阪神・淡路大震災を乗り越え、人の意志が繋いだ"奇跡"の30年熟成ヴィンテージ日本酒『現外』 1月17日の先行発売を前にトークイベントにてお披露目【イベントレポート】

  • 琥珀色のお酒の瓶とワイングラスに注がれた琥珀色の日本酒

阪神・淡路⼤震災を乗り越え、神戸の人たちの意志が繋いだ30年熟成ヴィンテージ日本酒『現外(げんがい)』。株式会社Clearが手がける日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」と、灘五郷で日本酒酒造りを続けてきた沢の鶴株式会社とのパートナーシップから生まれた特別な熟成古酒が1月17日より先行発売されます。

阪神・淡路大震災を経て生まれた“特殊”な熟成古酒

「現外」は、通常の製法とは大きく異なる「酒母」をそのまま絞った日本酒。これには、阪神・淡路大震災が深く関わっています。 

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、神戸市や淡路島を中心に甚大な被害が発生。日本有数の酒どころとして知られる灘五郷も大災害に見舞われました。 

灘五郷で長年酒造りを続けてきた沢の鶴株式会社でも7棟あった木造の酒蔵がすべて倒壊。他の建物も多くが倒壊し、酒造りの設備も大きな被害を受けました。

  • 古い写真が積み重なっている

    木造酒蔵7棟を含む20棟以上が全壊する大被害

その中で、奇跡的に破損を免れたタンクの中に残されていたのが「酒母」。米・麹・仕込み水・酵母などを合わせ、日本酒造りにおいてアルコール発酵を担う酵母を大量に増殖させた日本酒のもととなる液体です。 

本来の酒造りであれば、酒母に蒸し米・麹・仕込み水を加えて発酵させて「もろみ」を仕込み、出来上がったもろみを搾ることで日本酒となります。しかし、当時は設備の損害と停電の影響が大きく、酒母からもろみを仕込むことはできませんでした。

  • 古いタンク

災害からの復旧活動が優先される中、酒母は約1ヶ月もの間そのまま放置されることになりました。停電が続き温度管理もままならない状況でしたが、真冬の低温下だったことにも救われ、酒母は腐敗を免れます。そして設備やインフラが少しずつ復旧する中、当時の部門長により「もろみを仕込むことなく、酒母のまま酒を搾る」と決断が下されました。 

搾られた液体は、アルコール度数がおよそ15度の“日本酒”。しかし、非常に酸味が強く、とても商品化できるものではありませんでした。当時若手として酒造りに携わっていた沢の鶴株式会社取締役製造部部長・西向賞雄氏によると、阪神・淡路大震災の被災当時は廃棄という選択も可能だったとのこと。しかし、沢の鶴では長年にわたり日本酒の熟成に取り組んでいたこともあり、一縷の望みにかけて熟成に適した温度に管理された熟成庫内で保管する道が選ばれたそうです。 

毎年試飲を続けていく中、変化が現れたのは震災から20年が経過した頃。強い酸味が減って、熟成酒として美味しくなったことに気づきます。その美味しさを高く評価したのが、日本酒メディア「SAKETIMES」での取材活動などを通じて交流があった株式会社Clear 代表取締役CEO 生駒龍史氏でした。

  • プレゼンをするスーツ姿の男性

    株式会社Clear 代表取締役CEO 生駒龍史氏

沢の鶴で寝かせてきた10種類程度の熟成酒をブラインドで試飲した生駒氏が「圧倒的に美味しい」と選んだのが、他ならぬ阪神・淡路大震災を乗り越えた酒だったとのこと。生駒氏も試飲の後で震災を乗り越えて熟成された特殊なものと知り、大変驚いたと言います。 

その後このお酒は「現外」と名付けられ、生駒氏がブランドオーナーを務める日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」のフラッグシップとして発売を開始。震災から24年目となる2019年に初めて発売された後、毎年数量限定で販売が行われています。

30年の時を経て驚きの味わいとなった「現外」

30年熟成「現外」の先行販売に先立ち、1月9日にトークイベント「学⽣記者と学ぶ阪神・淡路⼤震災の今。次の世代に繋ぐための視点」が開催。本イベントでは、30年熟成「現外」の試飲も行われました。

  • 陶器のグラスに入った琥珀色の日本酒

    美しい琥珀色を見せる30年熟成「現外」

器に注ぐだけで芳醇な香りが広がる「現外」は、30年経っているとは思えない軽やかな味わい。口当たりは柑橘を思わせる甘味があり、その後ろから熟成酒ならではの複雑な旨味が広がります。後口には酸味が心地良く、切れの良さも感じられました。 

最上級の紅茶のような雰囲気も感じる「現外」は、甘味との相性も抜群。今回は和菓子と一緒に頂きましたが、「現外」が持つ酸味が和菓子の美味しさを引き立てていました。

  • 木製の盆にのった和菓子と日本酒

    和菓子との相性も抜群

阪神・淡路大震災を乗り越えた「現外」が、震災の記憶の一端を繋ぐ

今回のトークイベントには、阪神・淡路大震災を契機に創設された神戸大学ニュースネット委員会にて、学生記者として震災の記録を残す活動を行っている奥⽥百合⼦さんも登壇。震災から30年が経ち世代が移り変わる中で、辛い状況を強い意志で乗り越えてきた神戸の人たちに寄り添いながら、記録を繋いでいきたいと決意を新たにしていました。

  • 日本酒を手に持った男性2人と女性1人

    左から株式会社Clear 生駒氏、神戸大学 奥田さん、沢の鶴株式会社 西向氏

未曾有の大災害となった阪神・淡路大震災を乗り越え、その後も長年にわたって人々の意志が繋いできたことにより生まれた「現外」。可能性を信じ、あきらめることなくバトンを繋いできたからこそ生まれた、唯一無二の日本酒です。

  • 黒色の箱と琥珀色の日本酒の瓶、ワイングラス

30年熟成「現外」は2025年1月17日より先行予約販売が始まります。詳しくはSAKE HUNDRED公式Webサイトをご覧下さい。

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