ワイン酵母で醸す日本酒の新境地―― ブルゴーニュの名門シモン・ビーズ×花の舞酒造「hananomai bize」誕生 【記者発表会レポート】

  • 木のテーブルに乗る日本酒ボトルとグラス

2025年3月19日、東京・九段会館テラスにて、花の舞酒造とフランス・ブルゴーニュの老舗ドメーヌ※「シモン・ビーズ(Domaine Simon Bize & Fils)」が共同開発した日本酒「hananomai bize(花の舞ビーズ)」とスパークリングタイプの「花の舞スパークリング」の記者発表会が開催されました。

  • 並んでいる女性1名と男性2名

    左からシモン・ビーズ オーナー千砂・ビーズ氏、花の舞酒造 代表取締役・高田謙之丞氏、商品開発部 課長・山口晃氏

当日は、花の舞酒造 代表取締役・高田謙之丞氏、商品開発部 課長・山口晃氏、そしてシモン・ビーズのオーナーである千砂・ビーズ氏が登壇。それぞれの立場から、今回のプロジェクトに込めた想いや開発の背景について語られました。

 この2種類の酒には、シモン・ビーズの蔵付きワイン酵母「ぺリエール・ワン」を使用。日仏の酒文化を横断する取り組みとして、既存の日本酒の枠を越える革新性が注目を集めています。なお、今回の記事では、特に「hananomai bize」に焦点を当て、その開発背景と味わいを詳しくご紹介します。

※「ドメーヌ(Domaine)」は、フランスのワイン業界で「自社畑でぶどうを栽培し、醸造・瓶詰めまで一貫して行う生産者(ワイナリー)」のことを意味します。

<商品情報>「hananomai bize」と「花の舞スパークリング」

  • 日本酒ボトルが2本並んでいる

    左から「hananomai bize」、「花の舞スパークリング」

◆hananomai bize(ハナノマイ ビーズ)

・原材料:米(静岡県産山田錦100%)、米こうじ(静岡県産山田錦100%)

・酵母:シモン・ビーズ ワイン酵母「ぺリエール・ワン」

・精米歩合:50%

・アルコール度数:12%

・カテゴリー:純米大吟醸 無濾過生原酒

・内容量:720ml

・価格:3,850円(税込)

・保存方法:要冷蔵

 

◆花の舞スパークリング

・原材料:米(静岡県産)、米こうじ(静岡県産米)

・酵母:ブルゴーニュワイン酵母、二次発酵/「ぺリエール・ワン」

・精米歩合:60%

・アルコール度数:12%

・カテゴリー:原酒 瓶内二次発酵(活性にごり)

 ・内容量:720ml

 ・価格:2,750円(税込)

 ・保存方法:要冷蔵

シモン・ビーズ(Domaine Simon Bize & Fils)について

  • 微笑んで並んでいる男性2名と女性1名

  • ワイナリー

「シモン・ビーズ」は、1880年から続くフランス・ブルゴーニュ地方サヴィニー・レ・ボーヌ村に拠点を構える、歴史ある家族経営のドメーヌです。自社の畑でぶどうを育て、醸造から瓶詰め、ラベル貼付までを一貫して行う生産スタイルは、ブルゴーニュ地方で特に重んじられており、高い品質と信頼性を誇ります。

現オーナーの千砂・ビーズ氏は、もともと東京の銀行に勤務していましたが、ブルゴーニュに渡り、ワイン造りの世界へと転身。夫である故パトリック・ビーズ氏とともに、オーガニックやビオディナミ農法の導入を進めてきました。現在は、亜硫酸無添加によるワイン造りにも挑戦し、伝統を大切にしながらも革新を取り入れたスタイルで注目を集めています。

花の舞×ワイン酵母~プロジェクトのはじまり

  • マイクを持ち、スピーチをする女性

    プロジェクトの経緯について語るシモン・ビーズの千砂・ビーズ氏

この取り組みが始まったのは、シモン・ビーズの現オーナーである千砂・ビーズ氏が、静岡県浜松市に縁があったことからです。

千砂氏:「父が浜松市浜北の出身でして、私も小さなころから長期休暇に祖父母の家でよく過ごしていました。我が家はお正月には必ず花の舞を飲んでいたので、非常に親しみ深いお酒でした。さらに数年前に両親が東京から故郷である浜北に居を移したこともあり、花の舞酒造さんに連絡をして、試飲させていただいたことがありました。そのときはそれだけで終わりましたが、帰国後、改めて花の舞酒造さんから『こういったお酒をつくりたい』というご連絡をいただき、非常に興味深くお受けしました。」

 もともと花の舞酒造では、ブルゴーニュ由来のワイン酵母を使用した日本酒造りに取り組んでおり、すでに商品としても出荷されていました。そうした経緯もあって、やがて「シモン・ビーズの蔵付き酵母を使って日本酒を造る」というアイデアが花の舞酒造から千砂氏に持ちかけられたのです。

  • ぶどう畑で日本酒の香りを嗅ぐ男性

    シモン・ビーズのぶどう畑に立つ花の舞酒造 代表取締役・高田謙之丞氏

ワイン酵母の選定と試験醸造

  • 酒づくりをしている男性

今回の酒づくりは、2023年末にフランス・シモン・ビーズから提供されたワインサンプルをもとにスタートしました。提供されたのは、赤ワイン(ピノ・ノワール)と白ワイン(シャルドネ)の2種類です。

このワインから、静岡県の沼津工業技術センターと連携して酵母を分離・培養。通常、酵母は醸造所などから取り出すことが多いのですが、今回は完成されたワインそのものから酵母を取り出すという、確実な手法が取られました。複数の候補の中で、特に優れた発酵力と香りの個性をもっていたのがシャルドネ由来の酵母「ぺリエール・ワン」です。

「アルコールや酸への耐性が高く、これまでに扱ってきた酵母とは明らかに香りの出方が異なりました」と語るのは、花の舞酒造 商品開発部の山口晃課長。この酵母を用いた酒造りは、まったく新しいチャレンジでした。

 2024年3月には試験管での保存培養(スラント)が完了し、4月末には初回の試験醸造へ。その後、7〜8月には静岡県産山田錦を使用した本格仕込みが始まりました。

試作と調整を重ねるなかで、日本酒としてのバランスも徐々に完成。約1年3か月の開発期間を経て、2025年3月に商品化されました。

酵母はワンとニャン?!(記者との質疑応答より)

  • 記者会見の様子

    記者やソムリエなどが集まり、活発な質疑応答が行われた記者発表会の様子。

Q. 使用したワイン酵母の種類について、詳しく教えてください。

千砂氏:「シャルドネとピノ・ノワールの2種のワインを花の舞酒造に送りました。そこから分離された2つの酵母は、シャルドネが【ペリエール・ワン】、ピノ・ノワールが【ペリエール・ニャン】とつけさせていただきました(笑)。ワンの方は非常に私の中で縦線(酒としての骨格)がしっかり出てくる個性のあるタイプで、ニャンの方はちょっとニャンって言葉の響き通りで横の広がりを感じるものでした。シャルドネというブドウ品種は、非常に適応能力が高く、世界中のさまざまな地域で栽培されています。そして個人的に思うのは、シャルドネは“個性が少ない品種”であるからこそ、土地の特徴や造り手の哲学が色濃く反映される、とても奥深いブドウだということです

今回も、酵母の適応力の高さに加えて、花の舞酒造さんの技術力と個性が、しっかりと仕上がりに表れていると感じています。ですので、今回の酒づくりにおいて、シャルドネの酵母はまさにぴったりの存在だったと思います。」

  • テイスティングをしている女性

    花の舞酒造にてテイスティングを行う千砂氏。

Q. 発売日と販路について教えてください。

花の舞酒造 山口氏:「発売は2025年3月27日、出荷はすでに始まっています。販路としてはワイン専門店や百貨店を中心に展開していく予定です」

ジャンルを超えた一歩、新たな酒の可能性

  • 日本酒ボトルが3本並んでいる

    左から「hananomai bize」「花の舞スパークリング」、シモン・ビーズのワイン「Shiro Blanc」

「hananomai bize」は、これまでのどの“ワイン酵母を使った日本酒”とも一線を画す、完成度の高い味わいに仕上がっていました。やさしくも芯のある酸が立ち上がり、重厚さと複雑さが同居する、見どころの多い一本です。ワインと日本酒、それぞれの魅力を過不足なく兼ね備えながら、どちらとも異なる、新しいカテゴリーとしての可能性を感じさせます。

これは単なる“ワイン酵母の日本酒”ではなく、ジャンルを超えた“新たな酒”と呼ぶにふさわしい存在です。無濾過生原酒だからこそ感じられる、この繊細で伸びやかな味わいは、火入れを前提とした商品化においては、また異なる挑戦になるはずですが、今後の展開にも大いに期待したいところです。

海外市場やワインファンにとっても、この酒が持つストーリー性とテロワール、そして新酵母による味わいの革新は強く響くはずです。花の舞酒造によるこの挑戦が、日本酒の可能性を広げる一歩となることを願ってやみません。

花の舞酒造について

花の舞酒造は、1864年(元治元年)創業の老舗酒蔵です。160年を超える歴史を持ち、現在では年間約4000石(約72万リットル)を醸す、県内最大規模の蔵として知られています。静岡県産の原料に強くこだわり、酒米はすべて地元契約農家から仕入れるほか、仕込み水には天竜川水系の豊かな伏流水を使用。地域の恵みを活かした酒造りを通じて、地元農業との共存や雇用の創出にも貢献しています。

花の舞酒造株式会社
本社所在地:静岡県浜松市浜名区宮口632

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