【クラフトサケ体験】お酒の味わいの方向性を考える! 「みんなでつくるクラフト SAKE #02」 講座体験記~その2 副原料選び~

  • プラスチックケースに入ったスパイスと密閉袋に入った松の葉

日本酒にご興味のあるみなさんは「クラフトサケ(CRAFT SAKE)」をご存知ですか?
「クラフトサケ」とは 日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら 従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、"新しいジャンルのお酒*"のこと。最近、認知度がどんどん上がっている新しいスタイルです。
*クラフトサケブリュワリー協会HPより

 筆者もクラフトサケを飲んだ経験は数回程度で、名古屋でもお店で提供しているところはまだまだ少ないと感じています。友人の誘いから貴重なクラフトサケづくり体験講座に参加し、参加者目線で毎回の講座様子をレポートしたいと思います!
大きなステップは5つに分かれているこの講座。第2回の今回は、味わいの方向性を決める「副原料選び」です。

  • 講座の流れが書かれた画像

クラフトサケの味わいはどう決まる? 日本酒にはない独特な要素

クラフトサケは法律上「日本酒」ではなく「その他の醸造酒」として扱われていて、日本酒の製造免許がなくても造れるというのが特徴でもあります。なぜ「その他の醸造酒」として扱われるのか? そして、独特の味わいやバリエーションを生み出せる元でもあるのが、この「副原料」を入れて発酵させるということに由来しています。日本酒にはない独特の工程なので、味やコンセプトの決め手となるとは言え、なかなかアイデアが湧きにくいですよね。
haccobaの佐藤さんが自社のクラフトサケづくりの際に考える観点を、ヒントとして2つ教えてくださいました。それが①他の飲料の製法をヒントにする、②粕のアップサイクルを考える というもの。実際のhaccobaのクラフトサケを例に解説してみましょう。

①他の飲料の製法とのコラボレーション

副原料単体でゼロから考えるのではなく、「別の飲料の製法をどうやって取り入れられるか?」と組み合わせを考えることで可能性が広がるそうです。実際にhaccobaで造られたクラフトサケを例に出してみると、「日本酒×ペールエール」を元に考えられたのが「はなうたホップス」。イギリス発祥のペールエールは原材料にホップを加えることにより、柑橘のようなさわやかな香りと苦みが特徴です。この製法をヒントに、クラフトビールで使われる「ホップ」に加え、東北地方に伝わるどぶろくの伝統的な製法 "花酛(はなもと)" に使用されていた東洋のホップと呼ばれる「唐花草(からはなそう)」を加え、更に麹を白麹にすることで、クラフトサケに柑橘のような香りと苦みが加わります。
既存の他の飲料の製法や味わいをクラフトサケで再現する、という考え方をすることで、既存の日本酒にはない発想が生まれるそうです。
たしかに、このイメージだと普段日本酒に組み合わせないものでも選択肢に入ってきますね!

  • ホップと日本酒の瓶

②粕のアップサイクル

酒粕に代表されるように、私達の身近にある何かを絞って生まれた粕。実はそのまま使うよりも粕になっていることで余分な油や甘みが抜け、香りや風味だけ残っているので、クラフトサケの発酵への影響を出さずに味の表現が出来るそうです。例えば、ジンジャーエールの粕、ジンの粕などがありますね。haccobaではアップサイクル(捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること)だから使っているわけではないそうですが、結果的にクラフトサケ造りがSDGsに繋がるという感じでしょうか。お酒造りを長く続けていくためにも、持続可能という観点も大事ですね。
haccobaさんで①と②、両方の考え方をベースに生まれたのが「おこめとカカオのスタウト」。日本酒×スタウトビールをイメージしています。
アイルランド発祥のスタウトビールは、ローストした麦芽を使うことでコーヒーやチョコレートのような香り、しっかりとした味わいが特徴の黒ビールです。
このロースト感や香りの表現に使われたのは、ローストした麹とカカオ豆の皮である「カカオハスク」。カカオハスクはチョコレートを製造する際に捨てられてしまう粕で、まさにアップサイクルですね。贅沢なカカオの香りをまとったお酒は、カラメルのような苦味とフルーティーな酸味をより引き立てるそうです。通常の日本酒だけでは思いつかない粕を使った組み合わせが面白いですね。

  • カカオカスクと日本酒の瓶

この2つの観点を元に出来たクラフトサケを見ると、副原料によって香りや酸味、苦みを足していくような要素がありそうです。クラフトサケはどぶろくの製法をベースにしているので、通常の日本酒と比較するとお米の甘みをより感じやすい仕上がりになります。その味わいに変化をもたらす副原料、ということで重要な工程であることが理解できました!
一方で私たちは初心者なので、今回はあまり複雑になりすぎないようにベースの味わい+2~3種類くらいをベースに考えていくことになりました。

参加者のアイデアも多種多様! コンセプトを踏まえてどの方向に定めるか?

  • モニターを見ながら説明をする女性

    始める前に先回のおさらい。先回決まったコンセプトを全員で再確認し、誰に、どういうシーンで飲んでほしいお酒なのかを確認します

  • 付箋にメモをする人

    先回同様、参加者は自分の考えてきた副原料と理由を付箋紙にメモしていきます

まず参加者のAさんが出したアイデアは「日本固有の食材」。1回目の議論でも、「日本」というキーワードが出ていたので、これは納得です。
せり、みょうが、わさびなど、日本固有の食材も色々あるのですね。アイデアを聞きながら「なんだか薬味みたい!」という声も。
実際に食材を持ち込んでいたので、参加者のみなさんは香りを確かめていました。特に興味は先回のコンセプト決めでも上がっていた「みょうが」に寄せられている様子。まさか薬味が主役になるのかも?そう考えると、コンセプトの「カブク」ともマッチしそうです。

  • ミーティングで発表をする女性

    参加者一人一人が、自分が選んだ副原料とその理由を順番に発表していきます。他のメンバーも興味津々!

また、香り系ということで現れたの副原料は「松の葉」と「笹の葉」。Aさんの通勤途中にあるお宅に「松の葉」が植わっていて、その香りに惹かれたそうです。松は縁起物でもありますし、歌舞伎の舞台でも使われているので、イメージにもぴったりですね!
「笹の葉」はこのクラフトサケがお披露目される7月7日、七夕にちなんだ提案です。食材にとらわれていた筆者には全く想像していなかった副原料だったので目からうろこでした! チームで取り組むからこそアイデアが多様になりますね。

  • 密閉袋に入った笹の葉や松の葉

    香りを逃がさないように、と保存袋で準備!そのままだと香りにくいものも、揉んだり叩いたりすると香りがわかりやすくなりました

他の参加者Bさんは「発酵系食材」を。アップサイクルという観点から、みりんの粕である「こぼれ梅」を持ってきてみんなで試食してみました。
酒粕よりもすこしポロポロとしていて、みりん独特の甘みがあります。「みりん粕だけど、名前が日本らしくてステキかなって。福島にもみりんを醸造している酒蔵さんがあるんです。そちらからこぼれ梅を手に入れられたら、クラフトサケがその土地のものになっていいかなと思いました」とのこと。
先回のコンセプト決めの際に、haccobaさんのある福島産のものを使いたい! というアイデアも出ていました。

  • 手に資料を持って説明する女性

    みりん粕に「こぼれ梅」という名前が付いている、という話から「酒粕も同じように素敵な名前があればいいのにね~!」と盛り上がります

  • 手のひらにのせられたみりん粕

    昔は子供のおやつとしても食べられていたこぼれ梅。梅の花のように見えることが名前の由来で、しっかり甘味を感じます

同じくアップサイクルという観点で参加者のCさんが提案したのは、「コーヒー粕」。「リキュールやクラフトビールでもコーヒーは使われているけど、クラフトサケでは見たことが無い気がする。先回“悪い酒”というキーワードが出ていたし、バーボンとかみたいにロックグラスで飲んでいたらイメージと合いそう! 酸味が良いバランスになるのでは? それに知り合いがカフェをやっているのでコーヒー粕が手に入れられるかも」とのこと。なるほど、味わいのバランスに加え、悪いおじさまが食後酒に飲んでいるイメージとも合いそうですね!

  • 付箋紙にメモをとる男性

    他参加者のアイデアから追加で思いついたものも、忘れないうちに付箋紙に記載。どんどんアイデアが増えていきます!

他にも提案されたのが「チポトレ」。参加者一同初耳で、それはどんな食材なのか見当もつきません。「チポトレは中南米原産の唐辛子を燻製にしたものです。いくつか唐辛子の種類によって名前も変わるんですが、水でもどして潰したものを料理に使うんですよ。燻製香が出汁のような感じの香りになるんですけど、辛味もあるので『和+大人っぽい刺激』にならないかなと思いました。」とのこと。唐辛子や一味という案も出ていた中で、聞いたことが無い「燻製唐辛子(チポトレ)」。まさに「カブク」を表現していそうです!

  • スパイスが入ったプラスチックケースが並ぶ

    ケースまで自作する気合の入りっぷり!お料理が得意なDさんならではの、実際に自分たちで試して選んでいける提案です

  • ホワイトボードにたくさん貼られた付箋を前に説明する女性

    たくさん出てきたアイデアをカテゴリーごとに整理しつつ、いよいよ方向性を定めます

他にも様々なアイデアが続きます。「haccobaさんといえばホップ!」、「日本っぽさということで、お茶はどうかな?」、「刺激系で、山葵や山椒、花山椒とかもあるよね!」、「福島県というつながりで、福島の桃とかもいいんじゃない?」、「燻製で気づいたんだけど、ウイスキーみたいに香木を入れるか、後付けにして各自で味変するのはどう?」とアイデアは尽きません。
たくさん出てきたアイデアをカテゴリーでまとめていくとかなりの量になりましたが、大きく2つの方向性がありそうです。「甘めにするのか、苦みを入れるのか」。想定ユーザーや飲んでいただきたいシーン・体験価値をもう一度思い起こして、「カブク」に合うコンセプトの調整を進める議論が続きます。長時間にわたる議論の結果、甘さを感じるクラフトサケの骨格をはっきりさせるためにも、少し「苦み」を加える方向でまとまりました。イメージとしては「ガリチューハイみたいな 大人が楽しめる味わい。クラフトサケならではの甘さは活かしつつ、夏に合うような清涼感、大人な苦味や刺激をプラス」して、「カブク」を表現しています。

  • ホワイトボードに書かれたメモ

    長い長い議論を経て、方向性が決定!甘味だけではなく、苦みを加えた刺激で大人の味を表現します!

この方向性で選ばれた副原料候補たちがこちら。味のベースにhaccobaさんらしく「ホップ」を入れて清涼感を出しつつ、和の食材である「みょうが」「笹の葉」「松の葉」で味わいや香りを、「チポトレ(燻製唐辛子)」で大人の刺激を表現、という考え方です。
実際にクラフトサケに使えるのかどうか、醸造時期の入手性、特にチポトレは未知数の食材なので、発酵時に入れるのか後付けにするのかなども加味し、一度haccobaの佐藤さんが持ち帰って組み合わせ・製法を併せて検討してくださることになりました。最終的にどの副原料が選ばれるのでしょうか?
次回の第3回&4回の講座は、いよいよ福島に赴いたクラフトサケづくり! 今回決まった副原料は発酵段階で投入されるので、純粋なクラフトサケづくりが主目的です。併せてhaccobaの佐藤さんが持ち帰って検討した結果を踏まえ、最終的に使用する副原料を確定します。
一体どんなお酒に仕上がるのか? 泊まり込みでのクラフトサケづくりが今から楽しみです! 

  • ホワイトボードに書かれたメモ

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