日本酒との新たな出会い方 「本に出てきた日本酒を飲む!」 ~アナウンサー長江麻美の日本酒日記#36

新たな日本酒の出会い方を発見しました!

みなさんはどうやって日本酒に出会っていますか? 私は基本的に誰かにオススメしてもらって知って好きになるというパターンなのですが、最近新しい日本酒との出会い方を発見しました。

「本に出てきた日本酒を飲んでみる」

これです。なんだか、洒落ていません?

 実は私、ポッドキャストで「ながエフエム~声の本屋~」という、本を紹介するコンテンツを担当しているのですが、その中で読書インフルエンサーの「ふうね」さんが紹介してくれた小説の中に日本酒が出てきまして…指が勝手にポチっていました。

紹介してもらった本というのは日本酒BAR「四季」春夏冬中さくら薫る折々の酒」(つるみ 犬丸著/メディアワークス文庫)。

酒蔵の実家を家出して「日本酒BAR四季」のバーテンダーになった北条冴蔵と店長の赤橋楓が、「四季」を訪れるお客さんにピッタリな日本酒とそれにマリアージュする料理を提供します。日本酒で人々の人生を良い方向に導いていくお話。店長の赤橋楓さんも3年前に夫を亡くし立ち直れないでいたのですが、ある日本酒がきっかけで心が解けることに…。私は涙なしでは読めませんでした。 

この本に出てくる日本酒はどれも実在しているので、いつか全て飲んでみたいのですが、赤橋楓さんの心を解いた日本酒は今の私には手が届かない銘柄だったので、今回は「四季」を訪れたお客さんに北条が出した日本酒を取り寄せてみました。

【今回の一杯】 純米吟醸 十旭日(じゅうじあさひ)にごり火入れ(旭日酒造/島根県)

島根県のお酒「十旭日」の純米吟醸酒。温めることで味わいが増す燗上がりのお酒です。

  • 日本酒の瓶

    純米吟醸 十旭日にごり火入れ

本の中で、北条は「自分を変えたくない」と言って社会人になりきれない若者にこのお酒を出してこう伝えるのです。

「酒だって美味しいと言って飲まれる方が、きっと嬉しいでしょう。そのために温まったり、にごったり。人の好みを無視していつも常温や冷やじゃ、飲む人の期待を裏切っちゃう」

この日本酒から若者は、自分自身が温まって変わる工夫をすることの大切さを学ぶのです。く~~~~沁みるぜ。燗上がりのお酒ということで、私もしっかり飲み比べました。まずは冷から。

  • お猪口を両手にもつ女性

    「十旭日」を冷でいただいております

(おお…梨のような香りと米の旨味がじんわり広がってくるぞ…。ん? でもスッキリだな。鼻に抜ける香りが強くて、うん、美味しい。)

そして、燗も。

  • 両手にお猪口を持つ女性

    「十旭日」を燗にしていただいております

(おっと?燗にすると鼻に抜ける香りはまろやかになるのか…。ただ、喉を通った瞬間から米の旨味がガツンと来るじゃないか! おおお~広がりもすごいぞ。確かにこれは燗上がりだ…)

どちらも間違いなく美味しかったのですが、確かに燗にした方が奥行きや深みが増し、ものすごい広がりを感じました。 

日本酒好きの皆さんには是非、この本を読んで『聖酒巡呑』していただきたいと思います。

  • お猪口を手に持つ女性

※聖酒巡呑(セイシュジュンドン)…長江が勝手に考えた言葉。本に書かれていた酒を、聖酒として呑むこと。