若き日本酒ベンチャーと老舗酒蔵が手を組んで造り上げたハイブランド日本酒「YUEN 広島呉」 ワインに代わる「食中酒」を目指した理由とは

日本酒ブランド「YUEN 広島呉」とは

  • 白いラベルの日本酒とワイングラス

「YUEN 広島呉」は、日本酒ベンチャー・株式会社エノク(東京都千代田区)が、広島県呉市で130年以上の歴史を持つ酒蔵・盛川酒造株式会社とともに醸造する新しい日本酒ブランド。広島県で開発された温暖化耐性のある新品種の酒造好適米「萌えいぶき」を全量使用するなど、米・水・酵母といった原料全てを100%広島県産にこだわった新しい日本酒です。

  • 稲田の中に立つ男性2人

    株式会社エノク 代表取締役 猪子友彪さん、盛川酒造代表 盛川知則さん

2024年4月にブランドサイトが立ち上がり本格的な販売がスタートした「YUEN 広島呉」。早速、国内外の品評会・コンテストでも高く評価され、注目を集めています。そこで今回は、「YUEN 広島呉」を立ち上げた株式会社エノク 代表取締役 猪子友彪(いのこ ともひろ)さんに、開発の経緯やお酒の特徴、今後の目標などについてお話をお伺いしました。

日本酒ブランド「YUEN」を立ち上げた理由

大学時代から日本酒好きだったという猪子さん。卒業後は4年間大企業に勤めていましたがコロナ禍で飲食店や酒蔵が苦しんでいる状況を知り、「日本酒業界のために何かしたい」と決意。2022年12月に株式会社エノクを立ち上げ、自社ブランドの日本酒を造ることを目標に事業をスタートします。

猪子 自分の中心にあるのは日本酒が好きだということです。立ち上げ当初は酒蔵さんとのコネクションも少なかったので、日本酒造りを始める前に関東近郊で行われる日本酒イベントをまとめたウェブサイト「東京酒カレンダー」の運営をはじめました。このサイトの運営を通じて東京などでイベントを開催する酒蔵さんから連絡を頂けるかなと思ったからです。今では毎月多くのお問い合わせを頂けるようなサイトにまで成長しました。

その「東京酒カレンダー」を通して縁が結ばれた酒蔵が、広島県呉市の盛川酒造でした。

猪子 盛川酒造さんとは東京にある広島県のアンテナショップで行われていた試飲会イベントに足を運んだ際に知り合いました。その時試飲した日本酒が美味しくて酒質も自分好みだったので、YUENの製造を委託出来ないかと提案させていただいたところ、盛川酒造の社長さんから前向きなお話を頂くことができました。杜氏として酒造りを担っている社長の弟さんからは最初は厳しい声も頂きましたが、何度か蔵に足を運んで思いを伝え続けたところ、「じゃあ、やろうか」とおっしゃっていただけました。

ワインのように食中酒として楽しめる日本酒を

「YUEN 広島呉」のコンセプトは「食の恋人」。まるで相思相愛の恋人のように、食事に寄り添い、食事に愛される日本酒を目指して造られています。

猪子 日本酒の需要が下がっている中で、どうしたら日本酒を知ってもらえるのか、飲んでもらえるのかということを考えた時に、目標として挙がったのが食中酒として楽しまれるワインでした。そのため、YUENはフレンチやイタリアンとともに食中酒としてオシャレに楽しめるような日本酒ブランドを目指しています。

  • お猪口グラスに日本酒を注ぐ

食中酒としての飲みやすさを実現するために、「YUEN 広島呉」はアルコール度数を13%と一般的な日本酒に比べて低く設定し、スムーズな余韻とキレの良さを実現。料理とともに楽しめるよう香りは穏やかで、甘味、酸味、旨味、清涼な苦味がバランス良く、軽快でありながら多層的な味わいを楽しめます。

猪子 原料米は広島県で開発された新品種の酒造好適米「萌えいぶき」を100%使用しています。ちょうど「萌えいぶき」が酒造りに使えるようになった初年度で、ブランドのオリジナリティにもなると選びました。盛川酒造さんにとっても初めて使う酒米で、かなりのリスクを負って挑戦いただきました。

  • 稲穂

    萌えいぶき

酵母には広島県生まれの「令和一号酵母」を使うことで、若い白桃を思わせる上品な香りを実現。盛川酒造が酒造りに用いてきた軟らかな地下水と、長年にわたり培ってきた酒造りの技術により育まれた「YUEN 広島呉」は猪子さん自身も驚くほどの美味しさになりました。

猪子 最初のサンプルを会社のメンバーみんなで試飲したのですが、自分たちの想像を超える非常に良い出来の日本酒に仕上がっていました。「萌えいぶき」の親である雄町と同じようにお米のふくよかさを感じることができ、13%という低アルコールでも薄っぺらな味にはならず、しっかり味わいがのっていました。本当に期待以上でした。

  • テーブルの上に料理と日本酒が並ぶ

    フレンチレストランで開催されたペアリングイベントも大好評

若きベンチャーと老舗酒蔵による新たな日本酒の取り組み

株式会社エノクにとって初の自社ブランド商品となる「YUEN 広島呉」。現在は直営のオンラインショップを中心に販売を行っており、一部の飲食店での取り扱いも始まっています。

猪子 「YUEN 広島呉」は1本1万円と高価格帯の日本酒になりますが、実はギフト向けなど、この価格帯の需要が一番高いんです。まずは国内向けに販売して認知を得てから海外向け販売も目指していきたいと思っています。

  • 日本酒のラベル

エノクと盛川酒造のタッグによって生まれた「YUEN 広島呉」。メディアやSNSでの露出が増えたこともあり、エノクだけではなく、盛川酒造の新しい取り組みとしても認知が進んでいます。猪子さんによると、 “食中酒”として美味しく楽しめる日本酒「YUEN」を今後も全国の小規模な酒蔵とともに造っていきたいとのこと。若きベンチャーと老舗酒蔵による新しい取り組みにこれからも注目です。

商品情報

アルコール度数 13%
原料米     萌えいぶき100%
精米歩合    50%
内容量     720ml
製造者     盛川酒造株式会社(広島県呉市安浦町原畑44番地)

販売価格    11,000円(税込)

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