日本酒の選び方に迷ったら? 味の違いや知識を増やしてもっと日本酒を楽しもう!
日本酒王子という名前で活動をはじめてから、日本酒に関する数多くのご質問をいただきます。中でもよくあるご質問が「美味しい日本酒に出会ったけど、なぜ美味しいと感じたのかが分からない」「より美味しい日本酒を自分でも探せるようになるにはどうしたらいいのか」といったご相談です。私も日本酒の味わいの違いがよりクリアになることで日本酒選びはもっと楽しくなると感じています。
そこで、本記事では日本酒の味わいの違いが何から生まれるのかということを、①原料の違い、②精米歩合の違い、③酒米の違い、④アルコール度数の違い、⑤酵母の違いの5点に絞って分かりやすくお伝えしていきます。よく言われる「甘口」と「辛口」の差についても説明していますので、日本酒の基本を知ることができて、今後の日本酒選びの参考にしていただけるはずです。ぜひここから始めていきましょう。
選び方① 原料の違い│お米と水だけで造られているか、醸造アルコールを使っているかで味わいの違いがある
日本酒は、お米とお水から造られている、ということはほとんどの方がご存じだと思います。しかし「純米大吟醸と大吟醸の違いって何?」と聞かれてパッと答えられる方は、そんなに多くないはずです。この答えを簡単に言えば、「醸造アルコールが加えられているかどうかの違い」なのですが、こういった原料の違いが日本酒の味わいの差につながります。
日本酒は原料の違いで大きく分けると、「純米酒」か「それ以外」か、に分かれます。基本的には原材料名に米、米麹、のみが書かれているものが「純米酒」、それ以外の醸造アルコール、酸味料、糖類といったものが書かれているものは「それ以外」にあたります。
純米酒は、お米とお水のみで造られているため、お米の持っている旨味を感じやすく、発酵によって産み出されたアルコールの透明感を感じやすいという特長があります。
一方で、「それ以外の日本酒」は、さらに、①本醸造酒(特別本醸造酒)、②吟醸酒(精米歩合の違いによって大吟醸酒も含まれる)、③普通酒の3つに分類されています。
この中で①本醸造酒と②吟醸酒が醸造アルコールが加えられたものなのですが、味わいにキレが生まれやすく、後味がキリっと引き締まるような印象があります。また普通酒の中には、醸造アルコールの他に酸味料や糖類を加えているものも多く、いわゆるパック酒にイメージされるような大衆的な日本酒を指します。
日本酒の種類についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください
選び方② 精米歩合の違い│米を何パーセント削るかで味わいが変わる
続いて、お米の磨き加減についてです。玄米で造られる日本酒も中には存在しますが、基本的に日本酒は玄米の外側を磨いて残った内側の部分を使って造られています。その磨いた後に残った内側の部分が玄米と比べて何%になっているかを表したものを「精米歩合(せいまいぶあい)」と言います。例えば、精米歩合60%というのは、玄米から外側の40%を磨いたお米のことです。
精米歩合の違いによる味わいの違いは大まかにいえば、「味の濃さ」に関わってきます。余り削っていない、精米歩合の高い日本酒(90%精米や80%精米など)は旨味をしっかりと感じられる濃厚な味わいになりがちですし、精米歩合の低い日本酒(50%精米や40%精米、それ以下)は透明感の高いクリアですっきりとした軽快な味わいになりやすいです。
選び方③ 酒米の違い│お米の産地や種類によって味わいの違いがある
日本酒に使われているお米の種類によっても味わいが変わってきます。大きく分けると、日本酒を造るための品種である「酒米(酒造好適米)」と、食べるために栽培される品種の「飯米(一般米)」の2つです。
酒米の特徴は、飯米よりも大きくてタンパク質や脂質の含有率が低く、心白(でんぷん質が多く、隙間の多い白濁した部分)が出やすいというところ。酒米を使った日本酒の方が、飯米を使ったものよりも上質で滑らかな味わいになりやすいと言えます。とはいえ、近年の醸造技術の向上によって、飯米を使用しながらも国際的なコンテストで輝かしい賞を受賞したお酒も出るようになりました。
また、一言で酒米といっても、山田錦、五百万石、雄町、美山錦など多くの県で栽培されているものから、揖斐の誉(岐阜県)や夢吟香(愛知県)、伊勢錦(三重県)、などといった県独自のものまで約120種類が存在します。
「バランスの取れたふくよかさと、品質の高さを最大限に表現できるのが山田錦」
「たくさん磨くことには向かないが、すっきりとした味わいになりやすい五百万石」
「オマチストという言葉もあるくらいファンも多く、分厚い旨味とボリューミーな味わいになりやすい雄町」
「繊細な香りと軽やかな味わいになりやすい美山錦」
といった具合に、酒米によっても日本酒の味わいは大きく変わってきます。
さらには、同じ酒米、例えば同じ山田錦でも、産地によって、もっと言えば栽培する農家によって味わいは変わってくるほど奥深いものなのですが、それ以降はかなり玄人寄りの内容になるので、ここでは酒米の種類で味が変わるということを覚えておいてください。
選び方④ アルコール度数の違い
日本酒のラベルには必ずアルコール度数が書いてありますので、アルコール度数から選ぶ、というのも比較的簡単な選び方です。日本酒のアルコール度数は15%~16%のものが多いのですが、アルコール度数が高いほど舌を刺すようなインパクトとキレの良さを感じます。一方で、アルコール度数が低いほど柔らかく優しい印象が出ます。
選び方⑤ 酵母の違い
最後は、少し難しい内容ですが、酵母による味わいの違いです。日本酒は、「お米に含まれるでんぷんを麹菌が糖分に変えながら、同時にその糖分を酵母がアルコールに変える」という世界でも珍しい高い技術が必要な並行複発酵という方法で造られています。
糖分をアルコールに変える役割を持つ酵母も、様々な個性のある酵母が存在していて、現在よく使用されているのが、6号酵母、7号酵母、9号酵母、14号酵母、18号酵母など、アルコールに対して耐性があり、香りの出方が良いものが選ばれる傾向にあります。
6号酵母は秋田の新政酒造の「新政」のもろみから生まれていて、バナナ系の香りが特徴的。7号酵母は長野の宮坂醸造の「真澄」のもろみから生まれ、濃厚でありながらキレの良さが特徴。9号酵母は熊本の「香露」から生まれ、酸味は穏やかな傾向になりやすいですが、華やかな香りを出したり、キレのあるドライな味わいを出したりと造り手によって大きく印象を変えます。別名金沢酵母と言われる14号酵母は、すっきりした味わいとマスカット系の香り。18号酵母は、パイナップルのような高い吟醸香と甘みが特徴的なお酒に仕上がります。
よくいう「甘口」「辛口」ってどういうこと?
「日本酒を飲むなら辛口」とおっしゃる方が多いように感じています。しかし、日本酒は基本的にお米とお水で造られる醸造酒なので、実はアルコール飲料全体から見ると甘口の部類に入ります。
一方で、焼酎やウイスキー、ジンなどの蒸留酒には旨味成分はなく、アルコール度数も高いため、辛口の分類に入るのです。
では、日本酒における「辛口」というのは何を指しているのかといえば、甘い分類である日本酒という醸造酒の中でも、比較的甘みを感じにくい、「ドライなお酒」といった意味合いで使われています。
もう少し詳しく知りたい方のために、甘辛を感じさせる4つの要素を簡単に紹介しておきます。
①お酒に含まれる糖分:お酒に含まれているグルコース濃度(糖分)がどれだけあるのか、がよりダイレクトに辛口に感じるかどうかに関わってきます
②酸度:高いほど舌をさす刺激になり、後味をキリっと切れ上がらせるのでドライに感じます。
③アミノ酸度:アミノ酸度を簡単に言えば旨味成分です。旨味が多ければ多いほど濃厚で、甘口に感じます。
④アルコール度数:アルコール度数が高いほど辛口に感じます。
簡単にできる日本酒選びが上手くなるコツ
それは写真を撮ることです。美味しいと思った日本酒の名前やお米の種類、原材料名やアルコール度数などを写真に残して、記録していきましょう。そして写真が増えてきたら、その共通点を探してみてください。きっと自分が好きになる日本酒には共通点があるはずです。
たとえば、華やかな香りのする純米大吟醸が好きなんだな、とか、アルコール度数が高い精米歩合の高い純米酒が好みなんだな、といった具合です。そして、また日本酒を選ぶ際には、その情報を参考にしてもらえると自分好みの日本酒に出会える確率はきっと上がると思います。
酒屋さんでオススメを聞くときも、「この前飲んだ山田錦の70%精米の純米酒が好きだったんですが、何かオススメはありますか?」というように聞いてみるのもおすすめです。また、オンラインショップで購入されるときには、できるだけ日本酒の情報が詳しく載っているショップを探して見てください。きっとそういうオンラインショップなら日本酒の管理もしっかりとしていて、良い日本酒に出会えるはずです。
日本酒王子があなたのお悩みを解決します
今後も日本酒について、日本酒王子こと近藤悠一に聞いてみたい、相談したい、ということがありましたら、質問をお寄せください。SAKETOMOの中でお答えをさせていただきます。
今回のような選び方についてのご質問はもちろん、日本酒に関する疑問、おすすめの飲み比べ方法、または日本酒のペアリングに関するアドバイスが欲しい等々、どんな些細なことでも結構です。日本酒にまつわるあらゆるテーマに対応しておりますので、どしどしご質問をいただけるととても嬉しいです。皆様の日本酒ライフをより楽しくできるよう精一杯お答えさせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
日本酒の質問はこちらまで saketomo-info@tv-aichi.co.jp
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