浩一さん

・磯自慢酒造株式会社 製造部頭  山田 英彦さん

・月桂冠株式会社 醸造部グループリーダー  高垣 幸男さん

・京都電子工業株式会社  勝木 慶一郎さん

・司牡丹酒造株式会社 杜氏  浅野 徹さん

・株式会社みいの寿 代表取締役社長 井上 宰継さん

本当においしい市販酒が決まる6月14日に期待!

  • 審査会場の入り口の表示

鑑評会向けにつくられた酒ではなく、私たちが購入することができる市販日本酒の良し悪しを競う「SAKE COMPETITION」。本審査会を通して、無名の酒蔵が一気にブレイクして人気酒のひとつに仲間入りした実績がいくつもあります。多くの酒の酒質が全体的に向上するなかで、プロの厳しい目でジャッジされたより狭き門をくぐり抜ける、本当においしい酒はどれなのか?今回受賞した銘柄にも注目が集まることは間違いありません。

2023年はいったい何が一位に輝くのか。6月14日の表彰式が待ち遠しいです。当日の現場の様子もお届けしようと思います。ご期待ください!

SAKE COMPETITION 2023開催概要

予審会:2023年5月9日

決審会:2023年5月10日・11日

結果発表および表彰式:2023年6月14日

主催:SAKE COMPETITION実行委員会

運営:株式会社サニーサイドアップ.、株式会社はせがわ酒店

協力:JA全農兵庫、JA全農おかやま、新中野工業株式会社、JAPAN CRAFT SAKE COMPANY CO.,LTD

後援:国税庁、内閣府

メディアパートナー:株式会社BSーTBS

2019年 一位に輝いた銘柄

  • 表彰式で表彰者がずらりと並ぶ

    2019年の表彰式の様子

「SAKE COMPETITION2019」で、1位に輝いた銘柄は以下の通りです。

純米酒部門

宝剣酒造株式会社「宝剣 純米酒 レトロラベル」

純米吟醸部門

合資会社廣木酒造本店「飛露喜 純米吟醸」

純米大吟醸部門

清水清三郎商店株式会社「作 朝日米」

吟醸部門

株式会社中勇酒造店「天上夢幻 大吟醸 山田錦」

SUPER PREMIUM部門

高木酒造株式会社「十四代 龍泉」

スパークリング部門

秋田清酒株式会社「出羽鶴 awa酒 明日へ」

海外出品酒部門

Sequoia Sake Company「Coastal Ginjo」

6月14日の表彰式で発表予定の審査部門一覧

・「純米酒部門」

特定名称「純米酒」表示がされている清酒。また「特別純米酒」や「山廃純米酒」、「生もと純米酒」も出品可能。 

・「純米吟醸部門」

特定名称「純米吟醸」表示がされている清酒。また「山廃純米吟醸」や「生もと純米吟醸」また「吟醸純米」など「純米吟醸酒」と判断できる表示でも出品は可能。 

・「純米大吟醸部門」

特定名称「純米大吟醸」表示がされている清酒。また「山廃純米大吟醸」や「生もと純米大吟醸」また「大吟醸純米」など「純米大吟醸酒」と判断できる表示でも出品は可能。

・「SUPER PREMIUM部門」

特定名称酒に限らず720mlで小売価格が10,000円(外税)以上、1800mlで15,000円(外税)以上の清酒。 

<特別賞>

・日本酒ソムリエアプリSakenomyが選ぶ 「Sakenomy Best Brewery of the Year」

・次世代の日本酒の造り手を応援する 「ダイナースクラブ若手奨励賞」

・JAL機内酒として提供される 「JAL空飛ぶSAKE賞」

評価基準と審査方法について

  • 審査表のシート

審査員は、米からできたお酒らしい香りや味わいから逸脱していないかを問う「清酒としての品格」、飲んで楽しむお酒として優れているかを問う「飲用酒としての適性」の2点を基準として総合的に評価します。各部門の上位10 点は GOLD 。GOLD 以下の部門上位 10%には SILVER が授与されます 

現在、予審から決審に進んだお酒がオフィシャルサイト上で公開されています。

「純米酒部門」・・・出品数273点のうち、決審に進んだ出品酒138点

「純米吟醸部門」・・・出品数343点のうち、決審に進んだ出品酒175点

「純米大吟醸部門」・・・出品数333点のうち、決審に進んだ出品酒171点

<審査方法>

審査は完全ブラインド、並び順もパソコンでシャッフルという厳正な環境下、きき猪口に注いで5点法で審査。 

[5点法による審査基準の詳細]

1 香味の調和や特徴が清酒の品格及び飲用特性から特に良好である

2 良好である

3 普通(平均的)である

4 1,2,3以外のものでやや難があるもの

5 1,2,3以外のもので難があるもの 

[※※上記審査用語の解説]

「香味」とは、上立香及び香、味、後味を指すものとする

「香味の調和」とは、上立香及び香、味、後味の個別の調和と全体の調和を指す

「香味の特徴」とは、原料米品種、酵母の種類や製造に由来する個性的な香味ではあるが、難点でないものを指す(濃醇な味や爽やかな酸味、メロン、グリーンアップル様の香りなど)「特徴」は、清酒の多様化及び新たな醸造技術の萌芽と育成を促すため取り入れる

「清酒の品格」とは、清酒が備えるべき優れた品質要件を指す(香りの上品さや優雅さ、味のふくらみ、なめらかさ、後味など)

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