日本酒の賞味期限は? 未開栓・開栓後の保存期間の目安や適切な保存期間を徹底取材しました!
酒屋さんに行くと、産地や銘柄、造り方などなど本当に多くの日本酒がズラリと並んでいます。そうすると、ついついたくさん買ってしまって家に何本もの日本酒が並んでしまったという経験をしたという方もきっと少なくないと思います。
こうなるといつ開けようかな?いつまで置いておいて大丈夫なのかな?と悩んでしまうのですが、日本酒のラベルで確認しようとしても「賞味期限」の記載がありません。大事にしまっておいた日本酒だけど、果たしてまだ美味しく飲めるのか、賞味期限は大丈夫なのかつい心配になってしまいます。
そこで今回は日本酒をたくさん取り扱っている 株式会社秋田屋 で唎酒師などの資格を持つ小野田さん、寺岡さん、河出さんにインタビュー。日本酒を美味しく飲める期間や、未開封・開封後の適切な保存方法についてお話をお伺いしました。
- 企画部商品企画課 小野田和代課長 (SSI 認定唎酒師)
- 企画部商品企画課 寺岡昌範さん(SSI 認定唎酒師)
- 事業企画課 河出里恵さん(J.S.A.SAKE DIPLOMA)
目次
日本酒に賞味期限はある?ない?
日本酒のラベルには賞味期限が記載されていませんが、これは何故なのでしょうか?
寺岡
日本酒のアルコール度数は15~16度程度のものが一般的なのですが、これくらい度数があるとカビや雑菌などが繁殖できないというのが主な理由です。日本酒に限らずワインや焼酎など酒類全般は、賞味期限の表示義務がありません。
一方で日本酒には製造年月が表示されていますので、製造年月日から美味しく飲める飲み頃の時期をおおよそ把握することができます。
未開封(開栓前)の日本酒は?
開封していない日本酒の場合、どれくらいの期間であれば美味しく飲めるのでしょうか?
寺岡
火入れした一般的な日本酒であれば製造年月から9ヶ月から1年程度、火入れしていない生酒については半年~9ヶ月程度が目安と言われています。あらばしりや新酒などデリケートなお酒の場合には早めがいいと言われていますね。
とはいえ、これはあくまでも目安に過ぎず、蔵元さんの考え方や造り方などによって「もっと置いておいても大丈夫」、「早めの方がいい」というケースもたくさんあります。もし気になったら購入する際に聞いていただくのが一番です。
ただ、飲み頃を過ぎてしまったからすぐに飲めなくなるわけではなく、少しずつ味が変わっていくという範囲です。腐るものではありませんので、あくまでも目安として捉えていただければと思います。
開封前の日本酒の場合、美味しい状態をキープしながら保管するためには、どのような点に気をつけると良いのでしょうか?
寺岡
日本酒は光に弱く、太陽光はもちろん蛍光灯でも影響を受けてしまいます。そのため、日本酒の保存場所としては「光の当たらないところ」が適しています。
生酒の場合にはラベルにも書かれているように冷蔵庫で保管するのが基本です。一方で、火入れした一般的な日本酒の場合には冷暗所であれば保管できます。
もちろん、冷蔵庫で保管しても大丈夫ですが、実際にはスペースの都合もあると思いますので冷蔵庫では生酒を優先して保管し、火入れした日本酒は温度があまり上がらず、かつ光の当たらないところで保管頂ければと思います。
小野田
キッチンのシンク下などで日本酒を保管される方もいらっしゃいますが、上にコンロなどがあると熱がこもりやすいので、基本的には避けた方が良いと思います。風通しが良いところで涼しいところの方が良いですね。
光が当たるとどうしても変色して風味も変わってしまいます。新聞紙や包装紙で包んで光が当たらない状態にして棚に置いておくという方法もあります。
開栓後の日本酒は?
日本酒は開けてしまうとすぐに飲みきらないと味が変わってしまうというイメージがありますが、実際には開栓してからどれくらいまで美味しく飲むことができるのでしょうか?
寺岡
ワインに比べると日本酒の味の変化はかなり緩やかなので、火入れした一般的な日本酒であれば開栓した後も一週間ぐらいであれば問題無く美味しく飲んで頂けます。生酒の場合には時間の経過で味がまろやかになっていったりすることもあるため、その変化も楽しみ方の一つになります。
意外と大丈夫なのですね。一度開封した日本酒を保存するときにはどのようにするのが良いのでしょうか?
寺岡
開封した日本酒はきちんと栓をして冷蔵庫で保管するのが良いです。また、日本酒は空気に触れると味がどんどん変わっていくため、栓を開けたり閉めたりするのを繰り返すと味が変わりやすくなってしまいます。蔵元さんが試飲販売をされるときに、栓を開けて注いでを繰り返すと味が変わりやすいとおっしゃっていますね。
とはいえ、一般の方が、例えば今日開けて半分飲んだ、週末しか飲まないから一週間経ってまた開けたところでほとんど変わってないとは思います。
小野田
例えば一升瓶の場合、半分飲んだあたりで別の4合瓶などの小さな瓶に移すと空気に触れる面積が減って変化しづらくなります。この場合、詰め替える瓶は雑菌が残らないよう、水洗いではなく煮沸消毒したものを使って下さい。もともと日本酒が入っていた色付き瓶を煮沸して使うのがおすすめです。
飲み頃が過ぎてしまった日本酒はどうする?
日本酒の飲み頃が過ぎてしまったとか、ダメになってしまったとかの判断の目安はどのようなものがあるのでしょうか?
小野田
自分たちが判断するときにはまず色と香りを見ます。色で言えば、黄金っぽい色なら熟成していると言えるのですが、赤みがかったような茶褐色の感じになると変化がかなり進んでしまっているという事になります。また、香りについてもツンとくるような感じ、飲もうと思わない香りになっていきます。味についてはダメになってくると苦味や酸味を感じるようになります。
お酒は嗜好品ですので、皆さんが美味しく飲んでいただけるのなら大丈夫です。変化といってもお腹を壊すわけではないので、そういう面では心配はありません。
ただ蔵元さんが望んでいる味わいで楽しんでいただくという面からみると、ズレが生じてしまいます。
タイミングを逃してしまうことになるわけですね。そういった飲み頃を過ぎてしまった日本酒の場合、何か使い道はあるのでしょうか?
寺岡
やっぱり料理が一番多いですね。
小野田
料理酒としてもちろん使うことができますし、肉のアクをとるなどの形でも使えます。他には日本酒風呂として使うというのもあります。おすすめは洗面器に5mmから1cmほどを目安に日本酒を入れて、お湯を加えて足先を温めることですね。かかとがカサカサになってきた時などに保湿的な形で使うことができます。
一方で、日本酒は消毒用アルコールの代わりとして使うには残念ながら不向きです。日本酒には糖分が含まれているので消毒に使うとべたついてしまいます。
飲み頃や保管方法を知って日本酒ライフを楽しもう
大変勉強になるお話ばかりでした。ありがとうございました。
今回は、株式会社秋田屋の寺岡さん、小野田さん、河出さんに日本酒の賞味期限と保管方法についてお話をお伺いしました。日本酒を保存する場合には「光」に注意して、冷蔵庫に入れたり、紙で包んで涼しいところに置いたりするのが良いとのこと。もちろん美味しい間に飲みきるのがベストなのですが、万が一飲み頃が過ぎてしまったとしても料理酒や日本酒風呂などで活用できるとのことでした。
ほんの少しの心がけで日本酒をより美味しく楽しく。日本酒ライフに大変参考になるお話でした。