「土用の丑の日」を前に知りたい!  日本酒のプロが教える「うなぎ」に合う日本酒の選び方&おすすめ4選プラス1

  • 鰻と日本酒

今年もまもなく土用の丑の日。2025年は7月19日(土)と7月30日(木)が「土用の丑の日」となっています。
日本では、季節の変わり目とされる立春・立夏・立秋・立冬の直前18日間を「土用」といい、中でも夏の土用の「丑の日」に「う」のつく食べ物を食べると夏負けしないと言われてきました。
古くは瓜やうどんなどが食されてきた「土用の丑の日」ですが、江戸時代後期になると「うなぎ」がその代表格に。もともと日本では奈良時代から夏の栄養補給として「うなぎ」を食べる文化があったとされており、一説には平賀源内がうなぎ店に「本日土用の丑の日」という貼り紙を貼ったことで広まったとも言われています。

そんな「土用の丑の日」のうなぎとともに楽しみたいのが日本酒。今回は「土用の丑の日」におすすめしたい「うなぎにピッタリな日本酒」について、“醸造設備を持たない酒蔵”として自ら酒造りも行っている廣瀬容平さんに教えて頂きました。

  • 着物の男性

■廣瀬 容平(Hirose Sake Works/ eight sake brewery)
全国の酒蔵と特約店を結ぶ酒販店「Hirose Sake Work」を運営。また、“醸造設備を持たない蔵”として日本酒ブランド「eight」を立ち上げ、醸造も手がける。日本酒をより多くの方に広めたいという思いから、今までに無かったアプローチで日本酒の飲み方を提案するなど、日本酒の可能性を広げる活動を続けている。2023Mr.SAKE愛知代表。

日本酒のプロが教える「うなぎ」にピッタリな日本酒の選び方&おすすめ日本酒4選

うなぎの蒲焼きには「キレの良い、濃醇で味わいのあるタイプ」がおすすめ

  • 鰻の蒲焼き

廣瀬さん うなぎの蒲焼に合う日本酒を選ぶ際には、「香りのタイプ」「酸味の強さ」「味わいの濃醇さ」「日本酒の熟成具合」に意識を向けていただくとより美味しく感じてもらえると思います。想像しただけでも濃いタレが炭火で香ばしく焦げて食欲をそそりますよね。
「香り」は穏やかで口に含んだときにほのかに香るくらいが理想的。華やかさのあるフルーティーな香りは避けたほうがいいと思います。
「酸味」」については、うなぎの蒲焼きは濃厚で濃い味わいなので、酸味はしっかりある方がいいです。食事の味わいと日本酒の味わいの調和と最後のキレの良さを酸味がもたらしてくれます。
「味わい」については、爽やかで軽いタイプではなく、日本酒も濃醇で味わいのあるタイプがいいです。うなぎの蒲焼きの味わいを日本酒の旨味が下支えしてくれる相乗効果が期待できます。
「熟成具合」は、濃厚なお料理なので、日本酒にも味わいの奥行きがあっても良いと思います。少しの熟成感があったほうが食事に負けない調和を感じられて心地いいです。
飲み方としては、酒器はゴツゴツとした焼き物がいいと思います。飲み口も厚みがあり、日本酒にかぶりつくイメージですね。温度帯も出来れば15度から25度くらいと少し高めで楽しみましょう。燗酒がお好きな方は、銅のちろりで湯煎して55度から60度くらいにしても良さそうです。

廣瀬さん厳選! うなぎの蒲焼きに合うおすすめ日本酒「不老泉 山廃特別純米 原酒 参年熟成 赤ラベル」

  • 不老泉 山廃特別純米 原酒 参年熟成 赤ラベル

廣瀬さん タンクで3年かけてじっくりと熟成した後に濾過せずにそのまま瓶詰されるお酒。香ばしい香り、山廃から来る酸味、濃醇な旨味、凝縮された甘味がバランスよく整い濃醇かつ切れ味を兼ね備えたタイプの原酒。常温から飛び切り燗までどんな温度帯でも決して飲み手を裏切らない日本酒です。
(URL: https://furosen.com/?p=809

うなぎの白焼きには「酸味があり、あまりお米を削っていないタイプの日本酒」がおすすめ

  • 鰻の白焼き

廣瀬さん 鰻の蒲焼きとは違って、白焼きとはシンプルに何も付けずに焼いただけの鰻の素焼きです。焼き方にもよりますが、炭火の香りが漂いジューシーな油と肉厚な旨味が感じ取れます。シンプルに塩で食べたり、わさび醤油、三つ葉、柑橘のスダチやレモンを添えていただくのもオススメですね。白焼きは一口食べると、香ばしい炭の香りから始まり、ジューシーな軽い油と肉厚な素材の旨味を感じます。塩やわさび醤油が臭みを消して、素材自体の旨味をもっと持ち上げてくれるでしょう。余韻に和のハーブや柑橘のエキスが口内をフレッシュにしてくれます。

そんな白焼きにはどのような日本酒が合うのでしょうか。
「香り」は強くなければあっても大丈夫です。お魚料理にとってフルーティーな香りは生臭さを強くしてしまう場合がありますが、塩やわさび醤油、三つ葉、柑橘などがそれらを消してくれるため、日本酒の香りがお料理と合わさり心地よい香りに変化すると思います。

鰻自体にジューシーな脂分が多いため、「酸味」はあった方が良さそうです。「味わい」は濃醇ではなくても、精米歩合が高い、あまりお米を削っていないタイプの日本酒が良さそうです。「熟成感」はシンプルな味わいを熟成香が邪魔をしてしまうかもしれないので無いものが良いでしょう。
飲み方としては、ガラス製の酒器や錫でできた酒器が合いそうです。日本酒の雑味をおさえて、するっと口に流し込みます。
日本酒の温度帯は冷酒がおすすめです。燗酒がお好きな方は、錫のちろりで湯煎して40度から45度くらいにしても良さそうです。もっとこだわりたい方は60度まで湯煎して燗冷ましの常温で合わせるとより柔らかいペアリングになりそうです。

廣瀬さん厳選! うなぎの白焼きに合うおすすめ日本酒「小左衛門 米の力 ひだほまれ R6BY 生酒」

  • 小左衛門 米の力 ひだほまれ R6by 生酒

廣瀬さん ひだほまれの等外米を使用したお酒。値段や買い手の付かない等外米を地元農家さんのために買い取り、どのようにこの米から旨い酒を造るのか挑戦を試みる銘柄です。今年は生酛にチャレンジしています。お酒自体に重たさは感じませんが、生酛由来の酸味としっかりとした土台を感じる事ができます。お料理の邪魔をせず、柔らかく味わいや風味を支えてくれるような日本酒です。
(URL:https://kozaemon.jp/

う巻きには「香りがあり、爽やかで軽めの日本酒」がおすすめ

  • う巻き

廣瀬さん う巻きは蒲焼や白焼きと違って、鰻の主張がやわらかいお料理です。大根おろしや大葉を添えても良さそうです。一口食べると、お出汁が溢れて卵焼きの優しい甘みや旨味を包み込み、そこから鰻の蒲焼きの香ばしさとタレの味わい、鰻の味わいが混ざり合い口の中でどんどんと味わいが変化する口内調理のような味わいだと思います。
このようなお料理には、お酒を含むタイミングを変えた楽しみ方をしてみるのもおすすめです。例えばお料理を食べる前に日本酒を味わって、お酒の余韻に鰻巻きを味わったり、咀嚼中に日本酒を飲んで新しい味わいに変化させたり、食事の余韻に日本酒を飲んで味わいをさっぱりと切ってもらったり、お料理との合わせ方も実は多くの合わせ方が存在します。

う巻きのようなタイプの料理には、「香り」は比較的多い日本酒が楽しいと思います。「酸味」も少なく、尖っていない日本酒がお勧めです。「味わい」も爽やかで軽めの日本酒にしてみましょう。「熟成感」は無い方がお料理の味わいを活かしたペアリングとなります。酒器はワイングラスで飲んでみましょう。日本酒の香りも今回は主役となってきます。
お料理と日本酒の香りで合わせてみたり、お酒を飲むタイミングを変えてみたり口内調理と五感を刺激するペアリングを楽しんでみましょう。
う巻きと合わせる場合には、お酒は温めずにいただくことをおすすめします。燗酒にするとお料理とお酒の温度差が少なくなり、口に含んだ瞬間から違和感なく調和してしまいます。温度差がある方が徐々に温度が揃ったり、時差で味わいが変化したり楽しみが増えると思います。好きなタイミングで大根おろしや大葉なども口に含んで自分だけの味わいを作り出して下さいね。

廣瀬さん厳選! う巻きに合うおすすめ日本酒「純米吟醸 二兎 雄町五十五うすにごり生スパークリング」

  • 純米吟醸 二兎 雄町五十五うすにごり生スパークリング

廣瀬さん 言わずと知れた愛知県の人気銘柄「二兎」。二兎を追わずして一兎も得ずをコンセプトに日本酒を作っているブランドです。
そんな二兎の中でも瓶内2次発酵によるスパークリング日本酒となっています。きめの細かい上品な泡と鼻先をくすぐるような果実の香り、雄町米特有の香ばしい香りと少しのほろ苦さがお料理との遊びを後押ししてくれます。濁った部分を混ぜないでそそいだ日本酒や濁った部分をそそいだペアリングなど同じ銘柄1本で2回楽しめるなど、合わせ方も多重的に楽しめます。
(URL:https://014.co.jp/product/nito/

うざくには「香りがあり、軽めで少し甘口のフレッシュな日本酒」がおすすめ

  • うざく

廣瀬さん うざくは鰻の蒲焼きときゅうりの酢の物を合わせた料理。夏の暑い季節には食欲をそそり季節を感じさせてくれます。鰻の重厚な美味しさをきゅうりの酢の物が軽やかな風味でさっぱり涼しい気分にさせてくれます。
こちらのお料理には今までのペアリングとは少し思考の違う合わせ方で楽しんでもらいたいです。私がおすすめするのは、お料理の和風のテイストから日本酒の洋風なテイストに味わいが変化していく「和洋折衷ペアリング」。ワイン酵母を使った日本酒と合わせると、和のビネガーから洋風ビネガーへ変化して行く様な味わいの変化がクセになります。移り変わって行く味わいの途中で鰻の味わいや薬味の香りなどが鼻先を通り過ぎていき、食事の旅をしている様な楽しさを感じることができると思います。
私なりの遊び心のある飲み方をご提案しましたが、このお料理には「香り」のあるタイプの日本酒が合うと思います。食事にお酢を使っているので酸との相性もいい事から、お酒も「酸味」があれば合わせやすいと思います。「味わい」はやや軽めで、少し甘口の日本酒が良さそうです。「熟成感」は必要ないと思います。生酒のフレッシュな日本酒で合わせてみましょう。

廣瀬さん厳選! うざくに合うおすすめ日本酒「津島屋 南の風Perl Wein薄濁り」

  • 津島屋 南の風Perl Wein薄濁り

廣瀬さん ワイン酵母を使った日本酒の中でも抜群のバランスの良さを感じさせてくれるお酒です。薄濁りの瓶内発酵で発酵由来のキメ細かい発泡感を含んでいます。甘みと酸味が綺麗に調和していて余韻に燻製香を少し感じさせてくれます。
個性的な日本酒ですがワイン酵母を使っていることもあり、和食、洋食と幅広い相性の良さを持っています。発売からの時間経過で発泡感が強くなるのですが、その時々のバランスで食べる食事のセレクトを考えるのも楽しいです。
(URL:https://miyozakura.co.jp/

日本酒のプロが選ぶ「うなぎにピッタリな日本酒」厳選プラス1

“醸造設備を持たない蔵”として自ら日本酒造りを手がける廣瀬さん。自身が手がける「eight」シリーズの中からも「うなぎ」に合う日本酒を1本セレクトしていただきました。

廣瀬さん厳選! おすすめ日本酒プラス1「eight Sherry Barrel pedro ximenez うすにごり」

  • eight Sherry Barrel pedro ximenez うすにごり

廣瀬さん 「eight Sherry Barrel pedro ximenez うすにごり」は、甘く奥行きのあるシェリー樽の香りが楽しめます。口に含むと落ち着いた柔らかな口当たりと乳酸からくる酸味と白麹からくる酸で心地の良い調和を味わっていただけます。純米酒でありながら蜂蜜のお酒(ミード)の様なニュアンスもありカクテルの様な多重層的な味わいを演出してくれます。
このお酒は純粋な日本酒でありながらミードやワイン、梅酒の様な味わいを持っています。鰻料理の香り、味わい、素材の旨味、塩味、薬味、お出汁などお料理の色々な組み合わせと、このお酒が持つ複雑な香味特性が合わさり今までに体験したことがない見知らぬ異国の食べ合わせのような体験をさせてくれます。
(URL: https://sakeworks.thebase.in/items/98098593

 

今年の「土用の丑の日」はうなぎと日本酒で夏の暑さを吹き飛ばそう!

この記事では、日本酒のプロとして活躍する廣瀬容平さんが教える「うなぎ」に合う日本酒の選び方とおすすめ日本酒をご紹介しました。2025年最初の「土用の丑の日」である7月19日は三連休初日の土曜日ということもあり、うなぎと日本酒をゆっくり味わう絶好の機会。せっかくうなぎを食べるなら、おいしい日本酒とともに味わいましょう!

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