日本一の酒どころに日本酒ファンが大集結! 新潟県酒造組合主催「2025にいがた酒の陣」現地レポート

  • イベント名が入ったお猪口

2025にいがた酒の陣」は、新潟県酒造組合が主催する新潟の日本酒最大級の祭典です。2025年は3月8日(土)と9日(日)の2日間にわたり、新潟市の「朱鷺(とき)メッセ」で開催され、県内の80の酒蔵が参加。例年発売日即日完売と言われるこのイベントのプラチナチケットを手に、全国から日本酒ファンが現地を訪れました。都道府県別では日本一の酒蔵の数だけに、現在では「淡麗辛口」のイメージに留まらない新潟のお酒の多様な味わいを一堂に楽しむことができる「にいがた酒の陣」をレポートします。

  • イベントの入場列

いざ、「にいがた酒の陣」に出陣します

新潟県は日本海沿岸のほぼ真ん中に位置し、1,500m から 2,000m 級の山々に囲まれ、面積は 12,584.10k㎡(内、佐渡島 855.61k㎡)で、北海道、岩手県、福島県、長野県に次いで全国第 5 位の広さをもつ、南北に長い県。「にいがた酒の陣」の会場では上越+佐渡、中越、下越の3つエリアごとに区分けし、来場者が回遊するための目安となるよう各酒蔵のブースが配置されています。

  • イベント会場のマップ

入口で配られるマップを手に酒蔵の配置を確認して、さぁ会場へ向かいましょう。

  • イベント会場の俯瞰

「朱鷺(とき)メッセ」は産業見本市や大規模コンサートが開催できる施設だけに、広々とした立派な会場にビックリです。

  • 日本酒の試飲をする大勢の来場者

試飲が始まった各ブースでは、どこも来場者の熱気がすごい。人の数には圧倒されましたが、ブースの間は間隔が十分とられているので、混みあって会場内の移動ができなくなるような問題はありませんでした。

にいがた酒の陣で出会った活気ある酒蔵

玉川酒造/魚沼市(エリア:中越)

  • 日本酒をもって笑顔を見せる男性

    川酒造 杜氏 山本剛さん

新潟県内でも雪深い魚沼市の玉川酒造。2020年に雪中貯蔵庫で熟成させた大吟醸原酒「越後ゆきくら」が関東信越国税局酒類鑑評会で最優秀賞、2017年は爽やかな酸味が特徴の「イットキー 純米吟醸」が「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017 メイン部門 最高金賞受賞」を受賞するなど、代表銘柄「玉風味」をはじめ様々な味わいを日本酒ファンに提供しています。この日は山本杜氏から勧められ、まろやかな味わいの「酒の陣限定・雪中貯蔵純米大吟醸目黒五郎助」と、火入れのものより更にスッキリとしたこの時期だけの発売「イットキー 純米吟醸生酒」を堪能できました。

塩川酒造/新潟市(エリア:下越)

  • 日本酒の瓶を手に持つ男性

    塩川酒造 代表取締役 塩川和弘さん

塩川酒造は、新潟市の内野町に位置する酒蔵で、代表銘柄「越の関」や山廃仕込みの「願人(ねがいびと)」で知られています。今回の酒の陣には肉料理に合うお酒として開発された輸出商品の「Cowboy Yamahai」や、白ワインにも引けを取らない風味と深いコクを目指した「Fisherman Sokujo」も並び、味わいの新鮮さに多くの来場者が足を止め試飲を楽しんでいました。蔵人との会話で「暑い夏にはライムロックがおすすめ」と「Cowboy Yamahai」の新しい飲み方を教えてもらい、酒の陣ならではの交流で貴重な知識を得ることができました。

尾畑酒造/佐渡市(エリア:佐渡)

  • 日本酒の瓶を手に持つ女性

    尾畑酒造 専務取締役 尾畑留美子さん

佐渡の尾畑酒造は、米、水、人、佐渡の風土という四つの宝を調和させて酒を醸す四宝和醸(しほうわじょう)という理念を掲げ酒造りを行っています。酒造りに島内の棚田米の使用や再生エネルギーの活用、廃校となる旧西三川小学校の校舎を「学校蔵」という施設として酒造りのプロセスを学びながら実際に体験できるプログラムなど、地域を巻き込んだ幅広い活動が話題となっています。2024年12月に日本の伝統的な酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録され、7月に佐渡金山が世界文化遺産に登録されていたことの影響から多くの海外の来場者がブースを囲む様子が見られ、関心の高さがうかがえました。

朝日酒造/長岡市(エリア:中越)

  • 日本酒を手に持つ男性

    朝日酒造 常務取締役 牧野恭さん

1970年代の石本酒造「越乃寒梅」に始まる地酒ブームに次いで1990年代の「淡麗辛口」ブームを「八海山」(八海醸造)「〆針鶴」(宮尾酒造)とともにけん引した「久保田」の朝日酒造(長岡市)。来場者の長蛇の列が予想されるためか、会場奥の広いスペースにブースが配置され「最後尾はこちら」のプラカードを持つ係もいるなど今も根強い人気を誇ります。お酒の製造販売だけでなく、2000年から続く体験学習型の「あさひ日本酒塾」や「SanDoコンサート」など各種イベントでファンの裾野を広げる努力が、海外からも含め多くのファンをブースに迎える結果に表れていると感じました。

麒麟山酒造/阿賀町(エリア:下越)

  • 日本酒を手に持ち笑顔の女性

    麒麟山酒造 営業部 皆川翔子さん

新潟市から阿賀野川沿いに遡った福島県との県境・阿賀町にある1843年(天保14年)創業の麒麟山酒造。淡麗辛口の酒蔵を自負し、酒米は100%蔵の半径10キロ内のエリア(阿賀町内)でまかない、酒蔵周辺の環境に配慮し植林と山づくり活動を行うなどテロワールを強く意識した酒造りを実践しています。会場では酒の陣2025限定酒も振舞われ筆者も試飲。その魅力的な味わいに心惹かれました。が、やはり最後は定番の「麒麟山 伝統辛口」に行きつき「やっぱり美味しい」と、ほっとした気持ちになりました。

DHC酒造/新潟市(エリア:下越)

  • 日本酒を手に持つ男性

    DHC酒造 営業部 渡部翔平さん

化粧品・健康食品のDHCグループの一員である新潟市北区のDHC酒造は、もとは小黒酒造として1908年(明治41年)創業の歴史ある酒蔵。代表銘柄は「越乃梅里」。地元の契約農家と協力して「五百万石」や「越淡麗」といった酒米を栽培し、製造工程は機械化と手作業のバランスを取りながら丁寧な造りを大切にしています。この日は酒の陣限定醸造の「越乃梅里 限定無濾過生」の他、人気の「嘉山」も200本限定の「しぼりたて無濾過生原酒」が提供され、次々と来場者の差し出すぐい吞みに注がれていくことに。私も思わずおかわりしたうちの一人です。

加賀の井酒造/糸魚川市(エリア:上越)

  • 日本酒を手に持つ男性

    加賀の井酒造 蔵元 小林大祐さん

糸魚川市の加賀の井酒造は1650年(慶安3年)創業。2016年12月糸魚川市大規模火災の延焼により酒蔵を焼失するも2018年には見事再建。新蔵では仕込み蔵、米蔵、窯場などが一つの建物に集約され、効率的な酒造りが可能となったそうです。筆者は、今年1月に初めて「加賀の井」を飲んだ時、新潟の淡麗辛口のイメージとは違う、中硬水の仕込み水で生まれるバランスのとれたふくよかな味わいに驚きを感じました。今回は試飲でおすすめされた限定醸造「純米大吟醸生原酒SHIRAFUJI」が美味しかったこと! 「白藤」は、加賀の井だけが使っている新潟県内で作られている唯一のお米。新たな味を求める今後の酒造りにも注目していきたいと思います。

イベントとしての「にいがた酒の陣」の特徴とは

試飲だけではない、飲んで食べるおたのしみ

「にいがた酒の陣」はその規模だけでなく、イベントとして来場者を楽しませる工夫が凝らされていました。 

・立ち席、着席ともに来場者用のテーブルの数が多く間隔が広くて楽。
・会場外にもイベント用屋外トイレが設置され、混雑緩和が図られている。
・酒蔵とは別に飲食物販ブース有り。おつまみを購入しお酒といっしょに楽しめる。
・会場内に駅弁売りのスタイルで売り子さんがおつまみ類を売りに来てくれ便利。
・宅配便受付があり、購入したお酒や手荷物を会場から送ることが可能。

  • テーブルの周りでお酒の試飲をする人たち

大きな会場なので、「座席なしBチケット(3500枚)」向けに用意された休憩用のテーブルが多数配置され、その間隔にも余裕があります。

  • テーブルに座ってお酒の試飲をする人たち

「座席なしBチケット」とは別に「指定座席Aチケット(1000枚)」があり、ゆっくり座ってお酒を楽しむこともできます。

  • フードを販売するテント

会場外の連絡通路には飲食・物販ブースが並び、試飲と並行しておつまみや限定グッズなど好みのものを買い求めることも可能です。

  • 会場内でフードを売り歩く女性

また、会場内でも昔の駅弁を売るようなスタイルで、おつまみなどを売りに来てくれるサービスがあるのはとても便利でした。

  • 宅配便の受付をする人々

宅配便受付もあり、手荷物やお土産をなるべく持たず身軽に帰ることができます。多くの来場者が利用していました。

来る側も、もてなす側もツボにハマった振る舞いが楽しい

会場内では、多くの来場者が記念グッズで「新潟日本酒愛」を表現していたり、酒蔵の方が着ぐるみで来場者を盛り上げてくれたりするだけでなく、新潟選出のMiss SAKEのみなさんもステージに登壇したり、お酒を注いで回ったりと、ソフト面での華やかさ、にぎやかさの要素がとても多いイベントだと感じました。

  • 背中に酒蔵のロゴがあしらわれたTシャツを着た女性

  • 背中に酒蔵のロゴがあしらわれたTシャツを着た男性

    背中に参加酒蔵のロゴがびっしりあしらわれた記念Tシャツ

  • お酒の缶の形をした着ぐるみを着た男性

    菊水ふなぐちの酒蔵のみなさんは着ぐるみを

  • 日本酒の飾り樽の後ろに並んだ振袖姿の女性3人

  • 日本酒を注いで回る振袖姿の女性

    イベントを盛り上げるMissSAKEのみなさん

いろいろなスタイルで日本酒が楽しめるのもうれしい

お酒はいずれのブースも四合瓶、一升瓶のものから注がれますが、中には、樽酒、ハイボール、燗酒もあったりと、いろいろなスタイルで提供される日本酒を楽しむことができました。

  • 柄杓でお猪口にお酒を注ぐ男性

    樽酒をいただく

  • 日本酒を炭酸割りするコーナー

    日本酒ハイボール

  • チロリからお猪口にお酒を注ぐ女性

    燗酒を提供する酒蔵も

未知の日本酒と出会うチャンス! 来年は「にいがた酒の陣」に参戦してみては?

「にいがた酒の陣2025」のレポート、いかがでしたか? 日本酒関係者は「水が同じでも蔵が違えば味は違う」と話してくれたことがありました。80もの酒蔵が参加すれば味わいも80通り。造りを変えれば同じ蔵のお酒でも味の違いは更に広がります。配られたぐい呑みに1回15ml注がれたとしても、80を掛けると1200ml。優に四合瓶(720ml)1本以上を飲む計算。全蔵回ると結構な酒量となりますね。

私にとって初めての「にいがた酒の陣」でしたが、複数回は来ているであろう強者と思しき来場者を見ていると、次のような特徴が見てとれました。 

・酒蔵を絞る、同じエリア(同じ市内)の蔵を回る。
・多くの蔵が出品する「酒の陣限定醸造」だけを選んで試飲する。
・四合瓶を購入し、休憩用テーブルで知人とシェア。
・毎年この会場でしか会わない顔見知りと会話を楽しみ情報交換する。
・試飲より購入を優先し宅配便で自宅へ送った後に試飲を始める。 

なるほど、人によって様々な楽しみ方がありますね。しかし初心者なればこそ、未知の味と出会うチャンスが80以上あり、十分に楽しむことができたのが、「にいがた酒の陣」。皆さんも来年は新潟のお酒を楽しみに、春の「朱鷺(とき)メッセ」へ参陣することを計画してみてはいかがでしょうか。

「にいがた酒の陣2025」開催概要

開催日時 :  2025年 3月 8日(土)・9日(日)※両日とも人数制限のうえ、1日2回・3時間の入替え制。                
1回目(午前の部) 10:00~13:00  10:30試飲開始

2回目(午後の部) 14:30~17:30  15:00試飲開始
会場 :  「朱鷺メッセ」 ウェーブマーケット(新潟県新潟市万代島6-1)※新潟駅より路線バス約15分、タクシー約5分
料金 :  Aチケット(指定座席あり)5,000円(税込) 各回1,000枚/Bチケット(座席なし)3,500円(税込) 各回3,500枚 ※各回先着となります。
ホームページ: https://www.niigata-sake.or.jp/sakenojin/

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