「白老(はくろう)」澤田酒造は古さと新しさを併せ持つ知多半島の個性豊かな酒蔵~SAKETOMO的酒蔵見学・愛知編④~

愛知の個性豊かな酒蔵を紹介する「SAKETOMO的酒蔵見学・愛知編」の4回目に訪問したのは「白老」などの銘柄で知られる愛知県常滑市の澤田酒造。

175年の歴史を持つ老舗の酒蔵が醸す濃醇旨口のしっかりとした日本酒は、地元を中心に多くの日本酒好きから支持されてきました。明治時代には現在の日本酒造りに欠かせない「速醸法」の礎となった技術開発にも大きく関与した澤田酒造。現在は6代目の澤田薫さんが「古式伝承」しながらも「進化」を続けるという代々のDNAを受け継ぎ、若い蔵人とともに酒造りに取り組んでいます。

そこで今回は、澤田酒造が伝承してきた知多半島ならではの酒造りに対する思いや信念、そして未来に向けた新しい試みについて、澤田薫さんにお話をお伺いしました。

  • 酒蔵の前にたつ夫婦

    「白老」澤田酒造の酒造りを伝承する6代目・澤田酒造代表取締役社長 澤田薫さんと夫の英敏さん

「白老」澤田酒造株式会社(愛知県常滑市)
https://hakurou.com/

目 次

現代における日本酒造りの基礎技術の開発に大きく関与した「白老」澤田酒造

古くは常滑焼の産地として、江戸時代には海運の拠点としても栄えていた知多半島・常滑の地で嘉永元年(1848年)から酒造りを始めた澤田酒造。「米を丁寧に扱い、白く美しくなるまで丁寧に磨く」という意味の「白」の文字に、澤田酒造のお酒を飲んだ人たちに長生きして欲しいという「不老長寿」に対する思いや「老練の技」を表す「老」の文字を合わせた「白老」という銘柄には、初代の澤田儀平治から受け継がれた酒造り対する真摯な思いが込められています。

澤田さん

常滑のある知多半島は比較的温暖な気候ですが、酒造りを行う冬には「伊吹おろし」と呼ばれる冷たい風が伊勢湾を渡って吹き下ろします。この冷たい伊吹おろしを取り込んで蔵を効率よく冷ますことができるよう、澤田酒造は西北が角になるように建物が逆L字型に配置されています。この逆L字型の構造は知多半島の酒蔵によく見られる特徴の一つです。

  • 海の近くの町並み

    現在の澤田酒造(手前が南、奥側が北) 現在も西側と北側の建物で酒造りが行われている

尾州廻船の拠点として栄えていた知多半島は、江戸時代には海運の機動力を生かしていち早く江戸に日本酒を届けられたことに加え、徳川御三家筆頭である尾張藩からも厚い庇護を受けられたこと、さらには酒造りに必要な良質の水や米、さらには労働力の確保もしやすかったことなどから日本酒造りがどんどんと拡大しました。江戸時代後期から明治初期には灘に継ぐ「酒どころ」と言われるほどの規模にまで成長し、最盛期である明治4年には227軒もの酒蔵が知多半島にあったと記録が残っています。 

しかし、明治維新の影響や運送の主役が帆船から蒸気船、さらには鉄道へと移り変わっていったことで、知多半島の酒造りに陰りが見られるようになります。

 そうした厳しい環境の変化に対応すべく知多半島の酒蔵が手を取り合って組織したのが「豊醸組」。知多酒の生き残りをかけ、醸造技術の改良へと取り組みます。その中で澤田酒造3代目の儀平治が酒蔵内に豊醸組指定の醸造試験場を設置。大蔵省から江田鎌次郎技師を招聘し、醸造学校の設立や技術開発に取り組みました。

澤田さん:当時の酒造りで最も恐れられていたのが「腐造」、仕込んだ原料がお酒にならずに腐ってしまうことでした。ひとたび「腐造」が起これば、場合によっては経営に致命的な影響も及ぼしかねません。

そのため3代目の澤田儀平治は「腐造」を防ぐための研究を江田鎌次郎技師とともに進め、乳酸添加による酒母造りを行う技術を開発します。この技術が基礎となり、現代の日本酒造りのスタンダードとなっている「速醸法」へと発展しました。

明治時代に澤田酒造を含む知多の酒造家たちの力を結集して開発が進められた「速醸酛」の技術が基礎となって現代の高品質な酒造りへと繋がっていることはとてもすごいことだと感じています。もう一度スポットライトが当たって欲しいと思っています。

  • 書簡

    豊醸組の会長を務めていた澤田儀左衛門から当時の大蔵大臣である若槻礼次郎氏へ送った書簡

日本酒の歴史に残る大きな技術革新の舞台となった澤田酒造を現在受け継いでいるのが6代目の澤田薫さん。一人娘として生まれた澤田さんですが、両親からは「酒蔵を継ぎなさい」と言われることはなかったそうです。

澤田さん:英語が好きだったので英語系の大学に進学したのですが、大学生の時に「るみ子の酒」で知られる森喜るみ子さんの呼びかけで始まった「蔵女性サミット」に参加したときに、会場に集まった女性の酒造家さんたちがすごく輝いて見えたんです。加えて、もともと「食」が好きで食文化を追求していきたいと思っていたので「日本酒文化を守っていくこと」がそれに繋がると気がつきました。

日本酒にとって厳しい時代が長く続き、知多の酒蔵もどんどん減少。澤田酒造でも先々代から先代に変わるタイミングで廃業しようかという話もあったそうです。そうした中で、仲間の酒造家たちから「木の甑(こしき)や麹蓋(こうじぶた)など、古くから残してきたものが差別化になる」と励まされ、方針を転換。「古式伝承」を掲げ昔ながらの製法での酒造りを進めながら、酒蔵開放をはじめとした新しい試みにも積極的に取り組むようになります。

澤田さん:酒蔵として残っていること自体が不思議なぐらい経営が厳しい状態が続いていますが、「おいしいお酒を造りたい」という一心で酒造りを行っています。そういう厳しい業界の中で生き残っていくためにはめまぐるしく変わっていく環境についていかなければなりません。それには若い人の柔軟な考えが必要だと考えていた父が「自分が元気な今のうちに交代した方がいい」と早いタイミングで社長を私に引き継ぐことになりました。

澤田さんが父から社長の座を受け継いだのは2007年、なんと2人目のお子さんを出産したわずか2ヶ月後でした。社長を継いだばかりのころは授乳をしながら商談をしたこともあったとのこと。今は先代である父の思いと昔ながらの製法を受け継ぎながら、若き蔵人たちとともに酒造りを行っています。

  • インタビューに答える女性

    インタビューに答える澤田薫社長

「古式伝承」が合い言葉 「白老」の造りへのこだわり

澤田酒造を代表する銘柄「白老」はどのようなお酒でしょうか?

澤田さん

澤田酒造は伝統的な知多酒の系譜を継いでおり、「白老」もこの地域で造られる味噌やたまりなどの濃くて強い味わいに負けない、お米の旨味を生かした濃醇で旨口の酒となっています。現在は普通酒から大吟醸まで幅広く造っていますが、普通酒は焼きものの職人さんたちが釜で火を焚いて汗をかいた後に飲みやすい甘口のお酒である一方、本醸造は「からから」という名前からも分かるように辛口のお酒となっています。 

またこの他に吟醸酒や大吟醸も造っていますし、日本で最初に商品化された生酒である「蔵人だけしか飲めぬ酒」や、純米吟醸の熟成酒なども手がけています。

  • 棚にずらりと並ぶ日本酒

酒造りには「米」と「水」が欠かせませんが、米についてのこだわりをお聞かせください。

澤田さん:現在は取り扱うお米の半分が愛知県産のお米になりました。その中でも、常滑市を中心とした知多半島の契約農家には酒造好適米の「若水」と「夢吟香」を主に生産してもらっています。このうちの「若水」は平成15年頃から作ってもらっていますが、軟質で溶けやすいという特徴が味のある知多酒の特徴と相まって、白老らしいお酒になっています。純米酒にも「若水」を使っています。 

残りの半分は兵庫県東条の山田錦や広島県産の八反錦・千本錦、富山や福井の五百万石など愛知県産以外のお米です。特に五百万石は普通酒や本醸造「からから」の麹米として利用しています。東条の山田錦も広島の八反錦や千本錦もとても美味しいお酒ができるので、各地のお米の特長を生かしながら使い続けています。この辺りではあまり使われていない八反錦や千本錦を使うのも、珍しいものや変わったものにすぐに飛びつくという先々代から受け継いだ伝統の系譜にあると言えるかも知れません(笑)

仕込み水はどのように確保されているのでしょうか?

澤田さん:蔵から2kmほど離れた山の中に水が湧き出るところがあり、そこから私設の水道を通じて仕込み水を確保しています。

 澤田酒造がある辺りは地層が複雑に入り組んでおり、湧き出ている場所によって水質が変わるという特徴があります。メインで使っている水は軟水でまろやかな味わいなのですが、これとは別に中硬水の水が採れる井戸も持っており仕込みのタイミングに合わせて使い分けています。中硬水の井戸水は酵母が元気に働いてくれるので、酒母造りに使っています。

幸いにもこの水が涸れることは今まで一度も無く、創業のころから変わらず清浄な水が確保できているのは本当にありがたいことだと実感しています。空も海も山も水で繋っていますが、その循環の中にある水の一部がお酒に変わり、それを頂くことで人間も自然の営みの一つなんだと思ってもらえればうれしいですね。将来的には米も酵母も同じものを使った「水違い」のお酒を造って飲み比べてみたいなと思っています。

  • 木桶に注がれる水

    江戸時代から使い続けている仕込み水 2kmほど離れた水源から私設の水道で蔵まで送られている

澤田酒造の酒造りにおいては「古式伝承」という言葉がキーワードとなっていますが、特にどの辺りに特徴があるのでしょうか?

澤田さん澤田酒造の酒造りの中で一番特徴的なところは「木甑」と「麹蓋」だと思います。 

「甑(こしき)」とはお米を蒸すための大きな器のことで、澤田酒造では木製の甑を今でも使い続けています。木製の甑の良いところは断熱性や保温性に優れていてしっかり蒸すことが出来ること、温度上昇が緩やかなので全体を均一に蒸し上げることができること、そして木の調湿効果によって余分な水分が米に移りにくく、いわゆる「甑肌※」ができにくいという多くの利点があります。一言で言えば、今でも木甑を使っているのは「良い蒸しが出来るから」ということになりますね。 

ただ、木甑を使うと燃料がたくさん必要になり効率が悪いというデメリットもあります。特に燃料代が上がってしまうとコストアップの要因になってしまうのが大変ですね。 

現在使っている木甑は半田の職人さんに作ってもらったもので、数年前に堺の職人さんに修理をしてもらいました。樽職人さんは非常に少なくなっているのですが、灘などでは木桶の職人さんを育てる木工所が立ち上がっており、今後はそちらに修理を頼んでいければと思っています。 

※甑肌:甑と接している部分の蒸米が表面についた水分を吸って柔らかくなってしまうこと

  • 古い木桶

    現在使用している木甑 写真左奥にあるバナー釜の上に載せて米を蒸し上げる

澤田さん:もう一つの「麹蓋」は麹造りに使われる小型の容器のことで、江戸時代の中期頃にはこの麹蓋を使った麹づくりが既に行われていたそうです。麹造りに使われる容器としては最も小型で、麹菌をまぶした米を少量ずつ小分けして棚に置いて冷ますことで均一に製麹することができます。 

澤田酒造でも200~300枚の麹蓋を使っていますが、手仕事も多く手間がすごくかかります。普通酒から大吟醸まで一貫して麹蓋を使った酒造りを行っているのは愛知県内では澤田酒造だけ、全国でも数えるほどしかありません。それでも、麹蓋を使うことで総破精(そうはぜ)型と呼ばれるしっかりとした麹となり、澤田酒造が目指す濃醇で旨味のあるお酒を造ることができると考えています。職人たちも心を込められるとやりがいを持って取り組んでいます。

澤田酒造では、2020年11月に酒造りの要ともいえる麹室が火災により全焼するという大きな出来事がありました。当時のことをお聞かせいただけますでしょうか?

澤田さん:麹室の火災は麹室を温めるために張り巡らされていたヒーターワイヤーという電線がショートしてしまい、火災となってしまいました。ヒーターワイヤーは火災の原因となりやすい箇所のため、その年も漏電のチェックなどをやっていたのですが、残念ながら火災に繋がってしまいました。 

幸いだったのは火災に気がついたのがお昼だったことです。午後1時ぐらいに火災を発見した蔵人の社員が血相を変えて報告にきてくれたのですが、たまたまその時消防団員をしている幼なじみが20年ぶりぐらいにお酒を買いに来てくれており、すぐに火を消し止めることができました。 

とはいえ麹室は焼けてしまいましたので、正直最初は頭が真っ白でしたし、「これはもう、つぶしちゃたな……」と思いました。ただ、麹室があったのが耐火構造の建物の中だったため、酒蔵の他の箇所や原材料、種麹なども無事でした。

火災の翌日に「義侠」の山田社長が駆けつけてくれて「麹さえ何とかなれば酒造りができる、とにかく麹をなんとかしなさい。ウチに造りに来なさい」と言ってくださり、山忠本家酒造さんの場所とお力を借りて麹造りをさせてもらえるようになりました。他にも杜氏同士が専門学校時代に同級生だったという縁から「蓬莱泉」の関谷醸造さんにもお願いすることができましたし、同じ知多にある「ほしいずみ」の丸一酒造さん、「るみ子の酒」の森喜醸造場さんにも助けていただきました。こうして皆さんが支えてくださったおかげで、年明けの1月20日から酒造りを再開することができました。本当に感謝しかありません。

再建した麹室は、火災以前と同じような形とされたのでしょうか?それとも以前とは違いがあるのでしょうか?

澤田さん:せっかく新しく麹室を建てることになったのだから最良のものを建てようということで、日本で唯一麹室を専門に手がけられている栃木の日東工業所さんに相談し、再建を進めました。実は従来の麹室は部屋が1つしか無く、麹をまぶす床の部分と、保湿して包む部分と、棚に入れて乾燥させる部分が同居しているような形でした。保湿と乾燥を同じ場所でやるのは厳しいですよね(笑)
新しい麹室では区画が4つに分かれるようにして、それぞれの区画ごとにして温度制御ができるようにしました。温度制御もより安全なプレートヒーターを採用しています。この他、吟醸用には吟醸向きの麹ができるように吟醸用の棚室を設置し、また、冷蔵の除湿機を導入した出麹室という場所も設けて、より高品質な麹造りができるように体制を整えました。

 麹蓋での麹造りを行うために麹室は木造で再建していますが、その中でも現代的な技術は随所に取り入れて「ほどよく最新」の麹室となりました。

木造で麹室を再建されたとのことですが、新しい木造の建物だと特有の香りが出てしまうこともあるかと思います。その辺りはいかがでしょうか?

澤田さん:めちゃめちゃ出ています(笑) 「樽酒だね」と言われてしまうこともありますし、鑑評会では木の香りはオフフレーバーとされてしまっています。いろいろと対策はしているのですが、香りが落ち着くまでにはもう少し年数が必要となりそうです。 

とはいえ、一般のお客様には「すこし木の香りがしているね」と楽しみながら飲んで頂けているので、コンテストには通らなくても美味しいと楽しんでもらえていればいいかなと思っています。

  • 麹室

    火災後に再建した麹室 再築時に安全面と品質面の両面を向上させ「ほどよく最新」となった

古きを守るだけではない、新しい挑戦

「古式伝承」を掲げる澤田酒造ですが、現在も様々な新しい取り組みを行っています。その一つである「減農薬栽培による地元での酒米作り」はどのような経緯から始まったのでしょうか?

澤田さん

知多の契約農家との酒米栽培の取り組みは平成15年からスタートしました。生産量を増やしていく中でお互いのリスクを減らしていくために、酒蔵側は5蔵、契約農家も複数に増やしていき、減農薬で高品質な知多の酒米を作ってもらうことができています。農家さんがいてこその酒蔵ですので、良い酒米を作ってもらえるのは本当にありがたいことだと思っています。 

ただ、スタートから20年経って契約農家さんたちも高齢化が進んできました。酒蔵は近年代替わりが進んでいますが、農家は代が変わるところの方が少なく、今後については課題があると感じています。

酒粕を飼料として使う取り組みもされています。こちらはどのようなものなのでしょうか?

澤田さん南知多で知多牛を育てている大岩さんという農家と4年前程から酒粕の飼料化を進める取り組みを始めました。この周辺はかりもり漬けなどが盛んなので酒粕が多く消費されてきたのですが、高齢化などの影響もあり、だんだん酒粕が余るようになってきました。廃棄するとしてもコストがかかってしまいますしどうしようかと悩んでいたのですが、ちょうどそのタイミングで大岩さんと出会い、手間をかけて酒粕を発酵飼料に変えて活用頂く事が出来ました。現在では知多牛の他にも名古屋コーチンや知多豚にも酒粕を使った発酵飼料が広がっています。

 そこから活動が広がり、酒粕を使った発酵飼料を食べて育った牛豚鶏とお酒のペアリングを楽しむことができるギフトカタログも出来る運びとなりました。地域で酒粕を循環させながら、畜産家や精肉店さんが新たな付加価値を与えてくれています。

酒粕で育った牛や豚や鶏と日本酒、合わないわけがないですよね! また地域との取り組みの一つとして、澤田酒造さんでは地域の特産である梅を使った「白老梅」の製造にも力を入れています。「白老梅」はどのような経緯から誕生したのでしょうか?

澤田さん:「白老梅」は父が開発した梅酒です。常滑の北、知多市の佐布里地区で明治時代から地元の農家が造り出してきた「佐布里梅を復活させようという動きが始まり、20年程前にはある程度の量が採れるようになってきました。ちょうどその頃澤田酒造でも日本酒ベースの梅酒を造ろうという機運が高まり、地元で採れる「佐布里梅」を使うことになりました。

「白老梅」は江戸時代の書物である「本朝食鑑」にかかれていた当時の梅酒造りのレシピを忠実に再現する形で造られています。例えば、澤田酒造の田んぼで採れた「若水」の藁を燃やしてわら灰を作り、このわら灰を入れた水に梅を浸して梅のアク抜きを行っています。梅は佐布里梅の青梅、お酒も「本朝食鑑」のレシピに従って「白老梅」のために醸造した純米吟醸酒の古酒を使っています。また、氷砂糖には北海道のてんさい糖を原料として2週間以上かけて自然結晶させたロックと呼ばれるものを使っています。 

澤田酒造はこれまでも知多半島の自然の恵みを生かした酒造りを行ってきましたが、「白老梅」でも改めてそうした動きに繋がっているかなと思います。

  • 梅酒の瓶

    地元知多の「佐布里梅」を使い、江戸時代の製法を再現した澤田酒造ならではの「白老梅」

今年から始まった「ガストロノミー」分野での取り組みについてもお聞かせ下さい。

澤田さん:澤田酒造では秋の蔵まつりというものを開催していて、こちらでは愛知や知多半島の発酵や醸造をテーマとして催しを行ってきました。今年はそれとはまた別の角度から知多の恵みの豊かさを知ってもらいたいと企画したのが「知多のガストロノミーを楽しむ会」です。 

知多半島は農畜産物があり、海産物もあり、歴史もあって、醸造文化もあるという、日本の中でも本当に豊かで恵まれた場所だと思っています。ガストロノミーというと高級な美食というイメージですが、土地に連綿とつながっていくようなことを大事にするというのもガストロノミーの一つです。お酒というよりも広く食という括りとなりますが、地元の生産者さんや料理人さんと一緒に新しいことをやったら楽しいんじゃないかなということで企画しました。 

今後も日本酒で楽しく時間を過ごして頂けるように、様々なことをやっていきたいです。自分たちが大事だと思うものを残していけるように周りの方々と一緒に歩みながら無理なく永続的に生業が続くように、みんなが誇りに思えるようなことをやっていきたいです。

蔵元としては「白老」「白老梅」はどのような飲み方で楽しんで欲しいと考えていますか?

澤田さん:「白老」はいろんなバリエーションのものを作っているので、それぞれに合わせた楽しみ方が出来ると思います。お燗に合うものも多いですし、生酒などは冷やして飲んで頂くのがおすすめです。また、味のしっかりした濃口の生原酒もあるので、そうしたものならハイボールみたいな飲み方も良いと思います。自由に飲んで楽しんでほしいです。 

「白老梅」は日本酒がベースになっていますのでストレートで飲んで頂いても美味しさを感じて頂けると思います。ロックでももちろん美味しいですし、白老梅7:炭酸3ぐらいの割合で軽く割って頂くとこれからの暑い時期にさっぱりと飲んで頂けると思います。

料理やおつまみはどのようなものと相性が良いでしょうか?

澤田さん:自由に楽しんでもらえればと思いますが、この辺りで好まれる濃口の味のものと相性がいいですね。ベーシックに醤油を使った料理とはよく合いますし、たまりであればなお良しです。 

鉄板で合うのは干物です。地元でよく食べられているメジロのたまり干しは非常に相性が良いですし、干物以外だと貝類のお造りなどもよく合います。 

意外な組み合わせとしては、「蔵人だけしか飲めぬ酒」という無濾過生原酒が生牡蠣やブルーチーズとよく合います。また純米吟醸の5年熟成酒である「豊醸」は、濃厚なクリームソース系の料理と相性が良いです。

また、塩気があるので干物など海のものとの相性が良いです。後は使っている酒米で味わいの性格が大きく異なります。例えば、五百万石のうすにごりは苦味や渋味が少し強めなので肉系の料理との相性が良いですし、透明感のある旨味が特徴となる夢吟香のお酒は和食の料理人さんから支持が高いです。 

「白老梅」に合うのは魚介・揚げ物・燻製ですね。坂角総本舗さんの「ゆかり」は最高に合います。

ゆかりをスモークにしたら全部揃って最高の中の最高になりそうですね!

25年後の200年目を目指す「古式伝承」と「進化」が融合する「白老」澤田酒造

「古式伝承」を掲げ昔ながらの手間暇をかけた酒造りを受け継いできた澤田酒造。しかし、その歴史を紐解くと時代に合わせた先駆的な取り組みも数多く行われており、「古きものの良さ」と「新しきものの良さ」をしっかりと合わせていく伝統がありました。澤田薫さんが二人目のお子さんを出産してからわずか2ヶ月で社長の座を受け継いだというのもその一つの現れなのかもしれません。

6代目の澤田薫さんもまた、若い蔵人たちや周りの多くの方々と一緒になって、新しい時代を見据えた様々な挑戦を行っています。澤田酒造で培われてきた「古式伝承」と「進化」の融合というDNAは、令和の時代にもしっかり受け継がれています。

  • 寄せ書きポスター

    地元とともに歩む澤田酒造の直売所には地元の小学生たちの手による寄せ書きポスターもありました

「白老」澤田酒造をもっと知りたい人のための直売所・酒蔵見学・イベント情報

直売所 営業時間 10時~16時、日祝休、年末年始休みあり。
詳しくは澤田酒造のWebサイトをご覧下さい。 

酒蔵見学 可。Webサイトからお申し込み下さい 

イベント 2月下旬に酒蔵開放、9月第1土日に秋の蔵まつりを開催。今年は5月27日に「知多のガストロノミーを楽しむ会」を開催。

イベントの詳細はWebサイトや公式SNS(Facebook Instagram Twitter)にてご確認ください。 

系列店 カフェギャラリー常滑屋 
〒愛知県常滑市栄町3丁目111  TEL.0569-35-0470
営業時間10時~16時、金曜日のみ18時~22時も営業、月休み

澤田さん

常滑屋は父が有志と一緒に28年前に立ち上げたギャラリー兼喫茶店で、澤田酒造の仕込み水で淹れたコーヒーを出しています。ランチメニューのおすすめは「常滑ちらし」。近海で採れるお魚を刺身や漬けにした手ごね風のお寿司で、常滑の海苔や地元で食べられてきた地豆の煮物と一緒に召し上がっていただけます。

また、澤田酒造のすぐ近くにはスイスパン屋さんや、竹細工商品をたくさん扱っている車屋さんなどもあります。少し脚を伸ばして頂ければINAXのライブミュージアムや常滑のやきもの散歩道もおすすめです。蔵の裏手にある浜からはセントレアや夕陽を楽しむことも出来ます。

「白老」が買えるお店

オンラインストアでも購入可

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