列車に乗って最高の雪見酒を堪能!! 明知鉄道「枡酒列車」で"呑み鉄"体験してきました!【参加レポート】
田園地域をゆったりと走る列車の中で日本酒が飲み放題――。こんな日本酒ファンにとって夢のような列車が運行されているのをご存じでしょうか?
岐阜県内を走る明知鉄道では、1月から3月までの土曜日限定で「枡酒列車」を開催。恵那駅から明智駅までのおよそ一時間、列車に揺られながら地元の酒蔵が醸した日本酒を“飲み放題”で楽しむことができるという、日本酒ファンにはたまらないイベント列車が運行されています。
今回は、筆者が実際に「枡酒列車」へ体験乗車。幸せがとまらない究極の“呑み鉄”旅の模様をレポートします。
明知鉄道はグルメなイベント列車が充実!
明知鉄道は、岐阜県恵那市の恵那駅から明智駅までを結ぶ地方鉄道路線。旧国鉄明知線を引き継いで第三セクター方式にて運営が行われており、地元では“あけてつ”の愛称で親しまれています。
-
明知鉄道路線図
東美濃地方の高原地帯を走る明知鉄道の沿線には、“農村景観日本一”と称される岩村町富田地区や、戦国の世に城を守った“女城主”のエピソードで知られる岩村城跡、大正文化をたっぷりと体験できる日本大正村など自然と歴史ロマンがあふれるスポットが盛りだくさん。日常の足のみならず、“旅鉄”を楽しむ人たちにも多く利用されています。
そんな明知鉄道が力を入れているのが“グルメ”なイベント列車。1987年に運行が始まった「寒天列車」を皮切りに、40年近くにわたり様々なイベント列車が運行されています。
-
現在はシーズンごとに6つのグルメ列車が運行
筆者が乗車したのは、2025年2月8日に運行された「枡酒列車」。この日は今冬一番の最強寒波が日本列島に襲来し、名古屋市内でも積雪を記録。普段はあまり雪が降らないという岐阜県恵那市もしっかりと積雪していましたが、無事に「枡酒列車」の運行が行われました。
出発時刻の少し前には、多くの乗客で賑わう恵那駅に3両編成の列車が入線します。この日の列車は1両目が一般車両、2両目が「じねんじょ列車」、そして最後尾の3両目が「枡酒列車」という設定となっていました。
-
恵那駅へ入線する「枡酒列車」
「枡酒列車」の車内にはロングシートの座席の前にテーブルが設置。乗客は指定された席に座ります。ちなみに「枡酒列車」は飲食物の持ち込みがOKとなっているので、乗車前に和らぎ水を購入しておくのがおすすめです。
各席には特製のと日本酒のおともとなるお弁当が用意。お弁当は明知鉄道が経営する「山岡駅かんてんかん」が作ったもので、どれもお酒のおつまみにピッタリな料理が10種類も入った豪華仕様です。
ここで注目したのが枡のデザイン。特製の枡には明知鉄道の車両や恵那の街並みのイラストのほか、なんと「全線フリー切符」が焼き印でプリントされています。
実は枡酒列車では、枡そのものがきっぷ扱い。恵那駅~明智駅間の全区間を1日乗り放題となるため、枡酒列車で終点・明智駅についた後も、恵那に戻りながら沿線各地を巡ることができます。
なお、枡とは別に通行手形スタイルのフリー切符ももらえますので、実際の乗降車の際にはこちらを使うのが便利です。
席について準備を整えているといよいよ発車時刻。明智駅へ向かう1時間弱の日本酒旅がスタートします。ちなみに日本酒好きばかり集まった「枡酒列車」では出発前にフライングで乾杯の声が上っていました。
この日の「枡酒列車」には11名が乗車。明知鉄道で「枡酒列車」の企画を担当する伊藤さんの話によると、雪の影響で新幹線が遅れたためキャンセルが出てしまい、普段より少人数での運行となったそうです。
乗客は男女半々程度で年齢層も幅広く、岐阜県について情報発信を行っているインフルエンサーの皆さんといった個性豊かな方々も参加。そんな乗客たちも全員が“日本酒好き”という共通項を持っていることもあり、すぐに仲良くなっていました。初めて顔を合わせても日本酒を縁に仲良くなれるのが「枡酒列車」の楽しみの一つです。
-
この日の枡酒列車には「東美濃観光ガイド」のメンバーや岐阜県インフルエンサーのgifugramさんも参加されていました
東美濃観光ガイド https://higashiminokanko.com/
岐阜県インフルエンサー gifugramさん https://www.instagram.com/gifugram/
列車が出発するとすぐに見えてきたのが雪景色に包まれた恵那の風景。明知鉄道・伊藤さんによると恵那周辺はあまり雪が降らず、今回のような雪景色の中で「枡酒列車」が運行するのは1年に1回あるかどうかとのこと。幸運にも大変貴重な機会に巡り会うことができました。
-
暖かい列車の車窓越しに楽しむ雪見酒は最高!
岩村醸造の5種類の日本酒を飲み比べ!
この日の「枡酒列車」では、沿線で酒造りを行っている岩村醸造の日本酒5種類が用意。そのうちの1つは「枡酒列車」内でのみ飲むことができる特別な日本酒です。終点・明智駅に着くまで、これらの日本酒を“飲み放題”で楽しめるのが「枡酒列車」の醍醐味。もちろん筆者も全種類飲み比べしました。
ゑなのほまれ しぼりたて原酒 生酒
『ゑなのほまれ しぼりたて原酒 生酒』は、辛口派の日本酒好きからも人気を集める日本酒。アルコール度数19.1度と原酒ならではの高アルコールにも関わらず、甘さを感じる口当たりと後口にかけてのキレの良さで重さを感じることがありません。それでいながら原酒ならではのしっかりとした飲み応えもあり、日本酒好きから高く支持されるのも納得の味わいです。どの料理とも素晴らしい相性でしたが、特に「鰆の西京焼き」との組み合わせが最高でした。
女城主 辛口純米酒
『女城主 辛口純米酒』は岩村醸造の代表銘柄「女城主」の中でもスタンダードなお酒の一つ。日本酒度プラス10とかなりの辛口ながらもすっきりとした口当たりで飲みやすく、日本酒ならではの豊かな味わいを感じられます。後口に向けてすーっと流れていくキレの良い透明感を感じる日本酒。「厚揚げの甘辛煮」と合わせると、いつまでも飲めそうな美味しさを楽しめました。
女城主 純米生にごり酒
『女城主 純米生にごり酒』は冬季限定で販売されている日本酒。酵母が生きたまま瓶詰めされているので、瓶内二次発酵によるナチュラルなスパークリング感を楽しめます。まったりとした口当たりと、かすかに発泡するシュワシュワ感の心地よさは純米生にごり酒ならではの美味しさ。「タコのカルパッチョ」をおともにすると、車窓から見える雪景色とも相まってついついお酒が進んでしまいました。
女城主 純米吟醸(火入) 原酒【製品化前】
ノンラベルの瓶に詰められていた『女城主 純米吟醸(火入) 原酒』は、「枡酒列車」の車内でのみ飲むことができるという貴重なお酒。今回頂いた中では最も甘い口当たりでまろやかな味わいとなっており、吟醸酒ならではのフルーティーさと華やかな香りもしっかりと堪能出来ました。甘口の日本酒には「ピリ辛こんにゃく煮」が最高の組み合わせ。甘さと辛さのコントラストが、双方の美味しさをいっそう引き立てていました。
女城主 おりがらみ 純米原酒 生酒
『女城主 おりがらみ 純米原酒 生酒』は、絞ったお酒をそのまま瓶詰めした冬季限定発売の生原酒。口当たりはほんのり甘く、その後から日本酒らしい米の旨味が感じられます。後口はしっかり切れ、アルコール度数17度の原酒とは思えないほどの飲みやすさ。今回の料理の中では、「恵那鶏の塩麹焼き~ゆず胡椒添え~」がピッタリでした。
「枡酒列車」は帰りも楽しみがいっぱい!
終点の明智駅に到着すれば「枡酒列車」の旅も無事終了。1時間弱の列車旅の間に筆者が飲んだ日本酒は1巡プラスアルファの合計7杯と、気がつけば4合瓶1本分を超えていました。おいしい日本酒においしいお弁当、さらには車窓から見える幻想的な雪景色が重なれば、日本酒がはかどってしまうのも仕方が無いですね。
-
明智駅に到着する頃にはすっかり出来上がっていました
「枡酒列車」は明智駅が終点ですが、列車を降りた後も楽しみがいっぱいです。例えば終点の明智駅の近くには「日本大正村」があり、大正ロマンあふれる街並みをのんびりと散策可能。大正路地や大正村役場は明智駅から徒歩数分の場所にあるので、帰りの列車を待つ間に少しだけお散歩するのにもピッタリです。
また、取材した2月8日は列車内でも日本酒を楽しんだ岩村醸造にて蔵開きが開催。明智駅からの帰りの列車に乗車した後、岩村駅で途中下車すれば蔵開きに間に合うということで、日本酒旅の延長戦へと向かうことにしました。
ちなみに「枡酒列車」参加者のほとんどが岩村駅で途中下車。日本酒好き同士、考えることは一緒ですね。
-
岩村駅から徒歩10分ほどの場所にある岩村醸造の蔵開きに立ち寄り
岩村醸造に到着したのは14時過ぎ。15時の蔵開き終了までの短い時間とはなりましたが、岩村醸造のおいしい日本酒を堪能することができました。
-
岩村醸造の蔵開きでは「枡酒列車」内とは別の日本酒をたっぷり堪能!
岩村醸造の蔵開きは2月22・23日と3月1・2日の各土日にも開催予定。枡酒列車とは別に、朝から蔵開きを楽しみに行くのもおすすめです。蔵開きについての詳細は岩村醸造のWebサイトにてご確認ください。
「枡酒列車」は日本酒好きなら何度も乗りたくなること間違いなし!
今回は明知鉄道で運行されている大人気のイベント列車「枡酒列車」の体験レポートをお届けいたしました。
列車の中から移りゆく車窓を楽しみながら日本酒を心ゆくまで堪能出来る「枡酒列車」は、日本酒好きなら間違いなく楽しめる最高の列車旅。特に今回は貴重な“雪見酒”を楽しめたこともあり、大満足の一日となりました。
-
雪景色がとにかく最高でした
取材にあたり大変お世話になったのが、明知鉄道で「枡酒列車」の企画を担当する伊藤さん。きっと日本酒が大好きな方なんだろうと思いきや、何とご自身はお酒が全く飲めないんだそうです。それでも「自分は飲めないけど、お酒を楽しんで盛り上がっている場が好き」とのことで、枡酒列車の企画も熱心に担当。枡酒列車の中でも自ら席をまわって日本酒を注ぎ、お客さんたちを楽しませている姿がとっても印象的でした。何度もリピート乗車している常連客も多いという「枡酒列車」の人気は、明るく楽しませてくれる伊藤さんの人柄と努力にも支えられています。
-
明知鉄道 伊藤さん
明知鉄道「枡酒列車」は3月29日までの毎週土曜日に運行予定。ほとんどの日程が既に予約でいっぱいになっていますが、一部の日程はわずかに空席が残っていますので、ご興味のある方は明知鉄道Webサイトで確認してみてください。夏には「冷酒列車」の運行も計画されています。
日本酒ファンなら一度乗車すれば大満足すること間違いなし。筆者もこれから“呑み鉄”旅にどっぷりハマってしまいそうです。
関連記事