日本酒のおいしい飲み方、アレンジ方法を知れば家飲みがもっと楽しくなる!唎酒師ライターがとっておきの方法をご紹介!

日本酒はそのまま飲むのはもちろん、温度を変えたり、割り方を工夫したりすると美味しさがさらに広がります。
「自由に楽しんで!」と言われても、せっかく購入した日本酒を無駄にしたくない、と思うのが人情。できるだけ失敗したくないですよね。

そこで今回は、年間360日にわたり日本酒を飲み、かつて日本酒BARで女将を務めた経験もある唎酒師&日本酒ライターの関友美が、日本酒初心者~玄人にまで教えたい!オススメの飲み方とポイントをご紹介します。

日本酒のおいしい飲み方

熱燗にして飲む

  • 熱燗をつけるためのちろり

代表的な日本酒の飲み方「熱燗」「お燗」

加熱して30度以上にしたお酒そのもの、または加熱する作業を「熱燗」と呼びます。
あたためると甘さや旨味が広がって、ふくよかさを感じやすくなります。
温度が1℃違うだけで、口当たりや香りの立ち方が異なるため、温度はとても重要。

そのことを証明するように、昔から5℃刻みで呼び名がつけられています。

  • 日本酒の温度による呼称の違い

熱燗の方法は、「湯煎」が一般的です。
専門の飲食店だと、「かんすけ」など卓上酒燗器を備えている場合が多いですが、高価なため家庭では鍋に湯を張り、徳利やちろりを入れて湯煎し、燗をつけるのがオススメです。
手軽に電子レンジ燗をしたい、という方には、「黒松剣菱180ml瓶」がオススメ。
日本酒の大敵・UVカットで、電子レンジを使用しても全体が対流し熱ムラのない熱燗ができるので、1つ購入して、中身を飲んだら洗って繰り返し使うと良いでしょう。
アルコールの沸点は78度なので、美味しい温度は大体60℃くらいまで。温度の上げ過ぎには注意してください。

【熱燗】にオススメの銘柄

  • 神亀(しんかめ)(神亀酒造)
  • 天穏(板倉酒造)
  • 龍勢(藤井酒造)
  • 剣菱(剣菱酒造)
  • 天狗舞 山廃仕込純米酒(車多酒造)
  • 秋鹿(秋鹿酒造)
  • 十旭日(旭日酒造

出汁割りにして飲む

  • 出し割りにしたカップ酒

「熱燗」の進化系として、お出汁と熱燗を割る「出汁割り」があります。
おでん出汁、お吸い物、鍋、あら汁、そばつゆなどと割って、じっくり楽しみます。
割り方の目安は「出汁3:日本酒1」くらい。
日本酒には甘味、酸味、苦味、そして大変多くの旨味成分が含まれているといわれていますが、塩味は含まれていません。そこで出汁を入れることで、うま味をさらに増し、塩味を加え、人間が「おいしい」と感じる五味のバランス(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を完成させることができる、大変理にかなった飲み方なのです。
七味や柚子胡椒を添えてもおいしいです。

【出汁割り】にオススメの銘柄

  • 丸眞正宗 Maru CUP(小山本家酒造)
  • 白鶴 まる(白鶴酒造)
  • 菊正宗 純米樽酒(菊正宗酒造)
  • 特別本醸造 八海山(八海醸造)

氷を入れてロックで飲む

  • 日本酒のロック

アルコール度数が高いお酒、味わいの濃いお酒はロックで飲んでもおいしいです。
特に夏に飲む「日本酒ロック」は実に爽快!
濃い目の「にごり酒」や「どぶろく」も、ロックにはオススメです。

氷が少しずつ溶け、日本酒と馴染み、味わいが変わっていくのをお楽しみください。

【日本酒ロック】にオススメの銘柄

  • 玉川 純米吟醸 Ice Breaker(木下酒造)
  • ロック酒 by Jozen 純米(白瀧酒造)
  • にごり酒 五郎八 (菊水酒造)

炭酸で割ってスッキリと飲む

日本酒は、炭酸水で割って飲んでも◎。
しゅわしゅわした炭酸ガスによって、日本酒の香りが鼻に届きやすくなるので、どちらかというと「華やかな香りの日本酒」や「爽やかな香りの日本酒」が合いやすいでしょう。
また「どぶろく」「にごり酒」「おりがらみ」「貴醸酒」など、少し甘めのお酒も軽やかになり、そのまま飲むのとは違った楽しみ方ができるでしょう。
割る時の“炭酸”も炭酸水に柑橘類や糖分を加えて味付けられた「トニックウォーター」、シンプルな炭酸水「ソーダ」、ソーダ水とトニックウォーターを掛け合わせた「ソニック」など、お酒によって変えてみると、味わいも変化します。

【炭酸割り】にオススメの銘柄

  • 黒龍 貴醸酒(黒龍酒造)
  • 来福 MELLOW 貴醸酒(来福酒造)
  • どぶろく 十二六(武重本家酒造)
  • 各酒蔵 純米吟醸酒

柑橘系の果実を搾ってアレンジして飲む

  • レモンとライムと柚子

日本酒には無い強い酸味を足すため、柑橘系の果実をしぼって飲んでもおいしいです。
「香酸柑橘類」に分類される、香りと酸味が強く、そのまま生で食べるというより、薬味や風味付けとして用いられることが多いレモンや柚子、ライムなどを使うのがオススメです。
にごり酒、本醸造酒、純米酒、純米吟醸酒・・・なんでも合わせることができます。

味変効果のほかにも、「購入したけど味わいが苦手」という日本酒、または時間が経って味わいが変化(あるいは劣化)してしまった日本酒にレモンを搾ると、あっという間に飲みやすくなります。
全ての日本酒愛好家にお伝えしたい必殺技です!
ただし効果が強すぎて、元の良い風味も失ってしまう場合があるので、少量ずつ果汁を加え、割合を見ながら試してみてください。

【柑橘アレンジ】にオススメの銘柄

  • 白鶴 別鶴(白鶴酒造)
  • 古酒

ジュースやワインを混ぜて「日本酒カクテル」にして飲む

  • 日本酒で作ったサングリア

    「播州一献 山廃純米 愛山」を基調にキウイ等のフルーツ、アガベシロップで甘さを加えたサングリア(bar Algernon Sinfonia 小栗絵里加氏考案)

  • 日本酒で作ったフローズンモヒート

    「白鶴 別鶴」を使用した「日本酒フローズンモヒート」

カクテルの基材として、日本酒を使えば柔らかく、比較的アルコール度数が控えめなカクテルが完成します
正式なカクテルメニューにも、日本酒は使われます。
ライムジュース、レモンジュースと日本酒をシェイクすれば「サムライ」、ジンと日本酒を混ぜて「サケティーニ」、フルーツとお砂糖(ハチミツ)を入れて漬け込み「サングリア」などもできます。
ワインやラムなど他のお酒と混ぜても面白いでしょう。

酒器を変えて飲む

  • お猪口と升

日本酒はとても繊細なお酒なので、飲む器(酒器)によって味わいや感じ方が変わります。
主に、

  1. 器の形
  2. 大きさ
  3. 口径(口の広がり方)
  4. 素材

という4つがポイント。

器の口の部分が広がっていると香りが外に逃げやすく、ワイングラスのようにすぼまっていると留まり鼻先に感じやすいです。
そのため精米歩合70%~80%などあまり米を磨かずつくったお酒は「平盃」のように口が広がった酒器で飲み、吟醸酒などはすぼまった酒器で飲むのがオススメ。
今回は4.素材について、詳しく解説します。

ガラスの酒器

  • ガラス製の酒器

見た目のオシャレさ、爽やかさから近年よく使われるのがガラス製の酒器。
透明ガラスなら、ワインのテイスティングのように外側からお酒の色も確認できます。
また口に当たる部分も、比較的薄いものが多く、お酒の味わいを左右しにくいため便利な酒器です。
日本酒のプロたちにも利き酒の際に愛用されているガラスの器は、「純米吟醸酒」「吟醸酒」「大吟醸酒」の常温、冷酒を飲む際にオススメです。

人気の【ガラスの酒器】

  • うすはり(松徳硝子)
  • オー(RIEDEL)
  • 香りグラス(アデリア)
  • 津軽びいどろ(北洋硝子)
  • 江戸切子 冷酒杯(カガミクリスタル)

錫(すず)の酒器

  • 錫の酒器

    中央と左が錫の酒器

錫は毒性のない金属として、世界中で愛されてきました。
熱伝導率が高く、熱しやすく冷めやすいのが特徴。空気中や水中でも錆びないという優れた性質を持っています。
抗菌・浄化作用もあり、衛生的にもおすすめです。手で曲げることができるほど柔らかい金属なので、金属のなかでは比較的優しい口当たり。
錫の酒器でお酒を飲むと、味わいが極めてまろやかになります。
これは錫イオンによって雑味が抜けて酒の味が整うこと、またアルコール醸造時に生成される成分を溶かす作用があるから、だそうです。
ただし良くも悪くも日本酒の突出した特徴を消してしまう可能性もあるため、注ぐお酒は選んでください。
同じお酒を、他の酒器と飲み比べしてみるのも面白いでしょう。
冷酒~燗酒まで温度を選びません。
割れることがないので、結婚祝いなどでも重宝する一生モノの酒器です。

人気の【錫の酒器】

  • ぐい呑み(能作)
  • 錫製のタンブラー(大阪錫器)

陶磁器(陶器と磁器)の酒器

  • 陶器の酒器

日本酒の器として最も使われる素材が陶磁器です。
焼き物は、大きく分けると土器、陶器、炻器(せっき)、磁器とあります。
「陶器」は粘土が原料で、口当たりの素朴さが特徴です。
厚みもあることから、濃醇な味わいの日本酒を飲むのにオススメです。
備前焼、信楽焼、萩焼、益子焼などが有名です。

「磁器」は、1200度から1400度という高温で焼成することで、半ガラス質になるため、スベスベとした肌触りで、薄くすっきりした口当たりが特徴です。
有田焼、波佐見焼、清水焼、伊万里焼などが有名。
水が染み込まず、熱を伝えやすいので、燗酒にもオススメです。

木の酒器

  • 木の酒器・升

日本では古くから、計量に木製の枡を使用してきました。
「ます」という響きから、「幸福が増す」「益々繁盛」など縁起が良いとされています。
元は杉材を使うのが一般的でしたが、最近では檜材の酒器も増えています。
どちらも加工性が高く、耐水性と抗菌作用があり、香りも良いため酒器には最適です。
天然素材のため、肌触りが良く手に持つと心落ち着き、口当たりも優しくまろやか。
冷酒~燗酒と、温度を選ばず使えるので、日本酒好きならひとつ持っておきたい酒器です。

人気の【木の酒器】

  • 秋田杉 酒器セット(大館工芸社)

楽しく飲むために「和らぎ水」も忘れずに

「日本酒のおいしい飲み方、アレンジ方法」をご紹介しました。
先人たちが積み重ねてきた「おいしい飲み方」はたくさんありますが、日本酒の飲み方の“決まり”はありません。ぜひ参考にしながら思いのまま、自由に楽しんでみてください。

そして飲んだ後や翌日も楽しくいるために、必ず倍量の「和らぎ水(やわらぎみず)」を飲みましょう!
「和らぎ水」とは、日本酒を飲みながら飲む水のこと。洋酒のチェイサー(追い水)同様、日本酒を飲む合間に水を飲めば、深酔い・悪酔いしにくくなります。酔いを和らげ健康を維持することで、末永く上手に日本酒と付き合っていきましょう。

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