世界初となる「日本酒用コンクリートバレル」仕込みの日本酒が完成!気になる味は?【取材レポート】

  • 日本酒用コンクリートバレルとコンクリートバレル仕込み日本酒

「日本酒用コンクリートバレル」仕込みの日本酒が愛知県で誕生。「蓬莱泉」で知られる関谷醸造株式会社の吟醸工房に世界で初めて日本酒の醸造・熟成に特化して設計された「コンクリートバレル」が導入され、第1号となる日本酒の醸造が2025年秋に開始されました。

SAKETOMOでは、関谷醸造・吟醸工房でのコンクリートバレルの仕込みの様子と、できあがった日本酒のお披露目会の模様を独自に取材。コンクリートバレル仕込みにより生まれた新しい日本酒について、詳しくレポートします。

地元の水と石を原材料に、「日本酒用コンクリートバレル」が誕生

「コンクリートバレル」とは?

  • コンクリートバレル

    関谷醸造に導入されたコンクリートバレル

「コンクリートバレル」とは、その名の通りコンクリートでできた容器(タンク)のこと。構造体に使われるイメージが強いコンクリートですが、主な材料は砕石や水などの天然由来の素材であり、適切な材料を選択することにより食品用のタンクとして利用することができます。海外のワイン造りでは19世紀頃からコンクリート製の容器が用いられてきました。

コンクリートバレルは非常に重量があり、一度設置するとなかなか移動することができないのが弱点。そのため、醸造用としては取り回しのしやすいステンレスタンクやホーロー容器が主流となり、コンクリートバレルは姿を消していきました。

しかし、コンクリートバレルには、ステンレスタンクなどにはない空気を通す性質があり、さらに温度変化がゆるやかであるという特徴があります。これらの特徴が近年見直されており、現在ではナチュールワインを中心としたワインの醸造・貯蔵用としてワイナリーへの導入が進んでいます。

地元企業同士のコラボから初導入が実現

  • 関谷醸造「吟醸工房」

    世界初のコンクリートバレルは、関谷醸造「吟醸工房」に導入

この「コンクリートバレル」を日本酒の醸造・貯蔵用として導入したのが、「蓬莱泉」の銘柄で知られる関谷醸造株式会社。社員への酒造技術の伝承やオーダーメイドの日本酒造りなどを行っている「吟醸工房(愛知県豊田市)」に「日本酒用コンクリートバレル」が導入されました。今回のように素材を厳選し、日本酒の醸造・熟成に特化して設計された「日本酒用コンクリートバレル」の導入は世界で初めて(メーカー調べ)の試みとなります。

  • コンクリートバレル

    関谷醸造に導入されたコンクリートバレル

今回関谷醸造に導入された日本酒用コンクリートバレルは、愛知県豊川市に本社を構え、新城市に工場を持つゴトウコンクリート株式会社が製造を担当。共通の知人を介して東三河に本拠を構える2つの会社の縁が結ばれ、導入が実現しました。

「日本酒用コンクリートバレル」は“テロワール”にもこだわった特別製

  • 関谷醸造のコンクリートバレル 説明書き

    関谷醸造のコンクリートバレルは、地元の石と水を原材料に製作

関谷醸造に導入されたのは、200リットルサイズのコンクリートバレル。仕込み用と貯蔵用にそれぞれ1本ずつが導入されました。

最大の特徴は「地元の石と水」を原材料としていること。今回のコンクリートバレルは、関谷醸造の本拠地である愛知県設楽町の砕石と日本酒を醸造する際の仕込み水で練り上げたコンクリートで作られており、バレルそのものの“テロワール”にもこだわった特別なものとなっています。

第1号の「コンクリートバレル仕込み」は2025年11月にスタート

  • コンクリートバレル

関谷醸造でのコンクリートバレルを用いた日本酒造りは2025年11月に着手。名古屋市東区にある料理店「別邸 なかたけ 縁」から依頼を受けたオーダーメイド日本酒が「コンクリートバレル仕込み」第1号となりました。

注文主である「別邸 なかたけ 縁」の店主・中武正行さんが関谷醸造・吟醸工房でオーダーメイド日本酒を造るのは今回が3年目。お店には日本酒のこだわりをもった常連客も多く、過去2年も特徴のある日本酒を注文していたそうです。

そして3年目となる今回、関谷醸造の宮瀬さんからコンクリートバレルの話を聞き、“世界初”であることや“テロワール”へのこだわりなどのストーリー性の高さに興味を引かれたことから、「コンクリートバレル仕込み」での日本酒造りを依頼されたとのことでした。

  • コンクリートバレルに酒米を投入

    コンクリートバレルに酒米を投入

2025年11月11日には、お店の常連客らとともにコンクリートバレルでの日本酒仕込みを体験。ゴトウコンクリートの松林秀佳社長も加わり、和気藹々とした雰囲気の中で仕込み作業体験が行われました。

今回仕込むのは、地元・新城産の山田錦を60%精米で醸した純米吟醸酒。地元の米と水を材料とし、地元の砕石と水から作られたコンクリートタンクで日本酒を仕込む世界初の試みです。

「コンクリートバレル仕込み日本酒」の気になる味は?

  • 試飲会

「日本酒用コンクリートバレル」で仕込まれた日本酒は、2025年中に完成。約3ヶ月の貯蔵を経て、2026年3月15日に「別邸 なかたけ 縁」にてお披露目会が開催されました。

  • KEGでも保管される「コンクリート仕込み日本酒」

    世界初の「コンクリート仕込み日本酒」はKEGでも保管

関谷醸造の曽木杜氏の話によると、通常の仕込みで用いている木桶やステンレスに比べ、コンクリートバレルでの仕込みは冷たい外気の影響が伝わりやすく、蔵内で毎日場所を移動させながら温度管理を行っていたとのこと。一方で、比較的低温での発酵であったにも関わらず通常の仕込みと同程度の期間で日本酒ができあがったことから、仮に通常と同じ温度帯であれば、発酵が早く進んでいた可能性があるとのことでした。

  • コンクリート仕込み日本酒

取材では、特別に筆者も「コンクリートバレル仕込み日本酒」を試飲させていただきました。一口飲んで驚いたのが、一切尖ったところを感じさせない丸みのある口当たり。これまでに飲んだどんな日本酒とも異なる、マイルドでまろやかな口当たりに非常に驚きました。味わいはすっきりとしながらも米の甘味がしっかりと感じられ、普段いただいている「蓬莱泉」とは少し違いがある印象。心地良い余韻が長く続きながらも引き際が良い、素敵な日本酒に仕上がっていました。

驚くほど丸みのある口当たりに仕上がったのは、コンクリートバレルが持つ透気性(微細な空気を通す性質)をはじめとした特性によるところが大きいのではないかと考えられているとのこと。曽木杜氏からは、酒質を辛口寄りに設計して仕込みを行ったことも、全体としてバランスの良い味わいに繋がったとの意見もありました。

中武さんによると、「コンクリートバレル仕込み日本酒」はお店のお客さんたちからの評判も大好評とのこと。“世界初”であることの驚きに加え、丸みのある味わいの中に米の風味をしっかりと感じられるところが高く評価されており、日本酒好きの常連客からは「10リットルのケグ(KEG DRAFT:
搾りたての生酒をサーバーからグラスに提供するシステム)をそのまま1本分けてほしい」というリクエストが飛び出すほどだったそうです。

「コンクリートバレル」が日本酒に新たな可能性をもたらす

  • コンクリートバレルの製造を担ったゴトウコンクリート株式会社の松林社長もできあがった日本酒を堪能

今回は、関谷醸造・吟醸工房で行われた「日本酒用コンクリートバレル」での日本酒造りについてレポートしました。試飲したコンクリートバレル仕込みの日本酒は、全く角を感じさせない丸みのある口当たりが非常に印象的。地元の砕石と水から生まれた“コンクリートバレル”で仕込んだからこそ生まれた、新しい日本酒の味わいに驚きを隠せませんでした。

この日本酒は、名古屋市東区にある「別邸なかたけ 縁」にてなかたけオリジナル酒として提供されるとのこと。飲んでみたいという方は、予約してお出かけいただくことをおすすめします。

「別邸なかたけ 縁」公式インスタグラム:https://www.instagram.com/bettei_enishi0812/

また、オリジナルの「コンクリートバレル仕込み日本酒」を造ってみたいという方は、関谷醸造・吟醸工房にて相談の上対応いただけるとのこと。詳しくは、関谷醸造・吟醸工房へお問い合わせください。

関谷醸造株式会社公式ホームページ:https://www.houraisen.co.jp/ja/ginjo/ordermade.html

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