【長野県・諏訪五蔵】ほろ酔い気分で巡るも楽し! 全蔵飲み比べレポート

  • ショーケースの中に積み上げられた酒樽

    JR上諏訪駅観光案内所前に飾られた化粧樽

新潟県に続き全国2番目の約80もの酒蔵がある長野県。その中でも諏訪湖のほとり諏訪市には「舞姫」「麗人」「本金」「横笛」「真澄」という五つの酒蔵があり、甲州街道沿いわずか500mの間に建ち並んでいます。その5つの蔵が合同で行っているのが「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」。その仕組みを理解して、好みのお酒を見つけに諏訪の街を訪ね歩いてみませんか。最寄り駅のJR上諏訪駅から遠い蔵でも約1km以内。となれば、タクシーも初乗り料金の範囲内。温泉に、山に、湖にと、近くにいろいろな見どころがあることも魅力です。さあ、それでは五蔵めぐりの予行演習を一緒に始めましょう。

  • 諏訪湖と青空、酒蔵の外観

    諏訪湖の眺め(写真上)と、酒蔵に吊るされた新しい酒林(写真下)

長野県諏訪市「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」の仕組みとは

  • 駅舎の並びにあるテナント

    諏訪市観光案内所

JR上諏訪駅を出て右に進むと、駅舎と同じ建物沿いにあるのが「諏訪市観光案内所」。こちらで「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」の仕組みを教えてもらいました。

  • 白い巾着袋とグラス、クーポン

    ごくらくセットのクーポン、グラス、巾着袋

まずは、「ごくらくセット」を購入します。3000円(税込み)でオリジナルグラス、巾着袋(色をひとつ選ぶ)のグッズの他に、ステッカー台紙などがついており、セットを見せると各蔵で一杯20mlを4~5種類(計22杯)試飲ができます。観光案内所だけでなく、舞姫、麗人、本金、横笛、真澄いずれの蔵でも販売しています。有効期限がないので、一日で回っても何日かで分けて回ってもOK。試飲が難しい場合は、その蔵のカップ酒との交換も可能です。

五蔵の場所はJR上諏訪駅前から一番近い蔵が舞姫(約500m)で、その周辺に麗人、本金、横笛があり、さらに東南に約500m程度離れて真澄があります。筆者は最初、近くから出会った順でまわっていこうと考えていましたが、観光案内所の方に「まわり方に決まりはありませんが、最も遠い真澄から訪問して、最後に舞姫、というルートにすれば飲み歩きが終わった時点で駅までの距離は500mですよ」と言われ、お知恵を拝借することにしました。

  • 手に持ったクーポンカード

    酒蔵めぐりクーポン

それぞれの蔵で受付に必要なのは『酒蔵めぐりクーポン』。試飲は各蔵で配られるプラカップを使うので、グラスと巾着袋は訪問の記念としてバッグがあればその中にしまっておきましょう。

「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」の経路を確認

今回は皆さんにわかりやすい諏訪市観光案内所を起点にご案内します。

  • 手に持った地図

    五蔵めぐりの案内図

駅前ロータリー前の国道20号線を右(東南)に進みます。案内所でもらったA4判の「ほろ酔いマップ」は手書き風ですが、交差点名が書き込まれているので蔵までの進み具合を把握するのに役立ちます。

  • 信号のある交差点

    諏訪一丁目交差点

駅前から100mほど進んで最初の大きな「諏訪一丁目」交差点付近で見えてくる紅白の鉄塔(NTT東日本)を目標にします。

  • 古い町並みの奥に鉄塔

    舞姫

最初に見えてくる酒蔵は舞姫。目標とした紅白の鉄塔から程なくの距離です。しかし、今回は観光案内所のアドバイスを参考に、一番奥の真澄を目指します。

  • 歩道橋

    諏訪市角間歩道橋

国道20号線にかかる歩道橋を過ぎれば100mほどで真澄に到着! 駅からの所要時間は13分ほど。蔵の案内標識も道端に立っているので迷うことはありませんでした。

  • 酒蔵の建物と積まれた酒樽

    真澄

ショップには定番の他に旬のお酒もずらっと並んで魅力的ですが、真澄はショップと試飲会場が別棟なので、店内からの案内でそちらの場所に移動します。

「諏訪五蔵 酒蔵めぐり」での試飲方法

  • カフェのようなスペース

    真澄試飲会場

雪吊りの見事な松が眺められる試飲会場で、五蔵めぐりの試飲手順を教わりました。

  • カップ酒とメニュー表

    試飲セットとカップ酒

説明される内容は概ね次のようなことです。

1. 酒蔵めぐりクーポンを提示し、プラカップとコイン(4~5枚)を受け取る。
2. 1コイン20mlの試飲が可能。試飲が難しい場合は、持ち帰り用カップ酒と取り換えることもできる。
3. その日に試飲できるお酒の種類と特徴の解説。
4. 提供されるお酒のうち、コインの数だけ同じ銘柄を選んでもかまわない。クーポンに有効期限はなく、行かなかった蔵は別の日でもクーポンを利用できる。
5. 試飲受付は営業時間終了の30分前まで。

  • 日本酒が入ったサーバー

    試飲用サーバー

各蔵には同じ試飲用サーバーが設置されています。コインを投入しプラカップを好みのお酒の蛇口に近づけ、蛇口上の丸のボタンを押すとお酒が注がれる仕組みです。
試飲のお酒は、各蔵とも概ね定番を基本にその時期の季節商品を組み入れたバランスでセットされていました。

真澄 宮坂醸造(株)

  • 酒蔵内のショップ、手前に酒樽

    真澄ショップ内

真澄の試飲会場で供されたのは4種類。駅から歩いてすぐの試飲だったので、まずは低アルコールの「純米吟醸 白妙」からと勧められスムースな飲み口に驚きました。
次は以前飲んで気に入っていた「純米大吟醸 山花」を期待どおり美味しくいただきました。他2種類は定番のパンフレットにはない「特別誂 金寿」「純米吟醸生原酒 あらばしり」といった季節商品。専門店でも手に入りづらい季節商品が試せるのは蔵めぐりならではで、ありがたいですね。

横笛 伊東酒造(株)

  • 酒蔵の建物

    横笛

2番目に伺ったのは横笛。前の道を挟んで向かいには本金。道の先にはあの紅白の鉄塔の見える位置なので、麗人、舞姫へも迷うことはありません。

  • お酒のメニュー表

横笛ではコイン5つの試飲ができます。試飲リスト7種類のうちからサーバーに5種類が繋がれていました。

  • 日本酒のサーバー

「純米吟醸山恵錦」や「純米吟醸しらかば錦」も捨てがたいのですが、蔵元に今の季節のものとすすめられた「吟醸生原酒初つくり」がとても印象に残りました。度数19度のふな口無濾過吟醸で、スッキリとしながら米の厚みを感じる味わい。季節のお酒に出会えて、酒蔵めぐりで複数試飲した甲斐があったというものです。

本金 酒ぬのや本金酒造(株)

  • 酒蔵の木造の建物

    本金

酒林と味のある格子戸が印象的な趣のある木造の建物の中にお邪魔します。

  • 酒蔵の白い暖簾

白の暖簾を分け入って左側で受付。試飲用のサーバーは暖簾の右。五蔵の中では一番小さいスペースでした。

  • 日本酒のサーバー

取材日は6種類が繋がり、使えるコインは4つ。どれを飲もうか迷いますね。

諏訪で栽培された美山錦を使った「純米大吟醸・美山錦」、低アルコールの「Smooth」も試飲して心惹かれるものがありましたが、いちばん印象に残ったのはやはり諏訪産美山錦の「山廃純米」。「お燗で飲むと美味しいよ」と語りかけてくるような味わいに、メモする文字も大きくなってしまいました。

麗人 麗人酒造(株)

  • 酒蔵の建物

    麗人

麗人は真澄と同じようにお店が広く、お酒以外にも諏訪のお土産に手頃な物産が充実しています。また、お店の入口手前右横には仕込み水を味わえる水場も設置。4蔵目ともなるとありがたい心遣いです。

  • 日本酒のサーバー2台

サーバーは2つ設置。コイン4つを持って6種類から選ぶのは少し悩ましい。

  • 日本酒のメニュー

味わった中で「限定酒・令和6年杜氏の腕試し」が印象に残りました。山廃純米吟醸の原酒で、酒米は美山錦。辛口に仕上げた飲み口は、個人的には燗冷ましもチャレンジしたいキレのいい味わい。「腕試し」の言葉どおり来春には全く造りが別のスペックのお酒がでるそうで、どんな味わいになるのかこちらも楽しみですね。

舞姫 (株)舞姫

  • 白い土蔵

    舞姫

舞姫では、酒林を吊るし化粧樽が置かれた母屋に向かって右隣りのショップに入ります。

  • 土蔵の中のショップスペース

土蔵を改修したレトロな趣の店内の一角に試飲コーナーはあります。

  • 日本酒のサーバー

5つのコインで5種類試飲。全部飲めるのはいいとして、まず1番から押すべきか迷っていたところに蔵の人に勧められた4番「翠露 純米大吟醸 雄町」がここでの私のイチオシとなりました。すっと滑らかに口に広がる米の旨味と、今までの蔵で長野県産の酒米が多かっただけに、改めて「雄町」に新鮮味を感じました。

舞姫は「舞姫」「翠露」の他、滋賀県の近江酒造から名前を継承した「信州ねこ正宗」、東京都八王子市産の酒米で造る「高尾天狗」などのシリーズを出すユニークな活動を行っているそう。そんな知識を得られたのも蔵めぐりに行けばこそです。

まさに“ごくらく”! 「諏訪五蔵巡り」 次の旅行の計画にぜひ!

500mの範囲に五蔵が集まっているというのは長野県でもなかなか無い蔵めぐりに適した環境です。しかも駅近。取材のために歩きましたが、天気が悪ければ真澄まで駅からタクシーに乗れば半分は歩かなくて済むからとても便利。

ある蔵の人は「同じ霧ケ峰水系の水を使いながら、各蔵ともに味が違う。五蔵めぐりをし終えてからショップに戻ってこられて好みのお酒を買って帰るお客様は多いです。たくさん試飲した味の中からウチのお酒を選んでいただけて大変ありがたい」と話していました。大した距離ではありませんし「迷えばメモをして、あとで戻って買えばいい」のはとても気が楽。

20年以上続く春秋のイベント「まちあるき呑みあるき」の人気に、地元温泉街から常時飲み歩きができないかとの声を受け、今のような「五蔵めぐり」が出来上がったそうです。コロナ前にはコイン式のサーバーも導入され、蔵側も省力化しながら多くの人に対応できるようになりましたが、自社製品の説明はどこでも快くしてくれます。

酒蔵で蔵の方から直に新しい情報やおすすめの味を教えてもらえるチャンスが一日に5つもあるなんて嬉しすぎると思いませんか。これはもう天国です。

「長野県諏訪市」新しい年のご旅行の予定地に、ぜひ加えてみてはいかがでしょうか。

酒蔵基本情報

【真澄 宮坂醸造(株)】

住所:長野県諏訪市元町1-16
営業時間:全日 10:00~17:00
定休日:原則として毎週水曜日および1月1日
SHOPホームページ https://www.masumi.jp/

【横笛 伊東酒造(株)】

住所:長野県諏訪市諏訪2-3-6
営業時間:平日8:30~17:00、土祝10:00~17:00、日曜10:00~17:00
定休日:12月31日~1月3日
SHOPホームページ https://www.yokobue.co.jp/category/25/

【本金 酒ぬのや本金酒造(株)】

住所:長野県諏訪市諏訪2-8-21
営業時間:平日9:00~17:00、土曜10:00~17:00、日曜10:00~17:00
(※日曜は不定期で月に2〜3日営業)
SHOPホームページ http://honkin.net/contact

【麗人 麗人酒造(株)】

住所:長野県諏訪市諏訪2-9-21
営業時間:全日 9:00~17:00
定休日:なし(年末年始は休業)
SHOPホームページ https://www.reijin.biz/

【舞姫 (株)舞姫】

住所:長野県諏訪市諏訪2-9-25
営業時間:全日9:30~17:00
定休日:12月31日、1月1日
SHOPホームページ https://netmaihime.jp/

関連記事