16.5 万円する氷温熟成14年のラグジュアリー日本酒『礼比』/「SAKE HUNDRED」と「永井酒造」が語る、日本酒が世界で戦うために必要なこと

  • 黒い日本酒ボトルとグラス

日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」が熟成日本酒『礼比(らいひ)』をリリースしました。それにあわせて、醸造元・永井酒造(群馬県利根郡)でお披露目のプレスイベントが開催されました。

  • 黒いラベル、黒いボトルの日本酒瓶

SAKE HUNDRED 礼比|RAIHI 2010 
販売価格 ¥165,000 (送料別、500ml) 
販売開始日 2024年5月24日(金)
- 製造者:永井酒造(群馬)
- 精米歩合:60%
- アルコール分:16.3%
- 日本酒度:-46
- 酸度:2.5
- アミノ酸度:2.6
- 商品ページ URL:https://jp.sake100.com/products/raihi
※事前登録した方のみご購入することができる特別な商品です。

美しい里山・群馬県川場村にある永井酒造

  • 白い壁三角屋根の建物

群馬県北部にある人口3300人の川場村に位置する永井酒造。川場村は上州武尊山(ほたかやま)の南面に広がる自然豊かな美しい里山です。川場の名の由来となる4本の一級河川と5つの温泉が古来より人々の心を潤してきました。
ブランド米「雪ほたか」の生産が盛んで、永井酒造のメインブランド「水芭蕉」の原料としても多数使用されています。全国的に休耕田や耕作放棄地が問題となっている現在でも、川場村には休耕田がひとつもないといいます。
永井酒造で明治期に建設され1993年まで使っていた旧酒蔵は、リフォームされ売店『古新館』として生まれ変わりました。ここでは永井酒造の全銘柄と豊富な酒器、地元物産品を購入でき、有料試飲も楽しめます。現在製造を行う本社蔵の一角に、2023年8月に醸造研究所併設のテイスティングルーム『SHINKA』がオープンしました。特別な熟成酒を購入した人のみが訪れることができる完全招待制の施設で、国内外からの予約で埋まっています。遠くドバイから訪れる人もいるというから驚きです。

  • 緑がきれいな林

今では多くの観光客で賑わう川場村ですが、1971年には観光客がゼロという記録を出したそうです。永井酒造はもちろん、車で5分の距離にある道の駅「川場田園プラザ」には、年間200万人の人々が訪れます。代表取締役の永井則吉さんの兄が再建し、地方創成の成功事例として全国でも有名です。村長だった父の遺志を継ぎ、永井兄弟が川場村を盛り立てています。

永井酒造のこだわりとルーツ「世界に誇れる日本酒を目指して」

  • 水のきれいな小川と緑の木々

永井酒造は、“世界に誇れる日本酒を提供する”ことをテーマにしています。“世界市場における日本酒”にこだわるようになったのは、社長である永井さんが20代の時の体験に由来しています。高価なワインが評価される一方で、日本酒がわずかな価格上昇でクレームを受ける状況に疑問を抱いていた中、先輩から特別招待を受けたプライベートワイン会でラトゥール、マルゴーなど名だたる赤ワインにも引けを取らない『DRC モンラッシェ』を味わい、そのエレガントさと余韻の長さに心を揺さぶられました。「雷に打たれるような衝撃だった」と、永井氏は振り返ります。この経験から「一流の日本酒を造って、日本酒の価値を高めることを生涯の使命としよう」と強く願うようになりました。 

そこで「乾杯に適した日本酒をつくりたい」という想いで、長年の開発を経て、2008年にスパークリング日本酒『MIZUBASHO PURE』を売り出したことが出発点でした。その後、自社の活動だけに留まらず、「一社だけでは文化を作れない」と考え、苦労の末に辿り着いた独自技術を仲間に惜しげもなく公開する形で、スパークリング日本酒に厳格な認定基準を設けた『一般社団法人awa酒協会』を設立し、理事長に就任。精力的にAWA酒を発信しています。

その他にも、熟成酒の価値創造をするため『一般社団法人 刻(とき)SAKE協会』の設立、関東初となる地理的表示『GI利根沼田』の認定に尽力した酒蔵として知られています。

熟成酒に30年近く取り組み続ける永井酒造

  • 黒い貯蔵タンク

永井さんは、高価なワインが評価される一方で、日本酒がわずかな価格上昇でクレームを受ける状況に長年疑問を抱いてきました。この経験から、「一流の日本酒を造り、日本酒の価値を高めることを生涯の使命としよう」と強く願うようになりました。現在市場に出回っている熟成酒の中には、計画的に貯蔵されたわけでなく、在庫として残ったものも存在します。しかし、10年以上の歳月を経ても繊細さを保ちつつ、経年変化による重厚感を備えるよう長期熟成を見込み、原料選定からはじめ酒質設計をして醸造し、ゆっくりと寝かせた日本酒は、新酒にはない濃醇なコクや深い甘さ、贅沢なまでの余韻があります。 

永井さんが社長就任した翌年の2014年、永井酒造では『NAGAI STYLE』を発表しました。乾杯にはAWA SAKE『MIZUBASHO PURE』、前菜以降にはスティルタイプの「水芭蕉」、メイン料理には10年以上熟成させた「ヴィンテージサケ」、デザートには甘口の「デザートサケ」と、コース料理と合わせる日本酒という新たなスタイルを提唱しました。 

かつて飲んだ「DRC モンラッシェ」に匹敵するものを目指して造られ、18年の開発期間の末に発表されたのが「ヴィンテージサケ」です。周囲の強い反対を押し切り、自費を投じて実験を続け、追求し続けた理想の姿がこの「ヴィンテージサケ」なのです。

SAKE HUNDRED「礼比」とは?

⽇本酒ブランド「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」(運営:株式会社Clear/東京都渋⾕区)は、世界中の⼈々の「⼼を満たし、⼈⽣を彩る」ことをパーパスに掲げ、これまでフラッグシップの『百光』をはじめ、ミズナラの樽で貯蔵した『思凛』、スパークリング『白奏』などさまざまな日本酒をプロデュース。酒造会社各社と共同開発し、自社で販売してきました。商品の価格帯の中心は30,000円前後。1995年製の熟成酒『現外』は、現在266,200円で販売されています。フランスで行われる日本酒コンクール「Kura Master」において金賞を受賞するなど、その品質は高く評価されています。長年、原料価格だけが販売価格に反映されてきた従来の日本酒の世界において、適性価格を表示し、ストーリーも一緒に丁寧に伝え販売することで、日本酒業界の末永い未来を描くと同時に、日本酒の魅力に触れる消費者を増やし、人々の暮らしを豊かに彩ることを目的としたラグジュアリーブランドです。

そして永井酒造をパートナーに醸造し、2024 年 5 ⽉ 24 ⽇に数量限定販売を開始したのが、氷温熟成14年のヴィンテージ⽇本酒『礼⽐(らいひ)』です。

『礼⽐』の3つの特徴とテイスティングコメント

  • 日本酒が入ったクラスを掲げる手

「礼比」は、淡いレモンイエローです。ワイングラスに注ぐと、樽のバニラやココナッツのような甘い香りが立ちます。口に含むと、香りから想像するよりずっと舌触りはきめ細かで、実になめらかです。累乗仕込みに由来する少しトロッとした甘み、控えめなリンゴ酸がバランスよく、熟成古酒のような「老香(ひねか)」は感じません。まさか14年寝かせたとは思えないフレッシュな味わいが残っています。余韻が長く、まるで上質なマロングラッセのよう。

【特徴その1】14年間の氷温熟成

  • 冷蔵庫の扉

永井酒造がおこなってきた10年以上の実験により、マイナス5℃の冷蔵庫で貯蔵するという最適解を導き出しました。日本酒が熟成する過程で、液中のアミノ酸や糖分が酸化する「メイラード反応」が起こります。これにより黄色く色づき、味わいも濃醇になります。当初採用していた地下セラーの15~18℃から、マイナス5℃くらいの温度帯を5℃ずつ区切って同じ酒を寝かせる実験をしました。0℃以上の温度が高いものはソトロンという醤油やキャラメルのような香りが多く発生し、香ばしい紹興酒のような香りになります。よりエレガントで上品な熟成酒を目指し、できるだけソトロンの成分発生を抑え、氷温熟成で10年以上じっくりと寝かせることにしました。 

年に1度、清酒専門評価者の資格を持つ永井社長、杜氏、副杜氏と、WSETワインレベル3の資格を持つ取締役CBOの永井松美さんと4名で貯蔵する日本酒をきき酒して、「今出荷すべき」と満場一致したものをリリースしています。

【特徴その2】タランソー社製のフレンチオークのオリジナル新樽を使用

  • オーク樽

樽で寝かせることで、バニラのようなバニリンやココナッツのようなラトン、タンニンが液中に溶け出します。この香りをバランスよくまとうことで、甘やかな味わいと調和します。多くの日本酒蔵では、シェリーやシャンパン、ウイスキーなど他の酒の貯蔵に使用した樽で日本酒を寝かせることがほとんどです。しかし永井さんは「樽にはその酒のエッセンスが入り込んでいる。100%永井酒造の日本酒だけを味わって欲しい」という想いから、フランス・タランソー社にフレンチオークの新樽を特注しています。新樽だと味わいや香りが過剰に付きすぎることが問題になりますが、樽ごと氷温冷蔵庫に貯蔵することで成分が溶け出すのをゆっくりと抑えています。樽の焼き加減も何度も実験し、確認し合い、最適な状態を見つけました。

【特徴その3】累乗仕込み

  • ワイングラスに注がれる日本酒

日本酒は本来、米、米麹、水で造られますが、水の代わりに(一部に)日本酒を使用することで、深い甘味と旨味をもたらす製法があります。「礼比」はこの製法を採用することで、濃密で奥行きのある瑞々しい甘みと、立体感のある旨みを生み出しています。

SAKE HUNDREDと永井酒造が語る、日本酒が世界で戦うために必要なこと

  • 木桶の蓋が飾られた壁の前に座る男性2人

    左:SAKE HUNDRED 生駒龍史社長、右:永井酒造 永井則吉社長

今回の商品開発のきっかけ、ふたり(2社)の出会い、コンセプト作りの過程や商品の特徴をふまえながら、「日本酒が世界で戦うために必要なこと」について、SAKE HUNDREDの企画販売会社である株式会社Clearの代表取締役社長・生駒龍史さんと、永井酒造の代表取締役・永井則吉さんに話を聞きました。

「礼比」誕生のきっかけ~ SAKE HUNDREDは日本酒価値創造のパイオニア

  • 対談する男性2人

永井さん 僕は人生を賭けて“日本酒文化の価値創造”をしていこうと決めています。その一環として、長年、熟成酒の研究やスパークリング日本酒の開発をしてきました。海外のことわざで「早く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け」というのがあります。自社だけでなく、志を共にする仲間と業界を変革していくつもりで、一般社団法人awa酒協会や一般社団法人 刻SAKE協会も設立しました。 

自社でも高単価・高付加価値商品を販売してきましたが、日本酒はワインと違い、100円200円の価格を上げるのでも苦労する世界。そのなかで「SAKE HUNDRED」は3万円、10万円以上の日本酒を継続して販売しています。この人たちなら一緒に日本酒の価値を向上させていけるのではないか、と思い、僕から生駒さんに「一緒に何か取り組みませんか」と、お便りを書きました。 

生駒さん  連絡をいただいて本当に驚きました。Clearは2013年に設立したベンチャー企業。日本酒専門ウェブメディア「SAKETIMES」に続き、本気で新しい市場を開拓するつもりで日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」を2018年からスタートしましたが、歴史ある酒蔵さんの立場になれば「もう少し様子見しよう」と考えてしまうはず。そこで一歩踏み出す勇気が出るのは、永井酒造が自社の利益と魅力の追求だけでなく、産業全体の未来を考えているからでしょう。 

日本酒業界には素晴らしい酒蔵がたくさんあります。理念を掲げて、ルールを定義しようとする人はたくさんいますが、酒蔵としての底力がないと説得力に欠け、同業者も付いてこないです。だからこうして業界のために行動を起こせる酒蔵というのは、ほんの一握り。永井さんはそれを実行し続けてきた人なのだ、と改めて思った瞬間でした。嬉しくて、お便りを受け取りすぐ永井酒造に出かけて、話し合いを始めました。

歴史と伝統をつなぎ、世界へと広めるためには日本酒市場の連鎖が必要

  • 対談する男性2人

生駒さん 2023年から販売してきた「礼比」のお客様は、上場企業の創業経営者など、長者番付に名を連ねる方も多く、自分用、プレゼント用、貯蔵用…とまとめて購入する方ばかりです。ホテルのスイートルームなどで先行受注会やVIP向けの試飲会を開いて、一人ひとり丁寧に魅力や特性を説明して販売します。珍しさだけでなく、熟成酒のストーリー全体に価値を見出し、評価をいただいているという強い手応えを感じています。 

永井さん 同じく2023年、永井酒造の本社蔵内にオープンした醸造研究所併設のテイスティングルーム『SHINKA』は、特別な熟成酒を購入した人のみが訪れることができる完全招待制、1日1組10人までの施設です。ありがたいことに国内外からの予約で埋まっています。「礼比も購入したよ」と言ってくださる方も多く、市場がつながることで、さらなる価値を高めていき、よりお客様に楽しんでいただくことができると考えています。 

生駒さん 僕はまさにその連鎖を起こしたくて「SAKE HUNDRED」を立ち上げました。日本酒を普段あまり飲まない人が、とっておきの日本酒として「SAKE HUNDRED」に触れ、そこから永井酒造の「水芭蕉」など通常商品を知り親しんでいく、という流れを作りたいのです。酒蔵は長い歴史と伝統があって、先代から受け継いだバトンを渡すという非常に重要な役割があります。このように10万円、20万円という日本酒を販売するにはリスクも伴います。だからこそ僕らのようなベンチャー企業が、本気で向き合い、力と資金を投入して、切り拓いていく意義があるのです。

時が織りなす「礼比」の可能性を感じて欲しい

  • 日本酒の瓶を中央に挟んで立つ男性二人

生駒さんは、「価値ある日本酒や日本酒文化を残すためにも、これからも正当に価格を上げ、酒蔵に還元していきたい。礼比は、日本酒の可能性を拡大する存在でもあるので、礼比の価値が伝わるほどに、熟成酒のマーケットが豊かになっていくのかな、と思っています」とも語っていました。

「礼比」は、長年の研究と情熱が詰まった日本酒です。14年間の氷温熟成により生まれる独特の風味と豊かなコクは、他の日本酒では味わえない体験を提供してくれます。日本酒の未来の姿を追求するSAKE HUNDREDと永井酒造の情熱を感じながら、ぜひ『礼比』を試してみてください。 

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