矢作ダム貯蔵酒「山清水秀」を飲み比べ! 「第2回豊田日本酒・発酵博覧会」で4蔵の日本酒と発酵グルメを堪能【体験レポート】
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矢作ダム貯蔵酒「山清水秀」
愛知県豊田市にある矢作ダムで6年前から行われているのが「ダム貯蔵酒」の取り組み。年間を通じて温度変化が少ないダム堤内の環境を生かし、地元豊田市にある4つの酒蔵が醸した自慢の日本酒をダム堤内で貯蔵して熟成する試みが続けられています。
矢作ダムで1年以上貯蔵した日本酒は「山清水秀(さんせいすいしゅう)」と名付けられて販売。豊田市内のみの流通で数量限定ということもあり、入手が難しい“幻の酒”となっています。
そんな「山清水秀」を飲み比べることができる貴重なイベントが開催されると知り、豊田市へ急行。2025年9月21日に「新とよパーク(豊田市新豊田駅東口広場)」にて開催された「第2回豊田日本酒・発酵博覧会」に参加し、貴重な「山清水秀」の飲み比べを体験してきました。
豊田の駅前に市内4つの酒蔵が集結
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第2回豊田日本酒・発酵博覧会(開場直前の様子)
「第2回豊田日本酒・発酵博覧会」は、愛知環状鉄道・新豊田駅の目の前にある「新とよパーク(新豊田駅東口広場)」にて開催。駅前の会場に関谷醸造株式会社・中垣酒造株式会社・浦野合資会社・豊田酒造株式会社の4つの酒蔵が集結しました。
この日は秋晴れに恵まれたこともあり、会場には午前中から日本酒ファンが足を運び、気づけばテーブルはあっという間にいっぱいに。午後からは一段と来場者が増え、多くの人々が思い思いに飲み比べを楽しんでいました。
幻の矢作ダム貯蔵酒「山清水秀」を4蔵飲み比べ
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「山清水秀」は4蔵揃った飲み比べセットで有料試飲
「第2回豊田日本酒・発酵博覧会」では、2024年7月に矢作ダムへ搬入され、1年以上の貯蔵を経て2025年8月に搬出が行われた「山清水秀」を有料試飲で提供。筆者も4蔵全ての「山清水秀」をいただきました。
「蓬莱泉」関谷醸造
愛知県北設楽郡設楽町に本社を構える関谷醸造は、「蓬莱泉」「空」「一念不動」などのブランドで知られる愛知県有数の老舗酒蔵。本社のある設楽町の他、豊田市稲武地区でも「ほうらいせん吟醸工房」を構えて日本酒造りを行っています。
関谷醸造の「山清水秀」は、精米歩合55%の純米吟醸酒を矢作ダム内で貯蔵・熟成したもの。口当たりは淡麗で柔らかく、香りは穏やか。後口にかけてすーっときれいに消えていくところは関谷醸造らしさが感じられます。
そして非常に印象に残ったのが、全く角を感じさせないまろやかさ。どこまでも丸みのある味わいは、休日の昼下がりにのんびりと飲んでいたくなるおいしさです。
「賜冠」中垣酒造
中垣酒造は、矢作ダムに近い豊田市旭地区で125年にわたり酒造りを続ける酒蔵。「甘口であり旨口の清酒を醸す」をコンセプトとした日本酒は、「賜冠」のブランドで地元を中心に親しまれています。
中垣酒造の「山清水秀」は、40%精米の純米大吟醸酒を矢作ダム内で貯蔵・熟成したもの。雑味のないすっきりとした味わいで、わずかに残る余韻が心地よさを演出します。
純米大吟醸の透明感とダム貯蔵を経て生まれたまろやかさを楽しめる中垣酒造の「山清水秀」。これからの季節、アウトドアシーンにも合いそうなお酒でした。
「菊石」浦野合資会社
浦野合資会社は、豊田市猿投地区にて江戸末期に創業し、160年の歴史を数える老舗酒蔵。「菊石」の銘柄で知られる日本酒は、長年にわたり品評会等で賞を獲得するなど高い評価を受けてきました。
浦野の「山清水秀」は、精米歩合60%の特別純米酒を矢作ダム内で貯蔵・熟成したもの。「菊石」らしい旨口の味わいはそのままに、丸みのある味わいに育っていました。
米の旨味としっとりとした味わいを楽しめる浦野の「山清水秀」は、夕食のおともにしたいお酒のイメージ。特に味噌料理や魚料理と合わせたら最高のひとときとなりそうです。
「豊田正宗」豊田酒造
豊田酒造は、今回のイベント会場からも近い豊田市内中心部(旧挙母町)にて大正時代より酒造りが始まった酒蔵。豊田市内で唯一「豊田」の名前を冠した「豊田正宗」などの日本酒が、地元のファンを中心に根強い人気を集めています。
豊田酒造の「山清水秀」は、愛知県産米を50%まで磨いて醸した大吟醸酒。4蔵の「山清水秀」の中では最も濃醇甘口の印象。他の「山清水秀」と同様、角のとれた丸みのある味わいで、米の甘味と旨味が織りなすおいしさが堪能出来るふくらみのある味わいでした。
余韻が長く続き、しっとりと楽しめる豊田酒造の「山清水秀」。お酒単体でも深い味わいを楽しめるため、秋の夜長の晩酌タイムに楽しむのはもちろん、寝る前のナイトキャップとしても頂きたくなる味わいでした。
ダム熟成で変わる!「山清水秀」のまろやかさと魅力
今回のイベントでは、矢作ダム貯蔵酒「山清水秀」の他、各蔵が醸した自慢の日本酒も飲み比べセットとして有料試飲が行われていました。
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各蔵自慢の日本酒も飲み比べセットで提供
各蔵の日本酒と「山清水秀」を飲み比べて強く感じたのが「ダム内での貯蔵・熟成を経ることにより、蔵ごとの個性はそのまま残しながらも、まろやかさが格段に増していた」こと。新酒にはない柔らかな口当たりに変化しつつも、蔵ごとの個性はしっかりと残していることが何よりも印象的でした。
また、もう一つ印象深かったのが、どの蔵の「山清水秀」にも「老ね感」がほとんどなかったこと。日本酒を熟成させると熟成環境や期間によっては熟成酒特有の香りや味わいが生じることがありますが、今回頂いた「山清水秀」にはそうした部分は感じられませんでした。これも年間を通じて一定の温度・湿度に保たれているダム内の安定した環境がもたらす効果なのでしょう。
発酵食や焼きたての川魚で日本酒がいっそうはかどる
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飲食ブースには発酵にちなんだグルメがズラリ
「豊田日本酒・発酵博覧会」と銘打たれた今回のイベントには、発酵にちなんだおつまみも多数販売。豊田市越戸地区で昭和2年より味噌造りを行う丸加醸造場も出店しており、味噌おでんと漬物を頂きました。地元の日本酒と地元の味噌料理のペアリングは、言うまでもなく最高です。
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丸加醸造場の味噌おでんとお漬け物セット
さらに会場では、矢作川水系の豊かな清流で育ったニジマスの塩焼きも焼きたてで販売。炭火でじっくりと焼かれたニジマスのおいしさに、ますます日本酒がはかどりました。
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ニジマスの塩焼きが炭火で香ばしく焼かれる様子も日本酒のアテになります
豊田の地で育まれる日本酒文化と発酵の力を体験
豊田にある矢作ダムと豊田で日本酒造りを続けてきた4つの酒蔵が力を合わせて取り組んできたダム貯蔵酒「山清水秀」。「第2回豊田日本酒・発酵博覧会」の場で飲み比べできたことで、ダム貯蔵・熟成の奥深さを改めて学ぶことができました。
また、会場で頂いたおつまみも大変おいしく、お酒がついつい進みすぎてしまいそうになるほど。豊田に根付いた日本酒と発酵文化の奥深さを心ゆくまで堪能できた「豊田日本酒・発酵博覧会」、次の機会にもまたぜひ足を運びたいと思います。
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