【クラフトサケ体験】 出来上がりは未知数!「みんなでつくるクラフト SAKE #02」 講座 ~その1コンセプトづくり~

日本酒にご興味のあるみなさんは「クラフトサケ(CRAFT SAKE)」をご存知ですか?

「クラフトサケ」とは 日本酒(清酒)の製造技術をベースとして、お米を原料としながら 従来の「日本酒」では法的に採用できないプロセスを取り入れた、"新しいジャンルのお酒*"のこと。最近、認知度がどんどん上がっている新しいスタイルです。日本酒が好きな方でもまだクラフトサケに馴染みがない方も多いのでは。そんな筆者もクラフトサケを飲んだ経験は数回程度で、名古屋でもお店で提供しているところはまだまだ少ないと感じています。

「日本酒の知識や楽しみ方の幅を広げたいなぁ」と思っていたところに友人から素晴らしいお誘いがあり、少人数で取り組む貴重なクラフトサケづくり体験講座に出会えました。せっかくのこの体験をみなさまにも届けたく、参加者目線で講座の様子をレポートしたいと思います!

*クラフトサケブリュワリー協会HPより

  • イベントのロゴ

クラフトサケづくりの体験講座って何?どんなことが体験できるの?

こちらの講座を企画したのは株式会社Fam Lab. (東京都渋谷区)。日本酒に関わるプロジェクトのうち、「つくり手の想いや技に触れ、モノづくりの世界や人の手でつくられるモノへの愛を深めてもらうためのラボ『Craft-Lab.』」というコンセプトの元で生まれた体験型の講座です。

初代Miss SAKEとして世界各国に日本酒を広めてきた面白がることが得意な代表・森田真衣さん、そんな森田さんをバランスよくサポートするセンス抜群のデザイナー・いしやまなおみさんのお二人、そしてCraft Sake Breweryのhaccobaさんとのコラボで実現しました。


「Craft-Lab.」として手掛けるこちらのくクラフトサケづくりの体験講座は2023年に続く第2弾。前回は10名のメンバーがコンセプトからラベルデザインまで悩みに悩み、クラフトサケ「NEW SUN LIGER」というお酒を生み出しました。フランスのアペロ(食前酒)のように、初夏の昼間にみんなでワイワイ飲めるお酒を目指して作られたそうです。ぱっと見でこれがSAKE??と思うくらい、爽やかなラベルが素敵ですね!

  • おしゃれなラベルがかかった日本酒の瓶

    Craft-Lab.| 1st_products NEW SUN LIGER

第2弾ではリーダーの森田さん、サブリーダーのいしやまさんと共に、総勢11名が参加し、約3ヶ月間に渡る壮大なプロジェクトを体験します。大きなステップは5つ。参加者全員がどんなクラフトサケを造るかコンセプトから考え、実際に仕込みの一部を体験し、完成したお酒をラベル付けして開封式を楽しむ最終回まで、合わせて全7回の講座からなっています。

  • コンセプトをまとめたイラスト

筆者も一般的な日本酒造りの一部体験には数回参加したことがあるのですが、今回のクラフトサケ体験講座の概要を最初に拝見した際、「よくある酒造りの体験講座とは少し違うかも?」という印象を持ちました。

この約3ヶ月を掛けて生み出されたクラフトサケは実際にhaccobaさんから販売されることもあり、参加者の自分たちが飲みたい味わいの議論だけでは終わりません。このクラフトサケを楽しんでくださる方々を想像し、「どんなシーンで、どんな方々と楽しんでほしいのか?」が伝わるようコンセプトそのものから考えていきます。酒造りの部分だけではなく、酒蔵さんたちが普段考えていることを追体験できそうです。クラフトサケ初心者の筆者には、クラフトサケと一般的な日本酒とのユーザーの違い、楽しみ方の違いなども気になりました!

ドキドキの講座1回目! どんな方々が参加しているの?

全7回講座のうち、酒造りをおこなう第3回、第4回を除いて、すべて都内のレンタルスペースで開催されます。初回の講座は「コンセプトづくり」。まずは自己紹介と参加したきっかけ、どういうお酒を造りたいか? と共有するところから始まりました。 

東京開催がメインということもとあり、参加者はみなさん都内や東京近郊の方々。遠方からの参加は筆者だけなのですが、開催時間が10:00~なので名古屋からでも無理なく参加が可能です。参加者の中には、前回のクラフトサケ造りの体験者からのご紹介で参加された方が3人もいらっしゃいました。体験者がオススメする講座ということで、参加者の期待が更に高まります。
みなさんの自己紹介を伺っていると、一番に感じたのは本当に多様であるということ。年齢層は20代から50代と幅広く、男女比も半々くらいです。クラフトサケが大好き!という方、普段はクラフトサケだけでなく日本酒やウイスキーなども嗜む方、お料理が好きでそれに合わせてお酒を楽しみたい方などさまざまですが、共通項はお酒が好き!ということ。このメンバーでどんなお酒が生み出されるのか楽しみです。大人になると職場や学校等のコミュニティ以外で新たに人と知り合う機会が少なると思うのですが、このように多様なメンバーに出会えるのも体験講座ならではの楽しみ方だな、と感じました。

  • モニターの投影資料を見ながら説明をする人と聞く人

イメージを深める為、haccobaさんを知り、クラフトサケを体験!

具体的なコンセプトを考えていく前に、まずは今回お酒造りをお願いするhaccoba代表の佐藤さんから、haccobaという酒蔵のコンセプト、これまでやってきた想いを共有いただきました。

最初は佐藤さんがクラフトサケに行きついたきっかけから。明治時代よりも前、日本酒、特にどぶろくなどは各家庭で造られていて、それぞれ楽しむ文化があったそうです。明治時代以降は酒造免許制となり、従来の自由な造りはが失われつつありました。佐藤さんは「この貴重な文化である自由な酒造りを後世にも残したい」、「創る楽しさをみんなにも届けたい」、という想いからクラフトサケに行きついたそうです。佐藤さんの言葉をお借りすると「不自由の中の自由」。酒造免許ではないので、日本酒と同じ造り方は出来ないけれど、クラフトサケだからこそ固定概念に縛られず、副原料を入れて楽しむことも出来る。日本酒とはまた違った観点の広がりを感じました。 

そんな佐藤さんが運営するhaccobaは福島県南相馬市小高という町がスタート。今回私たちが第3回、第4回でお酒造りを体験するのは、このhaccobaの2つ目の拠点である福島県浪江町。この土地に行ったことが無くても、この名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。そうです、忘れもしない2011年3月、東日本大震災の際、地震以上に原発事故の影響で町民が強制的に非難をせざるを得なかった町です。酒だけでなく町自体もゼロからの立ち上げ。そんな思いを伺うと、酒造りでお邪魔するのがより待ち遠しくなりました。

  • 縁側に座って笑顔を見せる男女5人

    haccobaのみなさん。中央が代表の佐藤さん

今回は佐藤さんが持ち込んでくださったクラフトサケをみんなでテイスティング。クラフトサケはどぶろくのように濾していないお酒なので、通常の日本酒と比較するとお米の甘みを感じやすいです。酸味や苦みを副原料で出すことで、クラフトサケの骨格がはっきりして個性が出てくるのだそう。またこの個性あふれる組み合わせには、クラフトビールやジン等の副原料も参考にしているとのことでした。通常の日本酒造りにはない副原料という要素で、商品ごとのコンセプトが全く違うものになるのも特徴的ですね!

  • テーブルに並べられた日本酒の瓶とお酒が入ったプラスチックカップ

    淡いにごりが美しいクラフトサケ。副原料の効果で見た目が似ていても、味は本当にバラエティに富んでいます

どんなコンセプトにしよう? 味わい? お酒がもたらす体験?

テイスティングしたhaccobaさんのクラフトサケの味わいやコンセプトも踏まえつつ、次はいしやまサブリーダーのリードのもとで各自が思うクラフトサケを考えていきます。検討する観点は5つ。

1.誰に飲んでほしいか?(ターゲットユーザー)

2.どんなシーンで?(体験シチュエーション)

3.どんな影響を与えたい?(体験価値)

4.どんなデザイン?

5.チャレンジできることは?

みなさん真剣に悩みながら意見を付箋紙に書いて、順に発表していきます。ある参加者は「日本酒初心者向けに、こんな日本酒もあるんだ! と日本酒に開眼してほしい」。他の参加者は「温度を変えたりフルーツいれたり、飲み手に遊び心がある酒!」。さらには「ゴットファーザーみたいな日本酒好きが飲む、食後酒みたいなダークなイメージの酒」、「日本酒に馴染みのない方も日本酒好きも、みんな一緒に楽しめる、周りとの会話を生み出すお酒(オジサマがお酒を武器にヒーローになれる酒)」、「日本や酒造りをする福島の食材を入れたい!」、「味覚はみんな違うから、各自が味の完成を決められるもの」など、本当に多種多様な意見が出てきます。参加者が他の意見を聞いて盛り上がる中、リーダーの森田さんとサブリーダーのいしやまさんが問いを入れてくれることで、各自の意見もどんどん進化していきます。1~5の観点のうち、参加者の重点を置く部分が味わいだったり、体験価値だったりと異なるのも面白いところです。

  • ホワイトボードに貼られた付箋

  • ホワイトボードに貼られた付箋のアップ

    付箋を使ってアイデアだし。他の人の意見から更なるアイデアが湧いてきます

参加者全員で議論を進める中で、下記の方向性に収斂していきました。

1.誰に飲んでほしいか?:オジサマ(日本酒好きの玄人というイメージ)

2.どんなシーンで?:夏にみんなでワイワイ、BBQや川で

3.どんな影響を与えたい?:このお酒をきっかけに周りと会話できる、日本酒の概念を変える

4.どんなデザイン?:常識を超える、挑戦的、日本を感じるもの

5.チャレンジできることは?:味わいの定義を各自が決められる

お互いに意見をすり合わせていく中で、共通のメインコンセプトに繋がるキーワードが浮かび上がってきました。
「未完成」「飲むたびに驚く」「味八分」「ゆとり・余白」「味わいを決めるのはあなた」「挑戦状」「欲望」「カブク」。
この8つのキーワードからメインコンセプトをみんなで投票して決めます。

最も得票数が多かったのは・・・「カブク」!歌舞伎の語源ともなる、思わず頭を傾けてしまうような常識はずれ、異様な様子を示す言葉です。

飲んだ方々に「え、これ、、、なんだろう?」と考え、それを元に周りと会話して、楽しみ方を模索していく、新しいクラフトサケの楽しみ方を提供するコンセプトになりました!

 

  • ホワイトボードに書かれたメモ

    長い長い議論を経て、無事にメインコンセプトが決定!参加者みんなのやりたいことを盛り込んでステキなコンセプトになりました。

次回は「副原料」選び!

第2回の講座は、今回決まったコンセプト「カブク」にふさわしい味わいを体現する「副原料選び」! 参加者のみなさんもそれぞれ副原料を検討し、どうしてそれを選んだのか? という理由とセットでプレゼンが出来るように準備して来ることが宿題となりました。それぞれ違った感性を持つ参加者のみなさんが、どのような副原料を考えてくるか楽しみですね。私もどこから考えようか、今から悩みます・・・

どんなCRAFT SAKEに向かっていくのか、みなさんも楽しみにお付き合いください!

  • モニターを見ながら打合せをする男女

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