飛騨路へ日帰り日本酒旅! 5年ぶりに開催された「天領酒造」蔵開きに行ってきました【参加レポート】

秋は“ひやおろし”の声とともに酒蔵開きや日本酒イベントが増える時期。名古屋から日帰りできる範囲でもたくさんの酒蔵が蔵開きを開催し、日本酒ファンを楽しませています。
9月7日(土)に蔵開きを開催したのが岐阜県下呂市萩原町にある老舗酒蔵・天領酒造。今回の記事では、5年ぶりの開催となり大いに賑わった天領酒造の蔵開きの模様をお届けします。

  • 小さいのぼりを持った男性2人

    天領酒造9代目社長・上野田又輔さん(左)と日本酒カクテルバーを出店した廣瀬容平さん

飛騨萩原の名酒蔵・天領酒造

岐阜県下呂市萩原町にある天領酒造は、340年以上の歴史を持つ飛騨の老舗酒蔵。飛騨の水と米、そして風土に育まれた日本酒は、全国新酒鑑評会にてたびたび金賞を受賞するなど国内外のコンテストにて高く評価されています。

  • 古い酒蔵の外観

    飛騨路の街道筋にある天領酒造

天領酒造はJR高山線・飛騨萩原駅が最寄り駅。名古屋からのアクセスも良く、日帰りでの日本酒プチ旅にもぴったりな場所にあります。

この日も名古屋駅を朝一番に発車する「特急ひだ1号」に乗り込み、蔵開きへと出発。木曽川沿いを走る高山線の素敵な眺めを堪能しながら列車旅は朝から“予習”に一杯やりたくなってしまいますが、今回は取材なので我慢です。

  • 山の間を流れる川に橋が架かっている

    当日は抜群の晴天

ちなみに蔵開き当日の「特急ひだ1号」は指定席・グリーン席ともに満席となっており、飛騨萩原駅に着くとたくさんの方が降車。同じ目的地に向かって歩いて行きました。名古屋をはじめ、遠方からの日本酒ファンもたくさん蔵開きへと向かっているようです。
昔ながらの宿場町の風情を残す駅前の町を通り抜けると、10分ほどで天領酒造に到着。午前10時からのスタートを前に、早くから受け付け待ちの行列が伸びていました。
天領酒造の蔵開きが開催されるのは実に5年ぶりとのこと。コロナ禍以前は3月に開催していましたが、飛騨萩原の町を盛り上げたいという思いから、今回より飛騨萩原の恒例行事である「商工祭」と日程を合わせる形にしたそうです。
また、今回の蔵開きからチケット制を導入。参加者にいろんなお酒を楽しんでほしいとの思いから新たに始めたとのことです。チケットと試飲用のお猪口がセットになったスターターキットを受付で手に入れ、いよいよ試飲会場へと向かいます。

  • 紙のチケットとお猪口

天領酒造の日本酒を堪能!

天領酒造では、地元岐阜県産の酒米「ひだほまれ」を中心に使用。一部「山田錦」を使っているお酒もあります。地下から汲み上げている北アルプスの伏流水で醸された日本酒は、すっきりとしていて優しさのある味わいが特徴です。

  • 仕込み水が溜まっている石の水桶

    店頭に流れる仕込み水

蔵開きの醍醐味といえば、同じ蔵で造られた様々な日本酒の飲み比べ。今回の天領酒造蔵開きでは有料・無料合わせて17種類もの日本酒を試飲することができました。試飲した日本酒の一部をご紹介します。

  • 白布がかかったテーブルの上に試飲の日本酒が並ぶ

    試飲コーナーにはバリエーション豊かな日本酒がズラリ

Festival Tenryou Sake 限定記念酒

  • おしゃれなラベルの日本酒3本

最初に試飲したのは無料試飲として振る舞われていた「限定記念酒」。今回の蔵開きを記念して造られた純米吟醸・生貯蔵原酒です。地元飛騨産の「ひだほまれ」を100%使用し、フレッシュな味わいを楽しめる蔵開きならではの日本酒は、甘味と酸味のバランスがとにかく絶妙。ずっと飲み続けていたいと思う美味しさでした。

天涼(本醸造生貯蔵酒)

  • 青い瓶の日本酒3本

無料試飲コーナーでもう一つ振る舞われていたのが「天涼」。記念酒と同じく「ひだほまれ」を100%使用した本醸造生貯蔵酒です。すっきりとして呑みやすく、フレッシュなフルーティーさも。夏の暑い日の縁側や花火大会などで、氷水でしっかり冷やしていただきたいお酒です。

天領 金賞受賞酒(純米大吟醸)

  • 日本酒の瓶とお猪口

チケット制の試飲コーナーで最初にいただいたのが、令和6年全国新酒鑑評会にて金賞を受賞した純米大吟醸「天領 金賞受賞酒」。35%まで精米した兵庫県産「山田錦」を使い、天領の味の源となる超軟水の伏流水で仕込んだ杜氏の技が光るお酒です。
華やかな香りがありつつも、香りが不自然になることはないちょうど良いバランスの味わい。お米本来が持つ旨味がしっかりと引き出されており、ほのかに残る余韻にまた一口、もう一口と口が誘われてしまいました。

日野屋 純米大吟醸 生貯蔵原酒

  • ピンク色のラベルの日本酒とお猪口

「日野屋 純米大吟醸 生貯蔵原酒」は、「ひだほまれ」を100%用いた純米大吟醸の生貯蔵原酒。度数は17度とやや高めで、すっきりと呑みやすい味わいが特徴です。しっかりとした米の旨味と、ふんわりとたなびく後口でお気に入りになりました。山田錦で造られた金賞受賞酒との比較も楽しめたのは蔵開きならではの体験です。

日野屋 生酛純米吟醸 無濾過生原酒

  • カラフルな文字のラベルの日本酒とお猪口

会場にいた天領ファンのみなさんがこぞって推していたのが「日野屋 生酛純米吟醸 無濾過生原酒」。生酛造りならではのしっかりとした酒質ながらも濃厚すぎることはなく、甘味と酸味のバランスが絶妙。すーっと流れていくように飲めるお酒で、女性にもファンが多いというのも納得でした。

スパークリング日本酒 すますま

  • ピンク色のラベルの日本酒とお猪口

「すますま」は度数5度という低アルコールのスパークリング日本酒。柑橘の雰囲気を思わせる甘酸っぱさが炭酸とともに口の中ではじけ、日本酒初心者にもおすすめしたいお酒。食前酒としてはもちろん、電車旅のお供にするのにも楽しそうです。

天領 できたてどぶろく

  • プラスチックの容器に入ったどぶろく

米と水で仕込んだ、もろみを濾さない濁り酒「どぶろく」。濁り酒というと重たくずっしりとしたイメージがありますが、天領酒造の「どぶろく」は全く重さを感じることなく、ほどよい酸味と炭酸感を楽しめました。米の味わいも楽しめる「食べる日本酒」です。
天領酒造ではいつでも「Myどぶろく造り体験」を行っており、日本酒造りの工程を勉強しながら実際にどぶろくを仕込むことが出来るとのこと。出来上がったMyどぶろくは届けてもらえるため、自宅でも日本酒旅の思い出を楽しめます。

日本酒カクテルバーも出店

今回の蔵開きでは、2023 Mr.SAKEファイナリストにも選ばれ、「固定概念を外し、自由な発想から生み出される『完全に美味しい味わいを追い求めた日本酒』」をコンセプトとした日本酒ブランド「eight」をプロデュースする廣瀬容平さんも参加。1日限定で特別開店した廣瀬さんと天領酒造のコラボレーションによる日本酒カクテルバーにも驚きが詰まったラインナップがズラリと並び、来場者の注目を集めていました。

スパークリング日本酒すますま×コーラ

  • メニューチラシとカクテルが入ったグラス

スパークリング日本酒「すますま」に自家製コーラを合わせた廣瀬さんオリジナルのカクテルは、ちょうどいい酸味と軽やかさな風味が最高の美味しさ。ガツンとパンチの効いた飛騨牛のハンバーガーが食べたくなる大人のドリンクでした。

天ロワール 純米吟醸 山田錦生原酒 × 緑茶

  • メニューチラシとプラカップに入ったカクテル

低温の冷蔵庫で長期熟成した「天ロワール 純米吟醸 山田錦生原酒」に緑茶を漬け込んだ、廣瀬さん特製の緑茶酒をベースにしたカクテル。そのままの緑茶酒は緑茶由来の旨味が抜群。これにジンジャーエールを加えることで渋味が抑えられ、美味しさも一層膨らんでいました。

日野屋 生酛純米吟醸 無濾過生原酒 × 樽香ホップ

  • メニューチラシとグラスに入ったカクテル

人気の「日野屋 生酛純米吟醸 無濾過生原酒」に樫の木を入れて香り付けし、ホップを合わせたお酒。いわゆる樽酒とは異なるほんのりとした樫の香りとホップの風味で、さらに口当たり柔らかな日本酒に変身。日本酒の可能性の広さを感じさせる一杯に、自然と笑みがこぼれました。

天領 飛切り × トニック

  • トニックウォーターと日本酒とカクテルが入ったグラス

60年近く続く天領の看板銘柄の一つ「天領 飛切り」をトニックウォーターで割ったカクテル。トニック由来の甘味と心地良い苦味ですっきりとして飲みやすく、炭酸のしゅわしゅわが飛切りの美味しさを一層弾けさせる素敵な味わいでした。

蔵開きならではのイベントも盛りだくさん! 飛騨萩原のお祭りとも連動

今回の蔵開きでは、試飲以外のイベントも盛りだくさん。利き酒や蔵見学をはじめ、地元お祭りとも連動し、一日まるっと楽むことができました。

利き酒に挑戦!

  • 白布がかかったテーブルの上にずらりと並ぶ日本酒

    手前の4本(A~D)と奥の4本(①~④)で同じ日本酒の組み合わせを当てる「利き酒」も開催

会場では、4種類の日本酒を飲み比べて正しい組み合わせを当てる「利き酒チャレンジ」も開催。無料で参加可能な上、全問正解すれば抽選で「酒鍋セット」が当たるということもあり、来場者が次々とチャレンジしていました。もちろん筆者も挑戦しましたが、果たして結果はどうだったのか?全問正解していたと信じ、賞品が届くのを心待ちにしています(笑)

蔵見学ツアー

  • 蔵の中を説明する男性

    蔵見学ツアーでは片桐杜氏が天領の酒造りや蔵の設備について解説

蔵開きイベントの一つとして開催されていた蔵見学ツアーにも参加。片桐杜氏の案内の下、普段はなかなか見ることができない酒造りの現場を拝見しました。
天領酒造では2年前に酒蔵を大きく改装し、ほぼ通年にわたり一定の温度で酒造りを行えるようになったとのこと。新しい設備の導入により小仕込みを可能とし、これまで以上にきめ細やかな酒造りができるようになったそうです。これだけ大きな投資を行ったのも、今までよりもさらにフレッシュで美味しい日本酒を届けるため。新しい蔵での3回目の酒造りが、間もなく始まります。

キッチンカーで地元グルメを満喫!

  • つまようじが刺さった牛のひとくちサイズのステーキ

    飛騨牛のひとくちサーロインステーキ

会場内に出店したキッチンカーにも美味しいグルメがいっぱいありました! 今回筆者が頂いたのは飛騨牛のひとくちサーロインステーキ。柔らかな身質にじゅわっとあふれる肉汁、お酒がどんどん進んでいきます。

地元のお祭り「商工祭」とも連携

  • 広場にたくさんのテーブルと人

天領酒造のすぐ近くでは地元の商工会が主催する飛騨萩原のお祭り「商工祭」が開催。こちらも地元の方を中心にたくさんのお客さんで盛り上がっていました。
天領酒造が今回から蔵開きを「商工祭」に合わせて開催したのも、蔵開きが町づくりの一貫になればという思いから。蔵と町のコラボレーション、きっとこれからますます大きく盛り上がっていくことでしょう。

日帰り日本酒旅を大満喫!

飛騨萩原の天領酒造で5年ぶりに開催された蔵開きには、遠方からやってきた日本酒ファンはもちろん地元の人もたくさん来場。日本酒好きの筆者にとっても最高の一日となりました。 

天領酒造9代目社長の上野田又輔さんにもお話をお伺いすることができました。

  • 小さいサイズののぼりを手に持つ男性

    天領酒造9代目社長 上野田又輔さん

上野田さん  下呂市は温泉だけではなく、春は山菜、夏は鮎、秋はきのこ、冬は朴葉味噌と四季折々の食べ物もいろいろある「食の街」です。美味しいお酒と美味しい食べ物、そして温泉に泊まって頂いて日頃の疲れを癒やしていただきたいと思っております。
天領酒造ではほぼ365日直売所を営業しており、試飲や蔵見学、どぶろく造り体験を行っているとのこと。特にどぶろく造り体験は毎日のように参加者がいるほど人気を集めているそうです。

  • 売店のカウンターに立つ男性と女性

    直売所はほぼ365日営業

名古屋から約2時間で行くことができる天領酒造への日帰り日本酒旅。飛騨路の宿場町の風情を残す飛騨萩原の街歩きも楽しむことができ、充実した一日を満喫できました。次はぜひ下呂温泉に一泊してゆっくりと旅行したいと思います。

日帰り日本酒旅の締めくくりとして帰りの特急電車の中でいただいたのは、もちろん天領の日本酒。車窓を眺めながらのカップ酒で、旅の余韻を最後まで楽しみました。

  • 電車の窓枠に置かれたカップ酒

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